昨年12月29日(金)放送の「人間てナンだ? 超AI入門 特別編」(NHK総合テレビ)で人間の脳とAI(人工知能)がつながったらという衝撃的な内容について取り上げていたので5回にわたってご紹介します。
1回目は以前にもお伝えしたシンギュラリティに(技術的特異点)ついてです。
なお、番組の出演者は、東京大学大学院 特任准教授で進行役の松尾
豊さん、サイエンスライターでインタビューアーの吉成 真由美さん、そしてインタビューを受けるのはシンギュラリティという言葉の生みの親で発明家であり世界のAI研究の最前線を走る未来学者、レイ・カーツワイルさん、世界的な言語哲学者、ノーム・チョムスキーさん、そして理論物理学者、リーマン・ダイソンでした。
そもそもシンギュラリティとは、人間とAIが融合し、人間の進化が急激に加速する時のことで、それは2045年に起こるといい、10年前に未来学者のレイ・カーツワイルさんによって提唱されました。
レイ・カーツワイルさんは次のようにおっしゃっています。
「(レイ・カーツワイルさんは「人類はシンギュラリティの入り口に向かっている」と提唱しているが、シンギュラリティという言葉とその基本にある考えは何かという問いに対して、)計算によれば2045年までに我々の知能は10億倍にもなるはずだ。」
「まさしくシンギュラー(飛躍的)な変化だ。」
「物理の用語を借りて、これを「シンギュラリティ」と呼んでいる。」
「物理学で「シンギュラリティ」といえばブラックホールを指す。」
「ブラックホールの境界線の向こうでは全て劇的に変化してしまう。」
「「その先が予測不能」という意味で「シンギュラリティ」という言葉を使っている。」
「ただし、我々には知性があるからブラックホールの先を想像することは可能だ。」
「こういったことが見えるとか、こういったことが起こるとかね。」
「この先の未来に起こる「シンギュラリティ」についても同じだ。」
「まず言えることは我々の知性が飛躍的に向上するということだ。」
「(なぜ「シンギュラリティ」という概念にたどり着いたかについて、)1981年に「タイミング」というものを考え始めたんだよ。」
「適切な時に適切な場所にいることが発明家として成功するためには重要だと気付いたんだ。」
「タイミングはあらゆる事柄においてとても大事だよね。」
「そこで私はテクノロジーのトレンドに注目した。」
「未来は不透明だとよく言われるが、十分な情報を集めてビジュアル化すれば、かなり的確な未来予測が出来るはずだと考えた。」
「そして驚くべきことに、ある一つの事だけは正確に未来予測が可能だと発見したんだ。」
「全ての事とは言わないよ。」
「ただし、情報テクノロジーに関しては処理速度の推移がハッキリと予測出来ることが分かったんだ。」
「その変化は「指数関数的」なんだ。」
「非常にスムーズなグラフが描けるんだよ。」
「我々の脳が誕生した大昔、世界は「直線的」に見えていた。」
「あの動物はあっちに動いているから、あのあたりで出くわしてしまう・・・」
「私がこの道を進んでいったら、あのあたりで出くわしてしまう・・・」
「「それはまずい、別の道の方がいいな」ってね。」
「動物の速度変化は直線的で、急激な加速はしなかった。」
「だから私たちの認識は直線的になり、それはそれで機能していたわけだ。」
「ここが私と私を批判する人との違いだ。」
「彼らは現実に対し、直線的な予測を行うだけで、「指数関数的」な現実を無視している。」
「直線的な変化は、1,2,3・・というものだが、指数関数的な現実の変化は1,2,4・・・となる。」
「大して違わないじゃないかって?」
「でも30段階の後は直線的な変化では30なのに、指数関数的な変化では10億にもなる。」
「40段階では1兆になる。」
「例えばヒトのゲノムの遺伝子全体を読む「ゲノム解読プロジェクト」は7年経過した段階では1%の解析が終わっただけだった。」
「こう言って批判する人ばかりだった。」
「1%解析するのに7年かかったなら、全て終えるには700年かかるね。」
「これが直線的な思考だ。」
「でも私は「1%終わったならもうほとんど終わりだな」と言った。」
「なぜならば毎年2倍ずつ加速するからたった7回で100%になるはずだ。」
「だからあと7年で解析は終わる」、実際そうなったよ。」
「これ(スマホ)は私が学生だった頃のコンピューターの数十億倍の速度だ。」
「価格当たりで換算するとね。」
「そして大きさは100万分の1になった。」
