2018年02月16日
アイデアよもやま話 No.3941 伸び悩む個人消費!

昨年11月15日(水)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で伸び悩む個人消費について取り上げていたのでご紹介します。

 

昨年11月15日に発表されたGDP伸び率(実質)の速報値は+0.3%と、7期連続のプラスとなり、経済は息の長い回復を続けています。

回復を支えているのは好調な輸出の+1.5%ですが、一方でGDPの半分以上を占める個人消費はー0.5%と、マイナスに転じ、振るいませんでした。

その理由の一つと言われているのは“お金を使いたがらない”、”モノを欲しがらない“消費に慎重な若い世代の問題です。

 

こうした“使いたがらない”若い世代にどうやって商品を買ってもらうのか、企業側は対応を迫られています。

大手化粧品メーカーの資生堂は、昨年11月に若者にターゲットを絞った新たなブランドを立ち上げました。

化粧水や美容液などの基礎化粧品の売れ筋は3千円〜1万円台ですが、新たな商品は全て千円以下とし、コストを抑えるため販売も宣伝もネット限定にしました。

初めてこの化粧水を買った20代の女性も価格の安さに魅かれたといいます。

こちらの女性は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自分の好きなことにお金をかけたい、質は保てる程度にコストを抑えられるもの・・・」

 

一方、資生堂事業戦略部ブランドマネージャーの長野 種雅さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(お客様の)行動が変われば当然我々もその行動に追従して変わらなければいけない。」

「若年層のお客様の支持を得ていくところにチャレンジしていきたい。」

 

一方、若者の将来の需要を掘り起こす試みも行われています。

埼玉県坂戸市にあるゴルフ練習場では、19歳、20歳なら料金が無料です。

宿泊施設予約サイトの運営会社が若者向けに始めた試みで、スマホのアプリに年齢などを登録すると、全国720余りのゴルフ場や温泉などが原則無料で利用出来ます。

アプリに登録した若者は延べ88万人ですが、無料でレジャーを体験してもらい、30代、40代になってからお金を使ってもらうのが狙いです。

この会社では今後無料体験などのサービスを更に増やす考えです。

株式会社リクルートライフスタイルの森戸 香奈子さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「お若い頃にあるサービスのファンになっていただくと将来的にも続けていただけると、将来への投資をしているということですね。」

 

専門家は若い世代ほど経済不安が強くなっていると指摘しています。

ニッセイ基礎研究所の久我 尚子さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「目の前の雇用・収入不安と将来の社会保障不安、その両面を緩和していかないと、消費をしようという考えには中々ならないと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

伸び悩む個人消費に関して番組を通して感じることは、以下の三つです。

一つ目は、そもそも個人消費の伸び悩みそのものは本質的な問題なのかという疑問です。

例えば、“もったいない精神”で購入した衣服を大事に何年も着続けていれば、その分消費は増えません。

あるいはお互いに不要なモノを交換して使い回しする場合やシェアリングサービスも同様です。

このようなライフスタイルが定着すれば、自ずと表面的な個人消費は停滞しますが、人々の実質的な暮らしは従来とほとんど変わらないのです。

そしてこうしたライフスタイルは省エネにも直結し、結果的に地球温暖化問題や地球環境問題の緩和にもつながるのです。

ですから、表面的な個人消費の伸び悩みに一喜一憂するよりも、人々の暮らしに対する満足度を重視すべきだと思うのです。

 

そうは言っても、一方で流行のファッションを身に付けたい、海外旅行をしてみたい、あるいは子どもを塾に通わせたいというような願望もあります。

こうした願望を満たすためにはそれなりのお金が必要になります。

 

そこで二つ目は、番組でも指摘されていたように、雇用・収入、および生涯を通しての社会保障の安定です。

この2つが安定していなければ、人々は安心して暮らすことは出来ないので、どうしても消費に積極的になれません。

この解決策は国や地方自治体を中心に責任を持って取り組んでいただくしかありません。

 

そして三つ目は、企業による魅力的な商品やサービスの提供です。

例えば10代の若者はスマホを購入するために小遣いの大半をつぎ込んだり、バイトをしたりするといいます。

このようにどうしても手に入れたいと思うような商品やサービスは、他の出費を抑えてでも個人を消費に向かわせるのです。

ということは、人々が消費のために投入出来るお金には限りがありますから、この全体のパイの中で、各々の企業が提供する商品やサービスの間で消費を奪い合う争奪戦が繰り広げられるということになるのです。

番組に登場した資生堂やゴルフ場はいかにパイを奪うかというまさにこうした取り組みの一つといえます。

そして、こうした企業努力の成果が利益や雇用の増加に結び付き、結果的により多くの人たちの収入を増やし、消費のパイを広げることになるのです。

 

ということで私たちのライフスタイル、雇用や収入の安定、そして魅力的な商品やサービス、この3つが個人消費の行方を決定しているということになると思います。

そして、繰り返しになりますが、金額ベースでの個人消費の伸び悩みそのものは本質的な問題ではないと思うのです。


 
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