2018年04月28日
プロジェクト管理と日常生活 No.538 『パワハラの素養は誰にもある!?』

3月16日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でパワハラの素養は誰にもあることについて取り上げていたのでご紹介します。

 

3月16日、厚生労働省はパワハラ防止対策の検討会を開いて、パワハラを判断する際の新しい基準を示しました。

仕事上の一般的な注意との線引きが難しいパワハラですが、厚生労働省は今まで例として以下の6つの事例を挙げていました。

  1. 身体的な攻撃

  2. 精神的な攻撃

  3. 人間関係からの切り離し

  4. 過大な要求

  5. 過小な要求

  6. 個の侵害 

しかし、こうした具体例はあったものの、その定義は曖昧だったのです。

そこで、今回示したパワハラの定義(案)は以下の3つです。

  1. 優越的な関係に基づく

  2. 業務の適正な範囲を超える

  3. 身体的・精神的な苦痛を与える 

厚生労働省によると、職場でのいじめや嫌がらせなど(パワハラ)の相談件数はうなぎ上りで2015年には年間6万6000件を超えています。

ただ同じハラスメントでもセクハラや妊娠・出産に係わるマタハラは男女雇用機会均等法で定義され、企業には防止策が義務付けられています。

これを違反すると企業名が公表されますが、パワハラは法律による規制もありませんでした。

今回検討会で出された新たな基準案では、上司による指導との線引きが難しいパワハラの定義について上記3つの全ての条件を満たしたことで大筋了承されました。

ただパワハラの防止策を法律で企業に義務付けるかどうかは企業の経営者側から反対意見が出され、結論を見送りました。

 

こうした中、パワハラ予防を目指した新たなサービスが有限会社グローイング(東京都港区)により始まっています。

それは自分にどれだけパワハラをするリスクがあるかを気付かせる分析サービスです。

日々の行動の中でどちらを大事にしているか、36の設問に答えていく方式です。

なお、質問項目は企業秘密だといいます。

元々採用適正検査などで使っているものをもとに開発したといいます。

パワハラを起こすリスクを10点満点で評価するのです。

 

グローイングの社長、平井 俊宏さんはこのリスク評価について次のようにおっしゃっています。

「(パワハラを)やっている人ほど、自分はやっていると思っていない。」

「自分の中のパワハラの芽に気付いていただくと。」

「で、チームマネジメントの指針にしていただければなと。」

 

グローイングのパワハラ検査を導入したのがアドセック株式会社(東京都渋谷区)です。

携帯電話販売店のディスプレーの製作などを手掛けています。

管理職が若手との接し方を見直すため、2月に社員全員でパワハラ検査を受けたといいます。

アドセックの常務、村松 吉則さんは次のようにおっしゃっています。

「それぞれのマネージャーがハラスメントの知識がなく、あらためて習得してみたいという現場からの要望があったというのが背景ですね。」

 

「パワハラがきっかけで社員が退職するのは企業にとって大きな損害でもありますし、そういったものを事前に防ぐことが非常に企業の成長にとってはプラスにつながる・・・」

 

社員が分析結果の指摘に納得させられることが多かったといいます。

更に、アドセックでは検査結果を部署ごとに共有し、社員がお互いの特徴を知ることで、更なるパワハラの予防へつなげるのが狙いだといいます。

 

実際にこのパワハラ検査を受けた番組のサブキャスター、大浜 平太郎さんは次のようにおっしゃっています。

「パワハラリスクチェックは結果的に想像以上に参考になりました。」

「パワハラの素養は、実はみんな多かれ少なかれあると。」

「で、そのタイプを知ることが大事なんですね。」

「例えばパワハラまで行かないにしても、自分は良かれと思ってやっていても、結果として周りの人から見ると迷惑だったりすることあるという意味では、これは受ける価値ありますよ。」

「このパワハラに関しては厚生労働省は今月中に報告書をまとめて、制度化に向けて本格化していくということです。」

 

また、番組コメンテーターでA.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。

「私はせっかくやるのであれば、単なるガイドラインではなくて、法制化まで踏み込むべきと考えます。」

「先ほどビデオにあったようなケースは露骨にパワハラなんですけど、現実世界はグレイなケースが多くて、どうしても徒弟制度的な職場でちょっとシゴキの文化があるようなところ、これがグレイなケースが多いですよね。」

「なんですけど、論点の一つはそのシゴキって指導として効果的ですかという話。」

「例えば千本ノックしろ、あるいは黙って俺の背中から盗め、みたいな指導、これってどう考えても盗める人と盗めない人がいるし、一人前になるまで時間がかかる。」

「そうじゃなくて、身に付けて欲しいスキルをもう少し可視化をして、例えばそれをマニュアルとかにまとめて、なぜそれが必要なのか、具体的に何をやるのか、って効率的に指導していった方が遥かに人材育成の効率も高い。」

「それから2つ目の論点は組織の持続性ですね。」

「仕事がこの人は本当によく出来るよね、って言われている人もよく見てみると、部下をすり潰しながら自分の業績を上げているようなケースもあって。」

「で、今までの日本企業だと、そういう上司の方を大事にしてしまうケースも少なからずあったんですけど、組織の持続性を考えると、やっぱり部下を潰す人はNGだよねと。」

「ちゃんと部下を育てながらチームの業績を出せる人を大事にしようよねという組織にならないと、組織として持続的に成長していかない。」

「そう考えると、人材不足の今だからこそそういうブラック企業は撲滅をし、ちゃんと人材を育てられるような企業の後押しをすることが大事だし、それから社員の意識改革を一気に進めるという上でもこの法制化は強いメッセージになるからいいなと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

プロジェクト管理の項目の一つとして作業の標準マニュアル化があります。

その狙いは、作業を標準化、およびマニュアル化することにより、経験年数に関係なく、経験の浅い従業員でも一定のレベルの作業をこなすことが出来るようにすることにあります。

そして、この標準マニュアルは大きく2つに大別されます。

一つは、誰もが守るべき標準です。

2つ目は必ずしも守る必要はありませんが、従うことが望ましいというガイドラインです。

そして、こうした標準マニュアルを組織内で遵守させるために必要なのが研修です。

いくら作業標準をマニュアル化しても、従業員がその標準をきちんと理解して守らなければ意味がないからです。

 

さて、こうしたプロジェクト管理の観点に照らしてみると、番組によれば、パワハラに関してはガイドラインの位置づけなので、一般企業が遵守しなくても特に罰則規定はないということになります。

しかし、パワハラによって、多くの人材が精神的に追い込まれて休職したり退職したりすることは本人にとっても企業にとってもマイナスになります。

なので、梅澤さんも指摘されているように、私も罰則規定を設けて法制化すべきだと思います。

 

なお、番組によれば、セクハラやマタハラは男女雇用機会均等法で定義され、企業には防止策が義務付けられ、これを違反すると企業名が公表されるといいます。

 

本来、パワハラやセクハラなどにおいては、道徳的観念からすれば、常識的な判断で解決出来ると期待してもよいレベルなのかもしれません。

しかし、残念ながら、標準マニュアル化、あるいは法制化して罰則規定を設けなければ防止出来ないという現実はとても寂しい想いがします。


 
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