2018年04月30日
アイデアよもやま話 No.4003 話題の“スキルシェア”!

1月29日(月)放送の「ビビット」(TBSテレビ)で“スキルシェア”について取り上げていたのでご紹介します。

 

自分が得意とする“特技”や“知識”を有料でシェアするサービス、すなわち“スキルシェア”ですが、その市場規模は今や750億円以上といいます。

昨年、大手家具メーカーのIKEAが参入したり、この春にはフリーマーケットアプリで知られるmercari(メルカリ)がサービスを始めたりするなど、今注目されています。

“スキルシェア”をしている主婦の一人は次のようにおっしゃっています。

「(多い月は)5万円くらいの時があります。」

「楽しんで得るお金としては高い方だと。」

 

また別の主婦は次のようにおっしゃっています。

「時給にするといいです。」

 

番組では、なぜ“スキルシェア”が人気なのか、またどのような“特技”が売られているのかを取材しました。

愛知県に住む39歳の主婦、Nさんは二人の子どもを育てる傍ら、自分の“特技”のデザインで稼いでいます。

大阪のインディーズシンガーの着ているTシャツにプリントされたロゴを2時間ほどでデザインしました。

こうしたロゴの他にもLINEスタンプやキャラクターなどの制作も行っていて、1件5000円から販売しています。

多い時には1ヵ月で5万円の収入になった時もあるといいます。

ちなみに、稼いだお金の使い道は、自分の好きなものをご褒美として買ったり、旅行に使ったり、ランチに使ったりしているといいます。

“特技”を売り始めたきっかけについて、Nさんは次のようにおっしゃっています。

「出産して子育てだと、本当に外と遮断されてしまうので繋がりたいというのもありましたね。」

「繋がりが・・・、孤独なので。」

 

9年前、出産を機に仕事を退職したNさんは、その後現役時代との生活の変化にストレスを感じ、“気分転換”のために始めたのが趣味を生かした“イラスト”の仕事でした。

Nさんは次のようにおっしゃっています。

「(子育ては)褒められないですし、自分の能力あるんだぞっていうのも認めてもらいたかったので。」

「これですと感想とかも言ってもらえるので、「素晴らしかったです」と言われると、認められている気がして嬉しいです。」

 

Nさんが趣味だった絵を仕事にすることが出来たのは、あるサイトがきっかけでした。

ネット上でスキルを売買するcoconala(ココナラ)で、特技を販売したい人と利用したい人を紹介するオンラインマーケットサービスです。

特技を販売したい人は時間や場所に囚われずに仕事が出来るうえ、500円から取引出来る手軽さから、主婦の間で人気が高まっているのです。

 

こうした特技や知識を有料でシェアすることを“スキルシェア”と呼び、ビジネスモデルとしても注目されています。

昨年秋には家具メーカーのIKEAが家事代行に特化した“スキルシェア”を始めたり、昨年12月にはフリーマーケットアプリのメルカリが語学や習い事関連のサービスを発表したりするなど、様々な企業が参入しています。

 

2月に開店予定の食パン専門店の一本堂 宇都宮江曽島店で、店主の大澤 敏也さんは“スキルシェア”でサービスを買った一人です。

大澤さんがお願いしたのは、お店を宣伝するためのショップカードや名刺のデザインの作成です。

大澤さんは次のようにおっしゃっています。

「(名刺に描かれた地図について、)手書き風に仕上げていただいて、非常に満足しています。」

「温かみがあるというか、手作り感があってすごくいいですよね。」

「(今回初めて“スキルシェア”を利用した理由について、)厨房器具とか買っていくと、どうしてもお金がかかってしまうので、コストを抑えたいところは抑えるというふうにしていかないと、中々オープンした後も大変かなと思いまして。」

「高いところだと、デザイン頼むと数万円するってのは聞いてたんで、そこまでお金はかけられないなとは思ってたんで。」

 

開店費用はおよそ1000万円、宣伝費を少しでも安く抑えるため“スキルシェア”を利用し、プロの業者よりも4分の1ほど安くすることが出来ました。

 

このショップカードのデザインを任されたのは主婦のFさん(52歳)です。

愛知県名古屋市で夫婦で喫茶店を営んでいます。

Fさんは次のようにおっしゃっています。

「本来の喫茶店の仕事をして、家で主婦の仕事をして、でもたまにスポンって抜ける時間がある時に、じゃあ気楽に受けられるかなっていうところがいいところ・・・」

 

毎日のようにお店の看板に有名人の似顔絵を描いていたことが自信につながり、今では絵やイラストを作る特技を2000円から販売しています。

 

