日本企業の製造工程における品質管理に関する不正問題が頻発している中、昨年12月19日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でこうした不正の原因と対応策について取り上げていたのでご紹介します。
番組コメンテーターで日経ビジネス編集委員の山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「私は不祥事が続いている背後に新3Kがあると思うんですね。」
「3Kというのはご存知のように“きつい”、“汚い”、“危険”じゃないですか。」
「それに対して今現在は“過剰品質”、“形骸化”、“事なかれ主義”が現場を悩ませていると思うんですね。」
「一つ目の“過剰品質”というのは三菱マテリアルや神戸製鋼のケースがそうなんですけども、日本の場合はとにかく顧客企業の品質の要求が高すぎて、少しぐらい下回っても大丈夫だろう、安全だろうっていうことで、どうしても甘えが生じがちだということが一つ目ですね。」
「それから“形骸化”ということで、いろんなものが形式的に、儀礼的に行われることが非常に多い。」
「一つが日産だとかスバルの最終検査ですね。」
「これについて言うと、例えば国内的には検査しなければいけないけども、輸出品については検査しなくていいんです、同じ製品でも。」
「そういうふうに、なんでこれやらなきゃいけないのかなと思いながら現場がやっている。」
「結果としてルール無視になってしまうというケースがあるんですね。」
「国土交通省も少なくとも簡素化するということは考えた方がいいと思いますね。」
「(3つ目の“事なかれ主義”について、)私は長年取材してきたんですけども、今現場がどうなっているかというと、元気がない、余裕がない、それから発言力がないんですよ。」
「(どうしてそうなったのかという問いに対して、)本社主導の利益至上主義がいろんなところにまん延していて、なんとなくプライドを失っている感じがあって、結果として何か不正があっても、それを見て見ぬふりをするとか“事なかれ主義”が出て来ているということで、全体としてかばうつもりはないんですが、やはりルールを犯した以上は代償を払う必要はあるんですけども、ただその構造的な背後にあるところ、単にけしからん、けしからんとこういう会社のことを言っているだけでは本質的な問題解決にいつまでたってもたどり着かないような気がします。」
「(こうした問題は製造業だけではなく、サービス業を含めてあらゆる産業に当てはまるのではという問いに対して、)いろんな職場で当てはまっているところがあるんで気を付けた方がいいと思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
山川さんのおっしゃった内容を参考に、私なりにプロジェクト管理の観点から今回ご紹介した品質問題の原因と対応策を以下にまとめてみました。
(原因)
・経営者の利益至上主義
プロセス(技術やアイデア)よりも成果(利益)を重視すること
結果:開発者や技術者などの“やる気”が削がれること
・風通しの悪い企業風土
下の者が上の者に対して何でも言える雰囲気がないこと
結果:形骸化したプロセスがいつまでも続けられ、現場の“やる気”が削がれること
・機能しない検査
検査機能が形骸化している
結果:不正問題としてマスコミに取り上げられ、企業のイメージダウンを招くこと
消費者への品質の悪い商品の提供
(対応策)
・プロセス重視
プロセスが十分に機能すれば、成果は自ずと付いてくること
・風通しの良い企業風土
何でも言える雰囲気により全社的により良いアイデアをかたちに出来る可能性が高まること
・品質管理の重要性の啓もう
品質管理が形骸化しないように、全社的に継続的な啓もう活動を実施すること
ということで、売り上げや利益の源は卓越した技術やサービスであることを経営者は肝に銘じ、プロセスの重視を貫いていただきたいと思います。
経営者がこうした方針を貫く意思を強固にすれば、きっと第一線の技術者はそれに応えてくれるはずです。