2018年02月23日
アイデアよもやま話 No.3947 アメリカ、小型核兵器増強へ!

前々回は進化する「殺人ロボット兵器」について、そして前回は長崎で被爆した少年の重い言葉についてご紹介しましたが、世界は様々な武器が開発され、北朝鮮の核兵器開発などどんどん物騒な方向へと進んでいくように思えます。

そうした中、2月3日(土)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でアメリカによる小型核兵器開発について取り上げていたのでご紹介します。 

 

アメリカの核戦略が大きく転換です。

トランプ政権は核の体制を見直し、“低出力核”と呼ばれる威力を抑えた核兵器の増強など、核戦略の強化を打ち出しました。

専門家からは核兵器使用のハードルを下げる危険があるとして強い懸念の声が上がっています。

トランプ大統領は昨年2月のインタビューで次のようにおっしゃっています。

「他国が核兵器を所有するなら、我が国はその中で一番になる。」

 

核戦力の強化に意欲を示してきたトランプ大統領は1月30日の一般教書演説でも次のようにおっしゃっています。

「核戦力を近代化し、再建しなければならない。」

 

そして、日本時間の2月3日早朝にトランプ政権は新たな核戦略を発表しました。

シャナハン国防副長官は次のような声明を出しています。

「困難な安全保障環境のもと、抑止力強化に向け、しっかりした行動が求められている。」

 

核兵器のうちICBM(大陸間弾道ミサイル)などで発射され、壊滅的な破壊力を持つものは“戦略核”と呼ばれますが、増強が示されたのは威力を抑えた核弾頭“低出力核”です。

“低出力核”を搭載した開発中の核弾頭は“スマート核兵器”とも呼ばれ、戦闘機から投下されます。

 

目標に合わせて爆発の規模を調節出来、一番小さい場合は広島に投下された原爆の50分の1の規模になります。

新たな戦略ではこのような“低出力核”を搭載したSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を導入するとしています。

またオバマ前政権が退役させた艦艇や潜水艦から発射可能な核巡航ミサイルの再開発にも着手するとしています。

 

アメリカが目指す核戦力の強化はロシアや中国の核戦力の強化などに対抗するためだとしています。

日本時間の2月3日早朝にシャナハン国防副長官は次のような声明を出しています。

「我々は核兵器など使いたくない。」

「アメリカと同盟国・友好国の安全を確保するための効果的な抑止力を維持したいのだ。」

 

こうした動きについて、NHKワシントン支局の石山 健吉さんは次のようにおっしゃっています。

「(なぜ“低出力核”という核兵器を強化するのかその狙いについて、)ロシアの核戦力に見合った反撃力を持つためだとしています。」

「トランプ政権は北朝鮮の核問題を喫緊の課題と位置付けていますが、中長期的にはロシアの脅威の方がより深刻だと見ているからです。」

「アメリカは冷戦後の軍縮で局地的な攻撃に使用するいわゆる“戦術核”を減らして、現在の保有数は300発とされていますが、ロシアは逆に増強を図って2000発近くを保有していると分析されています。」

「この差を埋める抑止力として“低出力核”の増強を図るというわけです。」

 

一方、ハーベイ元国防次官補代理は次のようにおっしゃっています。

「ロシアは紛争時に核の限定的な使用で有利な結果を得られると考えている。」

「アメリカは、ロシアの核使用は恐ろしい結果を引き起こし、目的は達成出来ないと納得させなければならない。」

 

このように相手が強化するならこちらも強化するとなると、歯止めがかからないのではという指摘に対して、石山さんは次のようにおっしゃっています。

「その危険性はあります。」

「軍縮派の専門家からは強い警笛を鳴らしています。」

 

カントリーマン元国防次官補は次のようにおっしゃっています。

「“ロシアの全ての能力に対抗しなければ危険”というのは闘争本能から来る幻想だ。」

「かつて米ソを危険で愚かな軍拡競争へと導いた考え方そのものだ。」

 

これについて石山さんは次のようにおっしゃっています。

「こうした大国間の争いが世界を再び冷戦時代の緊張状態に逆戻りさせる可能性は否定出来ません。」

「唯一の被爆国である日本をはじめとした国際社会全体がその行方を目を凝らして見ていく必要があると思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

小型核兵器増強を進めるアメリカのトランプ大統領には、是非前回ご紹介した谷口 稜曄(タニグチ スギテル)さんのような被爆者の体験した悲惨さを知っていただきたいと思います。

広島や長崎での原爆の被爆者は生涯を通して、大なり小なりその痛みに悩まされ続けるのです。

 

そして、今や核兵器の強大な威力から、万一核保有国同士が核兵器を使用した戦争に突入すれば“共倒れ”で瞬く間にどちらも想像を絶するような悲惨な被害に遭うことは間違いありません。

そして、今アメリカが進めようとしている小型核兵器の増強は核戦争勃発のハードルを低くしてしまうと思わざるを得ません。

万一、アメリカと北朝鮮の間で戦争が勃発し、アメリカが小型核兵器を使用するようなことがあれば、間違いなく北朝鮮は核兵器でアメリカ本土を攻撃することになるでしょう。

勿論、そうなればアメリカも大型核兵器で北朝鮮が跡形もなくなるほどの反撃を加えることになるでしょう。

このような事態になれば、米軍基地のある日本や韓国も当然北朝鮮の攻撃により甚大な被害を受けることになるでしょう。

更にはロシアや中国、あるいはアメリカの同盟国の動きもどうなるかとても心配になります。

最悪の事態は、第三次世界大戦の勃発です。

 

こうした人類滅亡への負のスパイラルを食い止めるためには、やはり核兵器廃絶に向けた国際的な真剣な議論が求められます。

その第一歩として、大量の核兵器保有国であるアメリカ、ロシア、中国の三国が率先して核兵器削減に向けた取り決めを行い、そのうえで北朝鮮や他の核保有国に対しても核兵器開発の取りやめ、更には核兵器の削減・廃絶を進めるように働きかけるということがとても重要だと思うのです。

自国の核保有はそのままに、北朝鮮に対してだけ核兵器開発を止めろというのでは北朝鮮を納得させることは出来ないと思うのです。


 
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