明けましておめでとうございます。
このブログをご覧いただいている皆さまにとって、少しでも何らかのかたちで参考になればという想いで今年も発信していく所存です。
どうぞよろしくお願いいたします。
日本電産株式会社(京都市南区)の創業者、永守重信会長(73歳)については、これまでNo.3744 ちょっと一休み その601 『ある日本の資産家に見る望ましいお金の使い方』などでお伝えしてきました。
そうした中、昨年の10月18日(水)付け読売新聞の朝刊記事で売り上げ10兆円を目指す日本電産の取り組みについて取り上げていました。
記事では、永守重信会長がご自身の想いを語られておりましたので3回にわたってご紹介します。
1回目は、根本から間違っている日本の働き方についてです。
私たちは今、大変革の時代を生きています。
技術革新で、全てのモノに通信機能が付いたモーターが載るようになる。
暮らしは一変するでしょう。
一人1台の「マイ・ドローン」で通勤する日も遠くない。
2050年にはロボットが人口の3倍になると見る専門家もいる。
クルマも、欧州や中国が電気自動車(EV)に重心を移し、動力の主役はエンジンからモーターに変わろうとしている。
世界では、モーターによる電力消費量が全体の半分近くを占めるほどになっている。
さて、母の教えにより「ハードワーク」を守ってきた永守会長は、2015年に突然「残業ゼロ」を打ち出しました。
会社が成長し、連結売上高1兆円を達成した直後でした。
「朝まで働け」とか言っていたのに、全く逆の「残業ゼロ」を言い出したので戸惑った社員もいたかもしれません。
しかし、永守会長は7年ほど前から1兆円企業になったらやろうと決めていました。
2000年代に入って、海外企業の買収を進めてきました。
そこで驚いたのは、欧米の社員は残業しません。
ドイツ企業なんかは1ヵ月も夏休みを取る。
それでもしっかり利益を出す。
生産性が違うんだね。
日本の働き方は根本的に間違っていると思い知った。
時間ではない、中身が濃くないとダメだと。
10兆円企業を目指しています。
だから、今の働き方だと1兆円レベルで行き詰まると思った。
1日は24時間しかないんだから。
そこで「残業ゼロ」。
最初は上司による定時退社の声かけから始めたら、あっという間に残業が3割減り、今は半分近くになった。
生産性を倍にするため2020年までに、システム投資などを1000億円行う。
残業の削減で浮いた経費は、半分をボーナスで社員に還元し、残りの半分を教育投資に向ける計画だ。
敷地内に研修センターを作って教育する。
英語力とか専門知識にために。
能力が上がれば実績も上がる。
給料は減らない。
5年かけてそうする。
アメリカは定時で帰るけど、夜間にMBA(経営学修士)を取りに行く。
技術系も経営を学んで経営者になっていく。
日本でもそんな費用の一部を会社が出してもいい。
とにかく早く帰って、自分の能力を上げて欲しい。
一時期、「灘高―東大―ハーバード大」に象徴される「きら星」のような人材を採った。
残念ながら幻想だったね。
創業以来6000人を採用してきたが、学歴と仕事の成果に相関関係はない。
だから教育だ。
教育で人はガラッと変わる。
ただね、時間で働く方が楽だと思う。
「残業ゼロ」は楽をさせるためじゃない。
あくまで飛躍への手段です。
これまでは能力が劣る人も長い時間働けば戦えた。
しかし、もう延長戦(残業)はない。
世の中の受けはいいけど、社員は生産性を倍にする方がきついよ。
以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。
記事を通して分かる永守会長の「残業ゼロ」の狙いは明確です。
今後増々需要の高まるEV用など様々なモーターの生産を増強するためには、これまでのような残業に依存する働き方では間に合わず、労働生産性を格段に向上させた働き方が求められる、そのためにはこれまでとは根本的に異なる働き方を目指すということです。
そこで社員に向けては、分かりやすく10兆円企業の達成、および「残業ゼロ」を目指すと説いているのだと思います。
「残業ゼロ」は決して社員を楽にさせるためではないのです。
ですから、労働の成果を残業という労働時間でカバーしてきた社員にとっては、「残業ゼロ」はむしろきつい働き方を求められます。
一方、労働の成果を残業ではなく労働の質によって成し遂げてきた社員にとっては能力を更に向上させるうえで一層恵まれた環境を提供されることになります。
ですから、こうした働き方に対する考え方の違いによって、社員の能力の差別化が強まるものと予想されます。
永守会長の考えるその具体的な手段は以下の通りです。
・1000億円のシステムなどの投資
・研修センターの建設
・就業時間外での社員の自発的な研修
・残業の削減により浮いた経費は、社員へのボーナス、および教育投資に充当
この基本的な考え方は、どの企業にとっても当てはまる、これからの企業が目指すべきものだと思われます。
さて、記事からは読み取れませんが、もし「残業ゼロ」でも帰宅してからもほとんどの時間を自己研さんに費やすのでは、その本質はこれまでの「会社人間」と変わりがありません。
趣味や家族との団らんなど、“ワークライフバランス”の取れた暮らしこそが長い目で見れば、社員にとっても会社にとっても望ましいものと思われます。