2018年04月20日
アイデアよもやま話 No.3995 丸の内をベンチャーの”聖地”に!

1月22日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新たなベンチャーの街を目指す丸の内について取り上げていたのでご紹介します。

 

国内でベンチャー企業が集まる街というと、渋谷と六本木が有名です。

アメリカのシリコンバレーにちなんで、渋谷はかつてはビットバレーとも呼ばれました。

この渋谷には、現在もサイバーエージェント、ミクシィ、ディーエヌエーなどが本社を置いています。

こうした有力企業と仕事をするために、ベンチャー企業も続々と渋谷に集まってきているのです。

一方、六本木ではヒルズ族という言葉も生まれた六本木ヒルズにはアップルジャパンやグーグルジャパン、メルカリなどが本社を置いていますが、この周辺にも多くのベンチャー企業が集まってきています。

 

こうした中、新たなベンチャーの街として名乗りを上げたのが日本最大のオフィス街、丸の内です。

大企業や銀行のイメージが強い丸の内地域ですが、ベンチャーの新たな“聖地”として生まれ変わることが出来るのでしょうか。

東京駅前にある新丸の内ビルディングでは、天井に取り付けたカメラを使った実証実験が1月22日から始まっています。

三菱地所と綜合警備保障が始めた実証実験に欠かせないもう一つの企業があります。

AIベンチャーの株式会社パークシャ テクノロジーです。

こちらのAIはビルの監視カメラ映像を画像解析し、人間の様子を把握するというものです。

例えば、緑色だときょろきょろしている人、オレンジだとうずくまる人です。

AIがうずくまっている人を認識すると、近くにいる警備員にメールで知らせます。

そして警備員はAEDを持って、倒れている人のもとへ駆けつけます。

また不審者などの検知もAIが行うといいます。

パークシャ テクノロジーの山田 尚史取締役は次のようにおっしゃっています。

「怪しい人か怪しくない人かのデータを沢山準備出来れば、その共通の特徴を人間が設計するのではなく、機械のアルゴリズムが抽出して、それに対する学習を行うと。」

 

大規模ビルの警備を行う警備会社も最新のITとスピード感を持ったベンチャー企業が今後必要不可欠になって来るといいます。

綜合警備保障の執行役員待遇、桑原 栄治さんは次のようにおっしゃっています。

「カメラの数はどんどん増え、(警備員がモニターを)見つめているものも限界がありますので、東京オリンピックを迎えると、全然警備員が足りないと分かっておりますので、人の目の代わりにAIが予知、予兆を検知するということを目指していきたいと思います。」

 

一方、新丸ビルのすぐ近くにある複合商業ビル、丸の内オアゾの地下4階でも2月にベンチャー企業とのある実証実験が行われます。

人一人が通れる程度の細い通路、いくつものパイプが通っています。

三菱地所・街ブランド推進部の奥山 博之さんは次のようにおっしゃっています。

「(パイプには)蒸気と冷水が通っており、冷房や暖房のエネルギーになっております。」

「配管のつなぎ目に不具合があった時に、水や水蒸気が漏れたりするんですけど、そういった異常個所がないかをドローンで確認する実験になります。」

 

三菱地所のグループ会社、丸の内熱供給が管理する地下空間、通常は人の手で配管の点検をしていますが、2月6日に小型のドローンを使った無人点検の実証実験をするのです。

実験にはベンチャー企業、ブルーイノベーション株式会社が開発したドローンを使用します。

 

実は、三菱地所は自社の施設が多く建つ東京・丸の内地域での実証実験を支援しています。

昨年9月にはNTTドコモとベンチャー企業のハタプロが無線通信の実証実験を実施、そして昨年12月にはソフトバンクグループがフランスのベンチャー企業のナビヤと自動運転バスの実証実験を実施しました。

丸の内地域は多くの大企業が拠点を構えている他、メガバンクが本社を置いていてベンチャー企業がビジネス拡大の足掛かりを得やすい場所なのです。

三菱地所は丸の内をベンチャー企業の実証実験場にしようと考えているのです。

三菱地所・街ブランド推進部の奥山 博之さんは次のようにおっしゃっています。

「丸の内で実証実験をやるとなると、大企業からの注目が高まってきますので、結果的には例えばベンチャーさんと大企業さんとで一緒に実証実験をやるというケースも増えてくると考えております。」

 

一方、丸の内に隣接する大手町にある築60年の大手町ビル、この4階にあるフィノラボ(FINOLAB)は金融とITを組み合わせたフィンテック関連のベンチャー企業が集まる拠点です。

こちらも物件を持つ三菱地所が整備しました。

ここに入居するベンチャー企業の1社、リキッドは指紋や静脈を使って決済や本人確認を行うシステムを手掛けています。

リキッドジャパンの保科 秀之社長は次のようにおっしゃっています。

「当初から入らせていただいておりまして、フィノラボが大きくなると同時に我々も育てていただいて、大きくなってきました。」

 

