最近、高齢化の進行に伴う中小企業の後継者不足について話題に取り上げられることが多くなってきました。
そこで、中小企業の後継者不足の課題とその対応策について、プロジェクト管理の中の課題管理の観点から3回にわたってお伝えします。
9月16日(土)放送の「ミライダネ!」(テレビ東京)でスマートグラスの活用について取り上げていました。
そこで、3回目では番組を通して熟練技の後継者不足という課題とその対応策についてスマートグラスに焦点を当ててお伝えします。
東京都立川のオフィスビル、ここでも後継者不足の問題を抱えています。
直面しているのがビルの空調や電気設備などの点検作業です。
ビル内に籠った熱を外に逃がすダクトの点検は特に経験がものを言います。
モーターの熱や微妙な音の違いを聞き分けて不調を発見しなければならない時もあります。
この道20年の南谷 禎さん(48歳)と2年目の若手、若林 大暉さん(24歳)、この二人は全国で約6000ヵ所のビルや施設を管理するオリックス・ファシリティーズの社員です。
研修期間中は、ベテラン社員がマンツーマンで若手社員を指導します。
1人前になるまでに最低でも4年かかるといいます。
しかし今、若手の育成を急いでいるといいます。
ベテランの南谷さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「急激にベテランの方の多くが定年になっているというのは、経験が必要な職場なので、そういう経験の伝承が難しいところ。」
「自分で考えてどう動いてもらえるか。」
ベテランの定年退職が相次ぎ、指導者が不足、若手の若林さんには早く1人前になってもらいたいところですが、若林さんはまだ一人での作業には自信がなさそうです。
ところが、ある日の点検作業はメガネをかけた若林さん一人です。
若林さんがメガネを通して見ている映像ですが、実は離れた場所にいる南谷さんも同じ映像を見ているのです。
使っているのはスマートグラスです。
内蔵のカメラで南谷さんも映像を共有し、指示を送っているのです。
これなら南谷さんは移動しなくても全国各地の若手社員に指導が出来ます。
更に、このスマートメガネには便利な機能があります。
画面の中に文字や記号を書き込める赤ペン機能があり、指示を細かく正確に伝えるのに役立ちます。
指示通りに動いていた若林さんにここで変化が出てきました。
指示もないのに気になった部分を自主的に点検していました。
自信が芽生えたようです。
若林さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「分かる方に一番近くで自分と同じ目線で見て教えてもらえるということはとても大きなことだと思うんで南谷さんを目指したいと思います。」
なお、今回ご紹介したスマートグラスですが、私たちの暮らしが劇的に変わるかもしれない使い方があるようです。
スマートグラスをかけた番組レポーターの澤田 南さんがやってきたパン屋さんで、他の人が離れた場所から赤ペン機能を使って買って来て欲しいパンを丸で囲って指定していました。
例えば外出が難しい高齢者が誰かにお使いを頼む場合にこのような使い方が当たり前になるかもしれません。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
前回では、遠からず熟練技術者の後継者不足の対応策としてロボットが活躍する時代を迎えるとお伝えしましたが、それでもやはりマンツーマンでの技術の伝承が必要な部分は当分残ると思われます。
そうした時の対応策として、今回ご紹介したスマートグラスのような技術は一人の熟練技術者が複数の若手後継者に効率よく技術の継承をするうえでとても有効だと思います。
更に、こうした一つ一つの具体的な継承技術をビッグデータとして蓄積することで熟練技術の継承の効率化がより一層図られると期待出来ます。