2018年05月13日
No.4014 ちょっと一休み その646 『揺らぐ世界 その6 インドで評価されるヒトラー!』

これまで世界の富の集中については、以下のように何度となくお伝えしてきました。

アイデアよもやま話 No.2696 世界の富裕層の上位1%の総資産が全世界の下位半分の資産を占めている!

アイデアよもやま話 No.3614 格差社会アメリカの実態 その2 アメリカは格差社会先進国!?

アイデアよもやま話 No.3616 格差社会アメリカの実態 その4 富裕層への富の集中による弊害!

 

そうした中、1月7日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)で「揺らぐ世界 〜この時代の変わり目に〜」をテーマに取り上げていました。

そこで7回にわたってご紹介します。

6回目はインドで評価されるヒトラーについてです。

 

ドイツでは今メルケル首相への求心力が低下し、極右勢力が台頭し始めています。

こうした感情の受け皿となり、支持を急激に広げた政党があります。

極右政党AfD「ドイツのための選択肢」です。

難民の受け入れ反対を掲げ、昨年9月の連邦議会選挙で94議席を獲得し、第3党にまで躍進しました。

AfDのイェルク・モイテン共同党首は、従来のイメージに反して、難民に寛容な姿勢を示していますが、それは巧妙な戦略だという指摘もあります。

政治学の専門家で、ドイツ自由大学の名誉教授、シュトラーテンシュルテさんは次のようにおっしゃっています。

「AfDの真の主張はモスクの建設やイスラム教を禁じ、厳しく対応するということ、つまり(イスラム教に関しての)全てを阻止するというものなのです。」

「(寛容な発言は)戦略なのです。」

 

差別的な発言を自粛し、更に支持を広げる構えのAfDですが、政権を伺う野望も見え隠れします。

 

そんなAfDに対して、人々の間では極右でレイシスト(差別主義者)のナチだとか、新しい極右、ネオナチという声が上がっています。

実はAfDの幹部の一人で州議会議員のビョルン・ヘッケさんは次のようにおっしゃっています。

「ヒトラーは絶対悪ではない。」

 

というように、ヒトラーを肯定する発言まで出ているのです。

ドイツ政治の底流に息づくヒトラーの影、それは今意外な場所でも見られています。

アジアの経済大国、インド、首都ニューデーリーの書店を覗いてみると、ヒトラーの自伝「我が闘争」が置いてあり、しかもベストセラーの一つだといいます。

こちらの書店員は次のようにおっしゃっています。

「買う人はほとんどが若者です。」

「彼らはヒトラーのことが知りたいのです。」

 

今、若者の間で静かにヒトラーへの関心が広まっているというインド、高校の歴史の教科書には何と26ページにもわたりヒトラーに関する記述があるのです。

 

ヒトラーの情熱と言葉は人々の心を動かした。

ヒトラーは強い国家を築くことでドイツ国民の尊厳を取り戻した。

 

番組による若者への街頭インタビュー結果には次の答えがありました。

「ヒトラーの考え方には人々が学ぶべき部分もある。」

 

「独裁は必ずしも悪いことばかりではない。」

 

インドで蘇り始めたヒトラーの影、しかしなぜ今インドでヒトラーが評価されているのでしょうか。

現地のジャーナリスト、ヴィヌサ・マリアさんは次のようにおっしゃっています。

「リーダーシップとリーダーの精神論について学ぼうとする傾向があります。」

「ナチの政治手法は優れていて、人々をまとめあげる手法は優れていたと・・・」

 

強いリーダーを求める人々の心が一部でヒトラーの肯定につながっているというインド、こうした空気の中、およそ4年前、強いリーダーとしてヒンドゥー原理主義を掲げるモディさんが首相に就任、それ以降圧倒的多数を占めるヒンドゥー教徒が少数派のイスラム教徒を迫害する事件が急増していると言われています。

 

今、世界各地に広がる対立と分断の空気、困難な課題を多く抱える世界に暮らす今、私たちに解決策はあるのでしょうか。

 

極端に言ってしまうと“世界の右傾化”という一つの波があるようですが、その他にも世界が抱える課題には次のようなものがあります。

まずテロです。

昨年、1年間だけでも世界で107件を超えるテロが起きており、テロによる死者は3000人以上いました。

また世界の難民の数も6560万人以上と増え続けており、ロヒンギャ難民は63万人を突破しました。

 

また、イギリスのEU離脱の問題やスペインのカタルーニャなどの分離独立の動きも活発化しています。

そして、北朝鮮では核実験やミサイルで世界を挑発しています。

そして、繰り返されているのが紛争や内戦です。

中東やアフリカの一部の国々では今も争いが絶えません。

 

一方、アメリカではトランプ大統領の発言が世界に大きな衝撃を与えました。

エルサレムを首都として認める、また地球温暖化防止に関するパリ協定からの離脱、こうした発言が更なる混乱を生んでいます。

 

このような差別、分断、対立、格差、テロ、核拡散、あるいは地球環境といった問題を抱え、私たちの多くは何となく不安を感じていますが、その根底にあるのは何かが行きづまっているのではないかと番組は指摘しています。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

