昨年11月19日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)でネット監視システム「XKEYSCORE」について取り上げていたのでご紹介します。
今やインターネットや携帯電話などの様々な情報機器を通じて個人のプライバシーが侵害されるケースが発生しています。
例えば、近年話題になったケースでは、元CIA局員のエドワード・スノーデンさんによる内部告発があります。
スノーデンさんは2013年に次のように発言されておりました。
「ポケットの中の携帯電話というセンサーで、どこへ行っても追跡されている。」
「普通の人のプライバシーへの影響を考えてみて下さい。」
アメリカのNSA(国家安全保障局)が携帯電話の通信内容などの個人情報を収集している事実をスノーデンさんが暴露したのです。
イギリスのガーディアン紙によると、NSAは一般市民らがやり取りする携帯電話のショートメールなどを世界中から1日当たり最大2億件程度を収集し、情報分析に利用していたといいます。
また、内部告発サイト「ウィキリークス」によると、アメリカのCIAがインターネットにつながったテレビをウイルス感染させ、電源がオフになっていると見せかけて、周辺の会話を盗聴しようとしていたと暴露しています。
国家が無断で個人情報を入手し、利用する懸念は決して他人事ではありません。
日本でも日々急速な進化を遂げるネット社会、その技術を利用して国家が個人情報を勝手に入手して利用する、そうした懸念は増々高まっています。
2017年6月に成立した、いわゆる“共謀罪”法ですが、この法律を巡っては捜査機関が犯罪を未然に防ぐため、電話やメール、SNSの情報を幅広く収集する可能性があると、専修大学文学部の山田
健太教授は指摘し、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「現在、日本や世界中の個人情報、プライバシーがどんどん集められてしまって、私たち一般市民が丸裸になってしまうという状況が起きているわけですね。」
「基本的に共謀罪は重大な犯罪を未然に防ぎましょうというのが目的です。」
「未然に防ぐためには一般市民の個人情報、プライバシー情報を出来る限り広く、そして完全に収集してチェックをするということが可能性が高いと。」
個人の思想、信条にまで立ち入る危険性さえ指摘されています。
進む管理社会を前に、我々はどのように対応していけばよいのでしょうか。
番組コメンテーターのお一人で法政大学の田中 優子総長は次のようにおっしゃっています。
「スノーデンは国家による個人情報の収集について警告をしたわけですが、「ザ・サークル」という映画は国家ではなくて人々がお互いに個人情報を収集したり、企業が収集したり、つまり全てのところで起こっているのです。」
「国家によるだけではないということを認識しなきゃなんないんですね。」
「そういうふうになった時に、スノーデンは面白いことを言っているんですけど、「民主主義国家で大事なのは、人が国がやっていることを知ることであって逆ではない」って言ってるんです。」
「やっぱり、それを私たちがちゃんと分かって、今政府が何をしているのかということを知るということがとても必要だと思います。」
「そういうふうにそれぞれの個人がお互いにやり取りしながら全世界で起こっていることを、権力が何をしようとしているかという観点で知る、そちらの方に向けるべきではないかと思いますね。」
また、同じく番組コメンテーターでジャーナリストの青木 理さんは次のようにおっしゃっています。
「スノーデンさんは実はもっと重要な証言をしていて、日本に「XKEYSCORE」というシステムを渡したと言うんですよ。」
「どういうシステムかというと、スノーデンによると、NSAが収集した世界中の個人のメールやSNSの情報を検索出来るシステムだというんですよ。」
「ということは、日本の警察なのかどこなのか分からないけれども、ひょっとすると知らないうちにもう使っているんじゃないか。」
「例えば関口とか青木とかというキーワードを入れれば、その人の通信(情報)が見れるっていうんですよ。」
「それを密かに使っているとしたらある種の国家犯罪ですよね、そんな法律ないわけですから。」
「ただこれ残念ながらロボットと同じでどんどん進化していくのは間違いないんですね。」
「防犯カメラなんていうのは全国に数百万台あって、顔認証出来るようになって、場合によってはネットワーク化すれば“神の目”になっちゃうわけですよ。」
「そうなってくると、国民的議論をしてどこかで歯止めをかける。」
「だから、犯罪捜査とか使うべき時は使うけれども、これには絶対に使わないでくれと。」
「プラス、きちんと透明にするっていうような作業、法的規制も含めてガイドラインを作っていくというのを本当に喫緊の課題ですし、何度も言いますけど人類史的課題かなと思っています。」
そして、番組の最後には同じく番組コメンテーターの岸井 成格さんが次のようにおっしゃっています。
「(ネット社会について、)これ本当に今世紀で一番大きなテーマだなというふうに思うんですけど、今日は初めて告白しますけど、メディアの世界は本当に深刻なんですよ。」
「青木さんの了解をまだとってないけども、「あなた盗聴対策どうしてる?」って聞いたら、いろいろなことを言われて、私も大体同じことをやってるんですよ。」
「つまり、出来るだけネットは使わない、あるいは使ってもGPSを止めちゃう、オフにしちゃうとかいろんなことをやる。」
「なぜそういうことになってくるかというと、ちょうどネット社会が始まった頃にエライ時代が来たなと我々メディアも思ったわけですね。」
「同時に政府の情報機関のOBから良くいえばアドバイスというか、悪くいえば忠告が来たんですよ。」
「何かというと、「あなた方は必ず盗聴されますよ、よっぽど気を付けて下さいよ」。」
「だから、最初のうちは新聞記者同士でも電話した時に、何かピーッと音がしたり、雑音が入ったりした場合に、「盗聴始まったな、1回止めよう、後でサシで会って話そうよ」と。」
「サシで話すのも今やダメだ、そういう時代になっちゃったっていうことですよね。」
「これをどう止めるかですよね。」
「しかもそれを誰が使って誰が分析してどうするかっていう、恐ろしい話なんですよね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
リスクにも重大なリスクから軽微なリスクまでいろいろあります。
そして今回ご紹介した個人情報の漏えいは、個人の人権を侵害する重大なリスクです。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
・スマホや携帯電話のセンサー、あるいは防犯カメラの顔認証技術による個人の場所の特定
・パソコンやスマホ、携帯電話の電子メールの盗み見
・盗聴器やウイルス感染させたテレビを通した周辺の会話の盗聴
更に、今回ご紹介した、世界中の個人のメールやSNSの情報を検索出来るシステム「XKEYSCORE」が日本政府に渡されているという事実はとても脅威です。
既に、日本政府は「XKEYSCORE」と活用した特定の国民の情報収集を実施しているかもしれません。
今は実施していなくても、その気になればいつでも実施出来るのです。
ですから今や私たちのプライバシーは丸裸状態になりつつあるのです。
更に、2017年6月に成立した“共謀罪”法に則り、捜査機関が犯罪を未然に防ぐため、電話やメール、SNSの情報を幅広く収集する可能性があるとの指摘がありますが、解釈次第でかなり強引な運用も出来そうです。
そこでこうしたリスクに対して、国民の立場からどのような対応策が考えられるでしょうか。
スノーデンさんも「民主主義国家で大事なのは、人が国がやっていることを知ることであって逆ではない」とおっしゃっているように、ネットやIoTの時代に相応しい国民の人権を守るための国の施策やサイバー犯罪に対する厳格な法的規制の確立がとても重要だと思います。
同時に、少しでも国がこうしたリスクを犯そうとしたり、犯した場合には声を大にして多くの国民が事の重要性を訴えることもとても重要なのです。