2018年03月29日
アイデアよもやま話 No.3976 インドで進むミニグリッド事業!

昨年12月12日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でインドで進むミニグリッド事業について取り上げていたのでご紹介します。 

 

世界で電気を使わずに生活している人の数はおよそ12億人もいると言われています。

実はそのうちのおよそ4分の1がインドに住んでいます。

そこに商機を見出してミニグリッドという新しい方法で電力を供給している日本企業があります。

 

インドの首都、ニューデリーから飛行機で1時間、インド北部に位置する街、ラクナウの幹線道路沿いでは連日電気工事が続きます。

街の中心部でも電力供給が不安定で、郊外の農村部では今も電気のない生活をしています。

昨年8月、ここで発電事業に参画したのが三井物産です。

インド企業と組んで手掛けるという発電所は畑に囲まれた狭い敷地、中には太陽光パネルが並んでいます。

三井物産の重枝 和冨マネージャーは次のようにおっしゃっています。

「1000人〜1万人に電気を供給するということで「ミニグリッド(小規模電力網)事業」と呼んでいます。」

 

「ミニグリッド事業」とは、小型の発電所をつくり、半径2.5kmの範囲内だけに電気を供給する、言わば電気の地産地消です。

この小型発電所を沢山つくって、より多くのエリアをカバーしようという取り組みです。

発電所の設備も極めてシンプル、太陽光パネルで発電し、それを夜も含めて24時間安定して供給出来るようにバッテリーに溜めるだけです。

開設コストも1ヵ所あたり約1000万円で済みます。

 

実はこの村には政府系の発電公社の電気も供給されています。

しかし、遠くの大型発電所から電気が送られてくるため、送電ロスが発生し、電力不足による停電が頻発します。

そこで住民たちは安定しているミニグリッドの電気を頼り、村の8割以上の世帯が利用しています。

現在85ヵ所の発電所から約4万5000人に電気を販売していますが、これを5年以内に1000ヵ所、100万人まで増やす計画です。

 

午後6時、日没を過ぎると村は一気に暗くなります。

ミニグリッドの電気を利用する民家では、玄関を入ってすぐの寝室にLED電球が一つ点いています。

この民家に住むシュクラさんは次のようにおっしゃっています。

「夕方5時から11時まで電球2個を使う契約です。」

「この部屋と台所に電気が点く電気代は1ヵ月に160ルピー(約280円)です。」

 

インドの農村部では月収1万円未満の家庭も少なくありません。

料金を支払える範囲で、少量の電気だけ買えるのもミニグリッドが支持される理由です。

シュクラさんの母親は次のようにおっしゃっています。

「以前は台所で火を起こして、その明かりで料理をしてたの。」

「でも今は料理がとても楽になったわ。」

 

近所の子どもがやってきて、ここで勉強することもあります。

村の商店街もミニグリッドの電気の活用で変化が起きていました。

ある青果店の店主は次のようにおっしゃっています。

「以前は6時の日没で閉店でしたが、今は電気があるので夜9時まで営業出来るようになりました。」

 

こちらの青果店では営業時間が伸びたことで、毎月の売り上げは1.5倍に増えました。

商店街全体に活気が出たと皆口を揃えます。

 

三井物産はインドで獲得した「ミニグリッド事業」のノウハウをインド以外の国や地域でも積極的に展開していく方針です。

注目するのが電気のない人口が6億人いると言われるアフリカ、特に東アフリカはインドからの移民が多く、インドでのノウハウが活きるといいます。

三井物産の八木 浩道南西アジア総代表は次のようにおっしゃっています。

「アフリカをにらんだ事業展開をするには、インドはインドで今のうちにしっかりやっておかないと2030年、2050年をにらんだ事業展開という意味では、ここが勝負どころかなと。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して感じるのは、一つのLED電球が人々の夜間の活動の幅を広げるということです。

また、現在も世界でおよそ12億人の人たちが電気のない生活をしているといい、こうした人たちに従来通りの化石燃料依存型の発電で電化生活を提供していけば、化石燃料の枯渇時期は増々早まってしまいます。

こうした観点から、三井物産がインドで太陽光発電による「ミニグリッド事業」を展開し、更にインド以外の国や地域でも積極的に展開していくという方針はとても理に適っていると思います。

なぜならば、「ミニグリッド事業」は火力発電所の建設に比べて、並行して多くの国や地域で進め易いので、短期間のうちに電力供給が可能です。

しかも建設コストもどんどん下がってきております。

更には地産地消なので停電のリスク分散にもなります。

 

今や持続可能な社会実現への取り組みは世界各国共通の大きな課題の一つです。

特に化石燃料の枯渇問題の解決が遅れれば、世界的に資源確保を巡る紛争の火種となることは間違いありません。

ですから、太陽光など持続可能なエネルギーを利用した発電による持続可能な社会の実現は世界平和の維持にとってもとても重要な課題なのです。


 
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