こうした“スキルシェア”の安さに対し、デザインを生業としている一部の業者からはこんな声も上がっています。

「下請けの地獄みたいになっている。」

「価格崩壊起こし過ぎてて・・・」

 

「困ったことにここ(スキルシェア)の価格が相場だと思っているお客さんも割といます。」

 

こうした声について、Fさんは次のようにおっしゃっています。

「確かに安く受けてしまいますし、それは私はプロじゃないので、それで食べてるわけではないから、そのレベルで良ければっていう前提で受けてるつもりなんですけど・・・」

 

“スキルシェア”には、他にも元体操選手による倒立の仕方を教えるサービスやお笑いイベント出場経験者による一発芸の販売など、幅広い特技が売られているのです。

主婦のMさん(25歳)の場合は、育児の傍らでの特技を売るサービスです。

Nさんはこのサービスについて次のようにおっしゃっています。

「スマホで傾聴するサービスです。」

「話し相手が欲しい人とか、悩みがある方とか、そういった方のお話を聞くサービスです。」

「(稼いだお金の使い道について、)子どもの服とかオムツ代とかにしています。」

 

Nさんが妊娠中に始めたのは、ネット上でチャット機能を使い、2日間悩みを抱える人の話を聞く「傾聴サービス」(500円)です。

 

なお、「ココナラ」では、直接会ったり、郵送を必要とするモノは禁止しており、「ココナラ」のサイト上でメッセージのやり取りなどをしてデータでの受け渡しのみを可能にしています。

なので、住所や電話番号、メールアドレスなどの個人情報を交換することはありません。

 

さて、「ココナラ」の仕組みですが、サービスの買い手が「ココナラ」を通して要望を出すと、売り手がそれに応えるというものです。

気になる価格は500円から20万円までで様々なサービスが売り出されています。

実績のある方は少しずつサービス料金を上げていくことが出来ます。

中には結婚式のVTRを作るサービスもあるといいます。

また、買い手が受けたサービスが値段以上だったと感じた場合に、“おひねり”制度もあるといいます。

 

こうした“スキルシェア”について、企業の経営リスクに詳しい浅見 隆行弁護士は次のように注意を促しています。

(出品者)

・宣伝文句を誇張しない

・既存のイラストやロゴを盗作しない

(買う側)

・高いレベルを求めない

・口コミの評価を確認する

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

そもそも人は誰でも最低限食べていくためには一定の収入が必要です。

そして、何とか食べていけるような状況が確保出来れば、主婦や学生などの場合は自分で稼いだお金で自由に買いたいモノを買いたい、自分のスキルを活かしたい、あるいは社会と繋がりたいという欲求が出てきます。

一方、雇う側では、特に零細企業の場合は少しでも安い料金で仕事を依頼したいという要望があります。

こうした仕事を求める“スキルシェア”にとって、受け皿となる雇う側の需要もあり、メルカリなどの提供するサイトは両者の要望をマッチングさせる場としてとても有効です。

ですから、“スキルシェア”の市場規模はまだまだこれからも伸びる余地があると思います。

 

しかし、課題もあります。

以前から話題になっている“同一労働同一賃金”の観点からは、“スキルシェア”を提供する側のスキルはかなり高くても、信用や実績の不足感から一般企業に比べてどうしても料金が割安になってしまう傾向が強くなります。

しかし、こうした課題は信頼性も料金の一部と見ればある程度やむを得ないところがあります。

それでも、評価の高い実績が増えるにつれて、徐々に料金が高くなる可能性は十分にあります。

 

また、一方では、AIやロボットの活用も今後台頭してくると見込まれます。

ソフトバンクの開発したロボット、ペッパーなどは既にあちこちの飲食店で見かけるようになってきました。

人とAIやロボット、どちらが主流になるか、その境界はズバリ、品質と料金の兼ね合いでどちらがユーザーにとってメリットがあるかにかかっています。

今のところ、全体としてどちらに軍配が上がるかは分かりませんが、いずれ実績の評価などから境界がはっきりしてくるはずです。

しかし、ここで言えることは、全体として両者のどちらに軍配が上がるかではなく、個別の実績評価に基づいて、優れている方が生き残っていくということです。

そして、こうした状況は必然的に価格破壊を起こし、既存の企業の従業員の収入にも悪影響を及ぼすと思われます。

ですから、長い目で見ると、技術の進歩の速い中で、人が自分の仕事の場を確保し続けるうえでは常に新たなスキルを吸収する必要性が求められるのです。


 
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