「もしこのままのスピードであと25年経ったら更に10億倍も速くなり、大きさは更に10万分の1、赤血球ぐらいになるだろう。」
「これが現実の変化の背景にあることだ。」
「あらゆる情報テクノロジーに見られる現象なんだよ。」
「晩年に発症する病気に対して普通免疫系は役に立たない。」
「進化は長寿を選択してこなかったからね。」
「大昔は長寿であることにメリットがなかったからね。」
「食べ物は「限られていたし、25歳ぐらいで子育てを終えれば、進化上は「お役御免」だった。」
「人間の寿命は1000年前は19歳だった。」
「わずか200年前でも37歳だった。」
「つまりAI(人工知能)の重要な応用先は免疫の強化だ。」
「ガンやエイズなど、免疫が役に立たない病気に対抗するんだ。」
「病気や老化を根絶するためのシナリオはもう見通せている。」
「それは医療用のナノロボット導入だ。」
「極めて小さいロボットが開発出来るようになるだろう。」
「2030年頃までに計算能力とコミュニケーション能力を備えた微小なロボットを大量に血液の中に送り込み、健康を保つことになる。」
「大変な勢いで「仮想現実」が実現しようとしている。」
「既に特殊メガネをかけたり、耳や腕に装置を付けたりして体験出来る。」
「だが2030年代にはそれが神経系の中で行われるようになる。」
「現実と寸分も違わない世界が脳内に実現することになる。」
「そして現実を拡張する「拡張現実」の方はもう日常になるだろう。」
「何百マイル離れた場所にいる人もすぐ隣に感じることが出来るし、握手だってハグだって出来る。」
「本当に一緒にいるような感じになるよ。」
「そして最も重要なのは脳の外側にある思考を担う部分をインターネットに直接つなぐ。」
「例えばこのスマホがインターネット全体につながると、何百万倍ものパワーになる。」
「人類の知の全体にアクセス出来るわけだ。」
「今は脳からインターネットに直接アクセス出来ないが、いずれ装置を使わず直接アクセス出来るようになるよ。」
「そうすれば毎日我々がやっているような検索や翻訳でも役立つが、より大事なのは思考の規模を拡大出来ることだ。」
「そもそも脳はどのように知能を生み出しているのか、思考を担う部分には約100個の神経細胞ユニットが3億個ほどある。」
「それぞれのユニットに特有の機能があり、それが積み重なっているわけだ。」
「これが思考だよ。」
「最も下層では「テーブルの端は直線だ」ぐらいしか認識出来ないが、最上層では「面白い」、「皮肉だ」、「彼女は美しい」とかが分かるんだ。」
「約200万年前、脳の拡大が起こった。」
「脳が大きくなったことで、階層構造が増え、それが言語の誕生につながり、芸術や音楽がそれに続いた。」
「どんなに原始的な文化でも必ず音楽が存在する。」
「他の動物ではありえないね。」
「我々はまた同じことをする時期に来ている。」
「脳の最上層をインターネットにつなげるのだ。」
「インターネットは人工的な脳として機能することになる。」
「新たな脳が拡大するわけだ。」
「ちょうど200万年前に突然脳の拡大が起こったのと同じようにね。」
「思考の拡大は無限になる。」
「2030年代には生物としての脳と人工的な脳が融合するだろうね。」
「脳の拡張に限界はなくなるのさ。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
まずレイ・カーツワイルさんの唱えていることを整理してみると、あらゆる情報テクノロジーは指数関数的に進歩しており、AIの進歩により、そのAIと私たちの脳をつなげることで2045年までに私たちの知能は10億倍にもなるということです。
そして、この流れは2045年以降も永遠に続くのです。
ですから、量的にも質的にも私たちの脳における知識や知能の機能の拡大も無限に続くことになるのです。
そして、この対象は私たちの身体、および対人的、社会的あるいは宇宙など対外的なコミュニケーションに向けられます。
医療用のナノロボットや「拡張現実」はその具体的な一例と言えます。
ということで非常に楽観的に考えれば、私たち人類はいよいよ永遠の寿命を手に入れ、自分の思考能力を最大限に高めることが可能になり、あるいは短時間のうちに自分の欲しいモノを手に入れたり、自分の行きたい場所に行けたりというようにこれまでとは異次元の暮らしを手に入れることが大いに期待出来るのです。
まさに、私たち人類は今やシンギュラリティの入り口に向かっているのです。