2018年04月09日
アイデアよもやま話 No.3985 参考にすべき電子国家、エストニア その1 行政サービスの99%が電子化!

インターネット電話、スカイプの生まれたIT先進国、エストニア共和国についてはアイデアよもやま話 No.2823 2020年のデータ通信量は現在の1000倍に!などでご紹介してきました。

そうした中、1月15日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で電子国家、エストニアについて取り上げていたので2回にわたってご紹介します。

1回目は革新的な行政サービスについてです。

 

エストニアはIT・サイバー分野では世界トップレベルの技術を誇る国で、国全体のIT化を進める世界最先端の電子国家として知られています。

首都、タリンに住むあるご夫婦のお宅では、奥様のマウエル由紀子さんは昨年エストニア人と結婚してエストニアに移住してきたばかりですが、すぐに日本との違いを実感したといいます。

由紀子さんは次のようにおっしゃっています。

「国際結婚した時、日本では市役所で何時間も待たされて、ようやく手続きが終わったんですけど、エストニアでは5〜10分で手続きが終わり、後の残りは家からインターネットで申請出来たのですごく楽でした。」

「日本にいた時は、有給休暇を使ってわざわざ休んで市役所へ行き、いろんな手続きをしなければならなかったんですけども、エストニアでは自宅でインターネットを使って自分の空いた時間に簡単に出来るのですごく良い国だなって思いました。」

 

様々な手続きを楽にしているのは、エストニア政府のサイト「エスティ(EESTI)」です。

住所変更や納税、選挙の投票から年金管理、医療記録の閲覧まであらゆる手続きがパソコンやスマホでいつでもどこからでも出来るのです。

利用は簡単です。

政府が発行する個人IDカードを端末に差し込み、4桁の暗証番号でサイトにログイン、手続きは認証コード(12桁まで設定可能)で行います。

IDカードは免許証や保険証などとしても使える身分証で、15歳以上のエストニア人はほぼ全員が持っています。

タリン市民のある女性は次のようにおっしゃっています。

「このカードは素晴らしい。」

「何でも出来るし、いつも持っている。」

 

また、タリン市民のある男性は次のようにおっしゃっています。

「カードのお蔭で生活は快適でスピーディになった。」

 

このカード、小売店などでは商品が割引されるポイントカードとしても使うことが出来ます。

 

一方、全ての個人情報を一つのカードとサイトで管理されることに不安はないのかが気になるところですが、マウエル由紀子さんの夫、ラグナルさんは次のようにおっしゃっています。

「日本では短い間住みましたが、日本のハンコよりエストニアの2つの暗証番号システムの方が安全と思います。」

 

IDカードと「エスティ」の導入で、エストニアではなんと行政サービスの99%が電子化されています。

その結果、行政の現場のある区役所は、平日の午後に利用している人は全くおりません。

そして、受付の後ろ側には日本の市役所で見かけるような大量の書類などは一切ありません。

区役所を利用する市民は激減し、かつては30人以上いた窓口の職員は今はわずか3人です。

区役所全体のコストも4分の1以下に削減されました。

一方、わずかにバインダーの書類が残されていますが、それらはパソコンを持たない低所得者への対応や、結婚・離婚・不動産取引の3つの手続きのためで、紙はほとんど使われていません。

エストニアでは国全体の電子化で、毎月積み上げるとエッフェル塔と同じ高さ(300m)の紙を節約しているといいます。

エストニア政府の閣議室も通常はデジタル機器のみが持ち込まれ、書類を一切使わずに議論が行われています。

更にエストニア議会では、日本の国会では原則認められていないパソコンなどの使用は完全に自由です。

法案など書類は全てデジタル化されていて、審議はオンラインでも見られるため、議論への参加や投票の時以外は出席する必要もないといいます。

ある女性議員は次のようにおっしゃっています。

「議会での議論はスマホやタブレットで確認出来ます。」

「法案などの情報をタブレットで探すのは非常に楽です。」

 

エストニアのIT技術を生かそうとしているのは、日本の保険大手、東京海上日動火災保険(東京都千代田区)です。

電話会議の相手はエストニアに拠点を持つIT企業、プラネットウェイです。

東京海上日動は、プラネットウェイの技術を使い、保険金の支払い手続きを円滑化する計画です。

現在、事故に遭った場合、保険金の支払いには病院や保険会社との書類のやり取りが必要で、支払いまでに平均で2ヵ月以上かかっています。

今後はプラネットウェイの情報を安全に送る技術で病院と保険会社が電子化された医療情報を直接やり取りし、保険金の支払いは1ヵ月ほど早くなるといいます。

東京海上日動・IT企画部の明道 仙丈さんは次のようにおっしゃっています。

「従来も電子化は検討はしていたんですけども、いろんな病院とそれぞれに対して安全にデータを交換するための仕組みを作るというのが技術的に難しかった。」

「それが今回エストニアの技術を使うことで出来るようになるんじゃないかなと思います。」

 

日本の保険業界にとっては大きな変化ですが、エストニアの技術者からは以下の声が上がっています。

「日本にこのシステムがないことに驚いた。」

「日本は発展しているイメージだったから。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

それにしてもエストニアでは行政サービスの99%が電子化されているという現実には驚きです。

日本でも安倍政権により「働き方改革」が進められていますが、行政が率先してエストニアを見習って行政サービスのIT化に力を入れて欲しいと思います。

実際に行政サービスのIT化が進めば、間違いなく企業においても意識が変わり、様々なIT化により、生産性向上につながると思います。

既にマイナンバーカードの導入はされていますが、私たち国民が恩恵を受けられる実際のサービスにつながる動きはスピーディとは言えません。

 

第二次安倍政権の発足当初から成長戦略を掲げてきましたが、考えてみればエストニアの例にもあるように、AIやロボット、IoTなど様々なITの活用により具体的にすべきことはいろいろと見えてきます。

ですから、成長戦略をお題目のように唱えるのではなく、あるいは抽象的な議論に終始するのではなく、具体的な日本の国家像を掲げ、それに向けて邁進していただきたいと思います。

 

同時に、個々の企業においても東京海上日動火災保険の取り組みに見られるように、IT化により生産性の向上や新たなビジネスへの参入の可能性が広がるのです。

 

ですから、トップの決断如何によって、今はビジネスチャンスをものにすることが出来る絶好のチャンスの時を迎えていると言えます。

一方、従来通りの考え方を踏襲している企業にとっては、凋落の一途をたどる兆候が見え隠れする時にさしかかっていると言えます。


 
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