番組を通して感じるのは、やはり世界的な“行き詰まり感”、あるいは“閉塞感”です。

5回目で世界的な格差社会化の進行についてお伝えしましたが、格差社会化がその最も大きな要因と思われます。

その他にも先進国における経済の低成長や難民問題、あるいは番組でも指摘されているように核拡散や地球環境の問題があります。

 

そしてこうした状況においては、これまでの歴史が示しているように“世界の右傾化”、あるいはとりあえず短期間に目の前の問題を回避してくれそうな指導者に国の行く末を委ねる動きが出てきます。

その象徴的な動きが今回ご紹介したインドで評価されるヒトラーやアメリカのトランプ大統領の誕生なのです。

そして、注目すべきは、こうした動きを促す根源は国民にあるということです。

例えば、トランプ大統領が中国をはじめ日本やEU諸国などに対する関税引き上げを打ち出した後のアメリカの最新世論調査では、トランプ大統領の支持率が上がったといいます。

本来であれば、自由経済世界のリーダー国であるアメリカは自由貿易を推進する立場であるべきなのに、トランプ大統領はそれに逆行した政策を打ち出し、ほぼ固定した半数近くのアメリカ国民がそれを後押ししているのです。

以前、No.3966 ちょっと一休み その638 『トランプ大統領の本質は”アメリカファースト”ではなく”トランプファースト”!?』でトランプ大統領は“アメリカファースト”ではなく、“トランプファースト”を目指しているとお伝えしましたが、こうしてみてくると、トランプ大統領はかつてのヒトラーと同様に、政権を維持するための手段としてうまく国民の声を吸い上げて政策に反映する、極めて現実的でありますが、国の方向性を誤る可能性の高い、危うい政治指導者のように思えてきます。

考えてみれば、中国の習近平国家主席もかつての毛沢東主席のような半永久的な独裁政治を目指しているようです。

しかし、習近平政権においてもアメリカ同様にしっかりした支持基盤があると報じられています。

また、習近平国家主席は中華民族の偉大な復興や領土拡大などの大いなる野望の達成を目指す一方で、共産党政権の安定化を維持するために、国民の声に応えるための取り組みも怠っていないようです。

 

では、こうした世界情勢の中で、少しでも平和で豊かな国際社会を維持・継続させていくために各国の国民にはどのような行動が求められるでしょうか。

私は大きく4つあると思います。

一つ目は、情報のオープン化です。

どこの国の政権においても、政権に都合の悪い情報を隠したがる習性があるのは明らかです。

北朝鮮や中国における国家的な情報統制はその最たるものです。

そして、こうした情報統制は国家が一旦誤った方向へと突き進めば、いずれ破たんしてしまいます。

ですから、こうしたリスクを少しでも少なくするためには、どこの国の政権にとっても例え悪い情報でも全てオープンになるような情報環境の構築が必要なのです。

二つ目は、そのうえで各国の国民は“自国ファースト”ではなく、常に“世界的な共存共栄”をベースとした考え方に立って自国の行く末を考えつつ、積極的に選挙や世論調査において自分の意見を反映させるということです。

三つ目は、こうした各国の国民が国際的につながるような環境、あるいは仕組みの構築です。

各国の国民のゆるやかな絆により、理不尽な各国の政権の動きに対して協力して対応し、国民の意思をしっかりと政権に伝えることにより、政権の政策を軌道修正させるのです。

そして4つ目は、各国国民の間の交流です。

具体的には、スポーツや文化、あるいは芸術、留学などがありますが、最も気軽なのは海外旅行です。

海外旅行を通してテレビニュースなどで間接的な外国人のイメージを理解するのではなく、自分で直接見聞することです。

どこの国の人も家族があり、その家族を大切にしているはずです。

そして、豊かさを求め、戦争で自分の家族を失うことは決して望んでいないはずです。

また、意気投合すれば、国境を越えて大切な友人になることもあり得ます。

こうした絆が出来れば出来るほど、何か問題が生じればお互いに助け合い、あるいは戦争につながるような動きを阻止しようという意思が働くようになるはずです。

以前にもお伝えしましたが、世界で唯一の原爆被爆国である日本の広島と長崎には原爆資料館があります。

こうした施設を世界中のより多くの人たちが訪問すれば、いかに原爆が恐ろしい兵器であるかを実感出来るのです。

そして、一旦戦争になり、もし自分の家族が核兵器の犠牲になったらと想像するだけで、多くの人たちは核兵器廃絶の必要性を実感出来ると大いに期待出来ます。

 

歴史的な大原則として、どのような独裁政権、あるいは独裁国家も国民の声を無視し続けて存続し続けることは不可能なのです。

ですから、逆に言えば、国家のレベルは国民の意識レベルを反映しているとも言えるのです。

 

私たち国民一人ひとりはこの大原則をベースに、より平和でより豊かな国際社会を築くために、自分は何を通して貢献出来るかを考えることがとても大切だと思うのです。

何も講じることなく、平和で豊かな国際社会を手に入れることはあり得ないのです。

決して忘れてならないのは、グルーバル化の進んだ現在、“自国ファースト”ではなく、“共存共栄”の理念の世界的な浸透こそがこうした国際社会の実現にとってとても重要なのです。

 

こうした観点に立つと、戦争を放棄した平和憲法を有する日本国こそ、より積極的に世界に貢献出来る可能性を最も秘めていることを私たち日本人の一人ひとりは自覚すべきではないでしょうか。


 
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