2018年04月29日
No.4002 ちょっと一休み その644 『揺らぐ世界 その4 資本主義経済の抱える矛盾!』

これまで世界の富の集中については、以下のように何度となくお伝えしてきました。

アイデアよもやま話 No.2696 世界の富裕層の上位1%の総資産が全世界の下位半分の資産を占めている!

アイデアよもやま話 No.3614 格差社会アメリカの実態 その2 アメリカは格差社会先進国!?

アイデアよもやま話 No.3616 格差社会アメリカの実態 その4 富裕層への富の集中による弊害!

 

そうした中、1月7日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)で「揺らぐ世界 〜この時代の変わり目に〜」をテーマに取り上げていました。

そこで7回にわたってご紹介します。

4回目は資本主義経済の抱える矛盾についてです。

 

3回目で、東西冷戦後のソ連の解体により、世界はアメリカを中心にした資本主義、民主主義を基本とする体制でまとまっていくかに見えたとお伝えしました。

ところが、今このシステムが様々な矛盾を生み出し、厳しく問われ始めたのです。

どうしてこのようなことが起きたのでしょうか。

世界のいたるところで突き上げている怒りと不安の声、この根底には経済状況の変化が影響しているという指摘もあります。

経済学者の法政大学教授、水野 和夫さんは次のようにおっしゃっています。

「1980年代くらいから先進国が至る所に投資をして、外に出ていくということで、常に利益、資本を増やすことが出来たんですけども、21世紀になってモノを作ったり、サービスを提供したりするという投資空間が消滅した。」

 

武力を使って植民地を拡大するのではなく、巨額の資金を海外に投資して、安い原料や労働力を確保、製品を売りさばく市場を広げ、利益を上げてきた戦後の資本主義経済ですが、オイルショックによる石油価格の高騰で利益が減少しました。

また、グローバル化で多くの先進国で生活に必要な製品が行き渡り、需要が伸びなくなったことから、更なる成長が望めなくなったというのです。

 

一方、アメリカの同時多発テロをきっかけに始まったテロとの戦いは国際的な政情不安を生み出し、経済活動を委縮させました。

こうして行き詰ったモノづくりによる資本主義に代わるものとして勢いを増したのが金融資本主義です。

金融市場で巨額の資金を目まぐるしく回転させ、大きな利益を生み出す手法は、まさにカネがカネを生む仕組みです。

しかし、その金融資本主義も今大きな矛盾を生んでいます。

哲学者の内山 節さんは次のようにおっしゃっています。

「それ(金融資本主義)が今金融とかサービスを軸にした社会へと・・・」

「基本的には、自分だけ儲かればいいという世界を作っているわけで、むしろ金融というのは全員がうまく儲かるなんてあり得ない世界なんで、むしろどう出し抜いたらいいかみたいに変動してしまったということですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

今回ご紹介した番組を観て、アイデアよもやま話 No.3565 マイナス金利政策に見る資本主義からの脱却の必要性!の中でお伝えした「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野 和夫 著)を思い出しました。

資本主義の原理は、常に利潤を追求し、新たな対象、すなわちフロンティアを探し続けることにあります。

ですから、経済のグローバル化、あるいは金融資本主義の具現化の一つであるフィンテック、更には宇宙開発というような耳障りの良い言葉もその本質は全て利潤の対象となるフロンティア探しの一つなのです。

そして、こうした利潤追求の側面を持った活動が私たちの豊かな暮らしにつながる限りにおいて、多くの人たちはそれなりに満足出来るわけです。

 

ところが、このフロンティアにはいろいろな弊害があります。

最大の弊害の一つが戦争です。

いざ戦争が始まれば、多くの犠牲者が出る一方で、高価な兵器の大きな需要が生まれるので経済的な側面では兵器産業は大いに潤います。

こうした状況は“戦争特需”と言われています。

かつての日本の戦後の高度経済成長のきっかけとしては朝鮮戦争による特需が大きく貢献したと言われています。

日本はこの戦闘には直接係わりはありませんでしたが、この戦争で日本経済は大いに潤ったのです。

その後のベトナム戦争も然りです。

今も兵器産業は健在で、こうした関連企業は実際に戦争が起きないまでも、戦争のリスクが高まれば大きな需要が生まれるのです。

実際に、北朝鮮による核兵器開発は日本がそれに対応するために高額なスカッドミサイルのアメリカからの購入につながっています。

 

また、かつてのリーマンショックは数学理論を悪用した利潤追求の暴走の果てにアメリカのみならず世界経済を長期間にわたって混乱に陥りさせています。

そして今、仮想通貨という新たなフロンティアが登場してきました。

最近話題になっているビットコインなどの仮想通貨もキャッシュレス化によるメリットがある反面、価値の暴落リスクを常にはらんでいます。

そして、仮想通貨の普及が世界的に進むにつれて、こうしたリスクが顕在化した場合の影響も大きくなるのです。

このように、資本主義経済は、常にこうした矛盾をはらんでいるのです。

 

考えてみれば、資本主義経済はこれまでいろいろな危機に直面してきましたが、その時々に打開策を探してきました。

ですから今後も資本主義経済においては、利潤の追求が常に求められますが、その対象の追求がごく一部の人たちだけでなく多くの人たちの豊かな暮らしに結び付くのかどうかを常にチェックし、軌道修正することが求められるのです。

同時に、資本主義経済に代わる新たな経済活動の枠組みを模索することの必要性が出て来ているように思われます。

No.3978 ちょっと一休み その640『揺らぐ世界 その1 世界のたった8人の大富豪の資産の合計が下位50%の人々の資産とほぼ同じ!』でお伝えしたように、極端に富の集中した今の社会はとても健全とは言えないのです。

一方で、グローバル化の進展、およびAIやロボットなどのITの進歩ととともに今後増々“富の集中”は進む傾向にあります。

ですから、“富の再配分”は健全な社会を取り戻すための最も大きな課題の一つと言えます。


 
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