実はリキッドはフィノラボが移転した昨年からフィノラボのゲートに指紋認証技術を提供し、フィノラボを文字通りの実験場として実証実験を進めてきました。

技術力の高さが認められ、リキッドのシステムは今年移転した三菱地所の新本社にも導入されています。

ベンチャー企業にとって、営業や人材採用の面で丸の内周辺にオフィスを持つ利点は大きいといいます。

カウリスの塩濱 剛治取締役は次のようにおっしゃっています。

「(丸の内は)金融街のど真ん中にあるということで、我々がお客様にアプローチする時にも非常にし易いですし、何かお客様にお越しいただく時にも非常にアクセスがいいと。」

 

また、MF KESSAIの冨山 直道社長は次のようにおっしゃっています。

「エンジニアの採用が重要になってくるんですけども、(好立地が)非常に有利に働いている状況かなと思います。」

 

ある日、三菱地所の担当者からオフィスが手狭になったベンチャー企業に同じビル内の他の階で広めの部屋の提案をしていました。

目指すのは大企業だけでなく、有力なベンチャー企業も数多く集まるオフィス街、丸の内地域のブランド価値を一層高める狙いです。

三菱地所の西地 達也さんは次のようにおっしゃっています。

「集積をとにかく進めていくことが我々のやらなきゃいけないところだと思っていますし、(丸の内の)「大企業しかいない」みたいなイメージをどれだけ変えられるか、みたいなところはあるかなと思っています。」

 

こうした取材を通して、番組のサブキャスターの大浜 平太郎さんは次のようにおっしゃっています。

「大企業とベンチャー企業が単に名刺交換するだけではなくて、実証実験も一緒にやって問題をあぶりだして、なおかつ解決まで持っていけるというのは相当大きいみたいなんですよね。」

「で、三菱地所にしても当然付加価値の高いビルづくりにつながってきますからWinWinなんじゃないですか。」

 

一方、番組コメンテーターであるモルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。

「(丸の内エリアがベンチャー企業の聖地になるためには何がこの先必要かという問いに対して、)やはり結合だと思いますね。」

「ただ、結合は2種類ありまして、(一つは)アイデアの結合ですね。」

「もう一つは人間の結合ですね。」

「で、人間の結合は科学者、工学者、営業の方、経理の方、一緒になって“背水の陣”の気持ちで新しい商品を作って売り込むということですね。」

「今の話は売り込もうというところが多いんですけども、この丸の内の新しい構想の壁となるのは何かというと、私は“働き方改革”だと思いますよ。」

「というのは、新しい会社を作っていくことは時間の制限はもう役に立たないんですね。」

「むしろ時間の制限とイノベーションはもう水と油の関係ですよ。」

「どの企業もそうですけども、イノベーションを一生懸命やろうとすると、時間がかかっちゃうんですね。」

「そうすると“働き方改革”が邪魔になっちゃうという可能性もあるので、今の国会で進めようとしているかたちの“働き方改革”を白紙撤回にして最初からやり直さなきゃいけないと思いますね。」

「そうしないとイノベーションは起こらないと。」

「人間が動けるような“働き方改革”をしないと新しい企業は出来ないという問題ですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

大企業は資金力があり、人材も豊富ですが、大組織であるがゆえの動きがスローであったり、新しいビジネス分野への参入に対しては慎重であったりという弊害を抱えています。

一方、ベンチャー企業は、新しいビジネスに素早く取り組み、その動きは常にスピーディなのですが、一般的に資金や人材は不足がちです。

ですから、大企業とベンチャー企業がお互いのメリットを生かすかたかたちで新事業に取り組めば、それぞれが単独で取り組むよりも大きなパワーを発揮することが出来ます。

しかし、逆に大企業とベンチャー企業がお互いに悪いところを前面に出してくれば、むしろ単独で取り組むよりもパワーを発揮出来なくなってしまいます。

しかし、現実のビジネス界は技術革新のスピードが速く、今後とも次々と新しい局面を迎えていきます。

ですから、グローバル化したビジネス界で主導権を握り、生き残こり続けていくためには、否応なく企業の規模や国籍に関係なく自社のビジネス展開においてメリットのある企業と手を組むことが求められるのです。

現実の世界では、実際に毎日のように提携やM&Aを通したこうした企業の動きが報じられております。

同時に、人の動きも今後増々転職が盛んになり、従来のように生涯同じ会社で定年まで働き続けるようなことは少なくなってくると思われます。

こうした働く環境下においては、技術の変革に沿った生涯学習が必須になります。

ですから、学ぶ意欲のある方々にとってはその翼を羽ばたける機会が増えていきます。

一方、学ぶ意欲のない方々にとっては居心地の悪い社会になってしまいます。

今、“格差社会化”が問題になっていますが、こうした観点からも“格差社会”はなくならないと思います。


 
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