1月23日午前10時過ぎ、草津白根山(群馬県草津町)の一つ、本白根山の噴火により1人が死亡、11人が負傷されました。
今回の噴火は専門家も予知出来ないほどの突然の発生だったといいます。
テレビのニュースで噴火当時の現場付近の様子を見ていて、たまたま現場近くにいらした方々は生きた心地がしないほどの恐怖を感じておられたろうと思いました。
そうした中、昨年11月24日(金)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で光子時計による火山活動の監視について取り上げていたのでご紹介します。
時間の進み方は高さによって違うといいます。
例えば、高さ634mの東京スカイツリーの展望台に登ると、理論上地上にいる時よりも時間が速く進むのです。
この理論を唱えたのがアインシュタインです。
ただし、進み方の違いは実際はごくわずかで計ることは難しかったのです。
その違いを最新の超高精度時計を使って計ろうという実験が始まることになりました。
そびえ立つ東京スカイツリーで実験を行うのは、東京大学の香取 秀俊教授らのチームです。
実験ではスカイツリーの高さを利用、1階と展望台(450m)の2ヵ所に超高精度時計を設置し、時間の進み方の違いを調べます。
アインシュタインの一般相対性理論では、時間の流れるスピードは重力の強さにより異なるとされています。
地球の中心から離れれば離れるほど重力が弱まっていき、高い場所の方が時間の進み方が速くなるというのです。
標高が1cm違うと10の18乗分の1秒だけ時間の流れがずれると考えられています。
このごくわずかなずれを実験で捉えようというのです。
実験に使うのは光格子時計で、香取教授のチームが開発した超高精度の時計です。
レーザーの光でつくった格子状の小さな空間にストロンチウムの原子を閉じ込めて振動する回数を数えることで時間を計ります。
宇宙誕生から現在までの138億年の時間を計っても誤差は1秒以下の正確さといいます。
2台をそれぞれ1cm違う台に置いても時間の流れが違うことを検出出来ます。
香取教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「一般相対性理論がどこまで正確であるか、それを時計で実際に証明することが出来る、その第一歩だと思っています。」
さて、この光格子時計は様々な分野で利用出来ると考えられています。
ここまで高い精度になると地球上で起きる時間や空間のごく小さなゆがみが検出出来るようになるからです。
例えば、火山の頂上に光格子時計を設置した場合、重たいマグマが移動すれば重力に変化が起き、時間の進み方にも変化が生じます。
この変化を捉えれば火山活動の監視に役立ちます。
スカイツリーでの実験は今年4月に始まる予定です。
はたしてごくわずかな時間の進み方の違いを捉えることが出来るのでしょうか。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
冒頭にお伝えしたように、今回の本白根山の噴火により犠牲者が出てしまったことは、もし光格子時計が設置されていればと思うととても残念です。
しかし、火山大国日本においては今後ともいつどこの活火山が同様の噴火が起きるか分かりません。
こうした火山噴火の予知対策として、今回ご紹介した光格子時計の活用はとても有効だと大いに期待出来そうです。
ということで、スカイツリーでの実験が成功し、早急に国内の火山に光格子時計を設置し、火山の噴火による被害を最小に止めて欲しいと思います。
それにしても、今回お伝えしたアインシュタインの一般相対性理論がどこまで正確かこれまで実験で証明されていなかったという事実は意外でした。
それほど香取教授のチームが開発した超高精度の光格子時計が画期的だということでしょうか。
そうだとすれば、この高精度時計の開発それ自体も大いに評価されていいのではないかと思います。