日本電産株式会社(京都市南区)の創業者、永守重信会長(73歳)については、これまでNo.3744 ちょっと一休み その601 『ある日本の資産家に見る望ましいお金の使い方』などでお伝えしてきました。
そうした中、昨年の10月18日(水)付け読売新聞の朝刊記事で売り上げ10兆円を目指す日本電産の取り組みについて取り上げていました。
記事では、永守重信会長がご自身の想いを語られておりましたので3回にわたってご紹介します。
2回目は、利益を出す人が一番偉いという考え方についてです。
創業者の存在が大きい会社では、ユニクロの「ファーストリテイリング」も、ソフトバンクグループも後継の育成が難問だ。
うちははっきりしている。
儲けてくれる人、利益貢献が高い人が一番偉い。
2番目、会社に良い変化を与えてくれる人。
考課基準はこれしかない。
僕の後継者だって一緒です。
誰が一番利益を出すか。
経営者はね、「夢」を語るだけじゃダメなんです。
かたちに出来なければ。
経営を45年やって分かるが、良い経営者は半分は素質だね。
残る半分が育成。
激しい環境が人を育てる。
それにしても、日本には経営力を持った人材が少ない。
経営のプロの育成システムがないから。
アメリカは20代で経営する。
優秀な人ほど大企業には行かず、ベンチャー企業に行く。
日本は一流大学出てもヒラから始めて主任、課長。
50歳でようやく役員になっても経営なんか出来ないよ。
経営者は、カネ集めから、営業から全て自分でみないといけない。
部下に偉そうに指示はするけど自力で出来ないとか、英語は出来るけど自分で問題解決が出来ない、なんていう人材は多いけどね。
以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。
従来の日本的な感覚からすると、“利益を出す人が一番偉い”というドライな考え方にはちょっと抵抗を感じてしまいます。
しかし、企業の本質は“売り上げを上げて、利益を出し続ける”ことです。
ですから、永守会長のおっしゃるように、経営者は「夢」を語るだけではダメで、成果を出し続けることが求められるのです。
すると、最もその成果を出すうえで、貢献しているのは利益を出す社員ということになります。
しかし、日本的な感覚では、いくら売り上げを伸ばしている営業マンでも横柄で人をあごで使うような傲慢な人柄であれば、その営業マンを単純に評価出来ません。
一方、売り上げには直接貢献していなくても、チームワークを良くしたり、あるいは仕事の仕方を改善したりして生産性の向上に貢献している社員もおります。
そこで、永守会長は会社に良い変化を与えてくれる人を2番目に偉いとしているのです。
そして、考課基準はこの2つしかないと言い切っておられます。
ですから、先ほどの営業マンは“会社に良い変化を与える”という考課基準ではマイナスになってしまいます。
さて、以前私の働いていた職場でも、遅くまで残業していた社員は、それほど成果に結びつかなくても比較的良い評価をされるという風潮がありました。
一方、多少優れた成果を出しても、就業時間を過ぎるとさっさと帰宅してしまうような社員はあまり良い評価をされない傾向がありました。
今や、技術革新のスピードが速く、しかも中国などの新興国の追い上げによる国際的なビジネスの競争が厳しい環境において、日本の企業が競争に勝ち残っていくためには、AIやロボット、あるいはIoTなどのテクノロジーを駆使した生産性の向上、および一人一人の社員の能力の向上が必須だと思います。
そして、その精神的なよりどころは、自分の仕事を通して、どのような社会の実現に貢献したいのかという強い想いだと思います。
勿論、それなりの収入も必要ですが。