3月22日(木)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で世界的に危うさを増す民主主義について取り上げていたのでご紹介します。
一人一人が自由に発言し、話し合って物事を決める民主主義、しかし、この民主主義の大原則が今揺らぎ始めています。
いったい世界で何が起きているのでしょうか。
3月18日に行われたロシア大統領選挙は76%を超える得票率でプーチン大統領が圧勝しました。
就任演説で強調したのは、民主的な選挙によって多くの国民の支持を受けたことでした。
しかし、その選挙の裏側で若者を中心に人気を集める野党勢力の指導者を拘束、更に政権側は支持する若者たちまで弾圧したのです。
拘束された若者の一人は次のようにおっしゃっています。
「自分の意見を表明するために集会に参加しただけだ。」
「ロシアがソビエト時代に戻ったようだ。」
また政権批判をしていた野党側の指導者が銃で撃たれ死亡する事件も起きています。
野党勢力はプーチン政権の関与を疑っています。
野党議員の一人は次のようにおっしゃっています。
「政治活動家への弾圧は殺人にまで及んでいる。」
「秘密警察出身の大統領は警察国家しかつくれない。」
このロシアの大統領選挙とともに3月にもう一つ注目された選挙がありました。
香港の議会選挙です。
この2つの選挙、共通しているのは民主主義が危うくなっている現実です。
香港の議会選挙の裏側では何が起きていたのでしょうか。
一国二制度のもと、民主主義が重んじられてきたはずの香港、ここでも民主主義が揺らぎ始めています。
今月行われた議会の補欠選挙では、民主化の拡大を求める民主派の候補が当初の予想に反して選挙区で初めて落選しました。
議席を増やしたのは中国の組織的な支援を受けたとされる親中派でした。
背景にあるのは、権力の集中を進める中国の習近平国家主席です。
香港では法律を遵守させることで中国の影響力を強めようとしています。
今回の選挙では、「香港は中国の不可分の一部」と定める香港基本法が民主派の候補にこれまで以上に厳しく適用されました。
4年前の民主化運動で活躍し、知名度が高い女性、周庭さん(アグネス・チョウさん 21歳)は立候補すれば当選が有力視されていました。
しかし立候補の届け出が認められませんでした。
理由は、“香港の将来は香港の住民が決めるべきだ”と主張したことが“法律に抵触する”と判断されたためでした。
更に当選した民主派の議員にも、過去に遡って厳しく法律が適用されようとしています。
ある議員は過去に中国に批判的な態度を取ったことが選挙中に親中派の候補に暴露され、法律に抵触していたという指摘が相次ぎ、失職の恐れも出ているのです。
こうした状況について、アグネスさんは次のようにおっしゃっています。
「中国や香港政府は法律の内容を自分に有利なように解釈し、意にそぐわない者を排除している。」
“合法的なかたちで香港の民主主義を骨抜きにしよう”としている中国ですが、香港市民の間では政治に対する無力感が広がっています。
これまで民主派に投票してきたある男性は、今回の選挙では投票に行っても意味がないと考え、棄権したといいます。
今回の選挙の投票率は43%と、前回より15ポイントもダウンしました。
以前高まりを見せていた民主化を求める機運はすっかり影を潜めています。
ある香港市民の男性は次のようにおっしゃっています。
「中国の香港への干渉が強まっている現実を受け入れざるを得ない。」
「香港は中国の一部だから。」
香港市民が民主的な社会を求めることを諦め、強権的な姿勢になびいていく現実について、北海道大学の吉田 徹教授は、そこに“民主主義の危うさ”が見えると指摘しています。
「リベラルなんてうち捨てて、強いリーダーが物事をきちんと決めてくれる、そっちの方が効率がいいんじゃないか、そういったところが非常に注意、用心すべきところだと思いますね。」
「自由民主主義というのは理念としてはいいんだけれども、果たしてそれで人々は豊かになれるんだろうか、それで食えるんですか、っていう状況に今追い込まれているわけですね。」
「それを見ると、あっち(強権的な姿勢)の方がいいんじゃないかなっていうふうなかたちで“民主主義”の転換が今起きていて、そのあり方が大きく問われている。」
更にこうした傾向は、経済成長が鈍り、社会不安も抱えるアメリカやヨーロッパなどでも強まりつつあると警鐘を鳴らしています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
ロシア大統領選挙については、別のテレビニュースで選挙日に投票所に有権者がいない時に選挙管理委員会のメンバーが投票用紙を大量に投票箱に入れている様子をとらえた映像を報じていました。
このような不正がまかり通っていては選挙は形式的なものとなり、公正な選挙とは言えません。
この点だけでも、日本やアメリカだったら、あちこちで選挙は無効で選挙のやり直しが叫ばれるはずです。
そもそもここまで酷い露骨な不正はあり得ないと思います。
一方、中国でも習近平政権の長期化が言われ、今後とも習近平国家主席による独裁化が強まると見られています。
なお、日本との関連では、中国は尖閣列島の領有権を主張しており、更には沖縄をも領有化しようと目論んでいると言われています。
また、ロシアや中国ほどでなくとも、吉田教授のおっしゃるようにアメリカやヨーロッパアでもこうした民主主義を危うくする傾向が見受けられます。
さて、日本においても最近、気になるニュースがあります。
一つは森友学園に関する財務省の公文書改ざん問題です。
そして、森友学園や加計学園における許認可の決定プロセスが明らかでない問題です。
安倍首相が縁故者に便宜を図ったのではないかという疑念がいまだに払拭されていません。
更に、森友学園問題の関連文書と陸上自衛隊のイラク派遣での日報については文科省や防衛省がその存在を否定していたのが、突然見つかったというような報告が上げられてきました。
そしてもう一つは、文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市立中の授業で語った内容の報告を文科省が名古屋市教育委員会に求めた問題です。
こうした授業の内容の報告を省庁が求めたのは前代未聞といいます。
このような報道がなされただけでも、今後の講演に際して多少なりとも委縮してしまう方々が出てくるのではと危惧されます。
こうした問題が現政権の指示により関係省庁が従った結果なのか、それとも現政権の意向を忖度するなどして関係省庁が独断で行ったのかは今のところ明らかではありません。
しかし、官僚側による単独の判断だけでこうした問題が起きたとはとても考えにくいです。
こうした一つ一つの問題の放置は政権の暴走を許し、日本の民主主義を危うくするものです。
ですから、誰の指示でなぜ行われたのかを徹底的に解明し、再発防止策に取り組まなければなりません。
プロジェクト管理においては問題やリスクを放置しておけば、時間が経過するにつれてそれだけ解決に時間やコストがかかるというのが原則です。
同様に、今回ご紹介した問題も早急に手を打つことが求められるのです。
今国会ではこうした問題に対する審議に時間が割かれ、本来予定されていた重要な審議が滞っている状況です。
こうした状況を早急に打開するために、徹底的な原因の解明が急務なのです。