2018年03月07日
アイデアよもやま話 No.3957 人間の脳とAIがつながったら・・・ その3 「知能」は重要なことに集中する!

昨年12月29日(金)放送の「人間てナンだ? 超AI入門 特別編」(NHK総合テレビ)で人間の脳とAI(人工知能)がつながったらという衝撃的な内容について取り上げていたので5回にわたってご紹介します。

3回目は重要なことに集中する「知能」についてです。 

 

なお、番組の出演者は、東京大学大学院 特任准教授で進行役の松尾 豊さん、サイエンスライターでインタビューアーの吉成 真由美さん、そしてインタビューを受けるのはシンギュラリティという言葉の生みの親で発明家であり世界のAI研究の最前線を走る未来学者、レイ・カーツワイルさん、世界的な言語哲学者、ノーム・チョムスキーさん、そして理論物理学者、リーマン・ダイソンでした。

 

未来学者のレイ・カーツワイルさんは吉成 真由美さんによるインタビューの中で次のようにおっしゃっています。

「(記憶の研究によると、人間の記憶がいかにもろいものかが分かるが、なぜそのように進化したのか、可能性の一つ目は「忘れる」ことが生存に役立ってきたが、痛みやトラウマ、ストレスなどを忘れることが種の存続に必要だった、可能性の二つ目は記憶の曖昧さが創造性に関係していることだが、記憶が曖昧だからこそアイデアをつなぎ合わせて新しいことを思い付く創造性が種の存続に有利に働いたため、記憶力は弱いままに保たれて来たのか、そうだとするとAIの助けによって記憶が膨大でクリアになったら、創造性が犠牲になってしまうのではという問いに対して、)我々が物忘れする一つの理由は能力の限界だ。」

「膨大な数の神経細胞があると言っても脳の記憶量には限界がある。」

「子どもが言語を早く学習出来るのは新しい神経細胞を使い放題だからだろう。」

「だが10代になる頃には知識でいっぱいになり、新しく覚えるには何かを忘れる必要がある。」

「でもね、コンピューターだって無限ではない。」

「そのように見えるかもしれないが、全てを完全に記憶出来るわけではない。」

「知識の特性の一つとして情報の取捨選択がある。」

「そうしなければ押し寄せる情報の波に飲まれてしまう。」

「人が10年も前に起こったことを「覚えている」と言う場合、それは体験をビデオのように記憶しているのではない。」

「実際は記憶の断片をつなぎ合わせて新たに再構築している。」

「コンピューターも基本的には同じだ。」

「それが知能の本質でしょう。」

「コンピューターがクルマを運転出来るのは情報の優先順位を判断しているからだ。」

「これは非常に人間的なタスクだ。」

「通り過ぎる木の枝ぶりや葉の全てに注意する必要はない。」

「でももしボールが目の前に飛んできたら、近くに子どもがいるかもしれないから特別に注意する。」

「そういう知能を持っていなければならない。」

「重要なことに集中する、それが知能というものだろうね。」

「機械にもそれが出来るようになってきている。」

 

機械は単に情報を集めるだけでなく、優先順位を判断出来るようになっているのです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

前回、「知能」とは限られた資源を用いて問題を解決する能力であるとお伝えしましたが、今回は「知能」は情報の優先順位を判断して重要なことに集中していることが分かりました。

こうした思考プロセスが人間の脳の優れた省エネにつながっているのです。

ですから、AIのエネルギー効率や処理効率をより高めるうえで、人間の知能の思考プロセスを解明することはとても参考になります。

 

また、自動運転を例にとると、今自動運転車の開発にあたって実際の道路上での試験運転が続けられていますが、あらゆる道路状況や自動車の流れを想定したバーチャル空間でのテストによってより安全で完成された自動運転車用のAIに近づけることが出来ると思われます。

その際、情報の優先順位を判断して重要なことに集中するという「知能」の特性から、沢山のジレンマが出て来て、多くの課題が見えてくると思います。

ちなみになぜこうしたことを思ったかといいますと、先日高速道路をクルマで走行中に斜め前を走行中の小型トラックからいきなりプラスチック製のバケツが私のクルマの前に飛んできて、思わずスピードを緩めましたが、そのバケツにぶつけて飛ばしてしまいました。

幸いにしてクルマに傷は残らず、後続のクルマもバケツとの衝突を回避していました。

今回はプラスチック製のバケツということ、そして後続のクルマとの車間距離が十分だったので大事故には至りませんでしたが、もしプラスチック製のバケツではなく、重量のあるモノであり、後続のクルマとの車間距離がほとんどなかったらと考えると今でもゾッとします。

このような場合、自動運転車はどのような判断を下すのか、とても興味が湧いてきます。

それでも、こうした場合、全てのクルマが自動運転車になれば、事故が起きても最小限に食い止められるとは思います、

 

ということで、AIの活用により全ての課題や問題が100%解決出来るというわけではなく、あくまでも人間の判断に比べれより良い判断が下せるということになるのです。


 
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