2018年01月08日
アイデアよもやま話 No.3907 老朽化マンションの寿命を大幅に伸ばす新技術!

昨年10月16日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で老朽化マンションの寿命を大幅に伸ばす新技術について取り上げていたのでご紹介します。

 

不動産経済研究所は昨年10月16日に2017年度上半期の首都圏マンションの平均販売価格が前年同期比で5.9%上昇し、バブル期以来の高水準になったと発表しました。

価格の上昇が続いているマンションですが、分譲と賃貸を合わせて都内に建っているマンションはおよそ13万3000棟に上るといいます。

古くから建っているマンションも多いのですが、全体の2割のマンションは古い耐震基準のままで現在の基準を満たしていないといいます。

こうした老朽化マンションを再生する新たな方法が登場しています。

そのキーワードは“超寿命化”です。

 

東京都大田区のとあるマンションは、解体前は築50年以上の賃貸物件でした。

しかし、現在の耐震基準を満たしておらず、オーナーは建て替えを希望、ただ現行の法律に合わせて建て替えを行うと現行の6階建てが3階程度に抑えなければいけなくなるといいます。

そこで、次に考えたのは耐震補強工事でしたが、三井不動産レッツ資産活用部の宮田 敏雄さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「よく見る筋交いのような耐震補強の場合ですと、いかにも耐震補強したと分かる美観状の問題と眺望上の問題が出てくるということがございますので、せっかく耐震補強しても賃貸マンションとしての資産価値が全くないという状態になってしまいます。」

 

そこで三井不動産が提案した新しい手法がリファイニング工事です。

これは、内装を新しくするリフォームや建物の一部に手を加え、間取りのアレンジや耐震補強をするリノベーションとは違います。

建物の構造を保つために必要な骨組み以外は全て解体し、新たな壁などを加えることで建物全体の耐震性能を上げ、寿命を延ばすというのです。

更に、残した骨組みも日本で初めてという画期的な方法で補強しています。

この方法について、青木茂建築工房の青木 茂社長は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「鉄筋に皮膜を作って錆びないようにするという一つの工法なんですね。」

「鉄筋が錆びないことが前提なんですね。」

「そうしますと50年くらいは錆びないだろうということを想定してやっている。」

「古い建物を壊そうと言っても、そうは簡単に壊れないんですよね。」

「大変なエネルギーがかかるんですよ。」

「それが再生出来るというのは、資産的な面でも環境的な面でもすごくメリットが多い。」

 

古いコンクリートの表面をきれいにしたうえで、中の鉄筋部分に薬品を直接注入するという「リハビリカプセル」工法です。

これでコンクリートの寿命、ひいては建物の寿命を大幅に伸ばせるのだといいます。

一見大掛かりに見える一連のリファイニング工事ですが、建て替えに比べるとコストは30%安く、工期も1年近く短くなるといいます。

これで耐震基準をクリア出来るだけでなく、現行の法律に適していることを示す「検査済証」を受け取ることが出来ます。

そのため新たな資産として認められ、銀行から融資を受けることも可能だといいます。

また部屋を借りるお客にとっても、新築物件より安く借りることが出来るメリットがあります。

オーナーとお客の双方にメリットがあると言われるこの新たな手法ですが、老朽化マンションへの対策は加速するのでしょうか。

 

番組コメンテーターでA.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは、次のようにおっしゃっています。

「(中古物件を生かすという動きについて、)流通物件における中古(マンション)の比率はまだ15%で、それに対してアメリカは8割、イギリスは9割なんです。」

「なので、これだけ日本も成熟してきているので新しいものがいいものだという価値観からそろそろ卒業してもいいのかなと思います。」

「(もう少し中古を見直すべきかという問いに対して、)そうですね。」

「人口減少社会です。」

「で、リノベーションでかなり私的なデザインマンションも手に入るようになりました。」

「耐震補強とか安全基準をクリアするかたちで、かつ3割ローコストで出来るということだとすると、こういう手法をもっともっと生かしていくというのが一つ大事なポイントだと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

首都直下型地震に関心が寄せられている中、都内の2割のマンションは古い耐震基準のままで現在の基準を満たしていないと状況は無視出来ません。

そうした中、老朽化マンションの寿命を延ばす新しい手法「リファイニング工事」、および日本で初めてという「リハビリカプセル」工法により建て替えに比べるとコストは30%安く、工期も1年近く短くなり、外観も損なわず、現行の耐震基準もクリア出来るので、資産価値も下がらないといいます。

ですから、こうした工法は画期的と言えます。

 

一方、日本の流通物件における中古マンションの比率はまだ15%で、アメリカは8割、イギリスは9割といいますから、この数字だけからみると、日本のマンションの寿命は“もったいない精神”においてアメリカやイギリスに比べてはるかに劣っていると言わざるを得ません。

省エネ対策の一つとして、一つのモノを出来るだけ長く使い続けることはとても大切です。

ですから、何でもかんでも古くなったから作り替えるという考えは捨てた方がいいと思います。

勿論、古くなったエアコンや冷蔵庫をいつまでも使い続けるよりも最新型に買い替えた方が電力消費の観点から省エネになるというような例外もありますが。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています