2017年12月11日
アイデアよもやま話 No.3883 新型量子コンピューターの国産機登場!

以前、アイデアよもやま話 No.2997 人工知能のもたらす未来像 その3 2045年にはプライバシーという概念がなくなる!?などで量子コンピューターについてお伝えしました。

そうした中、9月22日(金)、および11月20日(月)放送のニュース番組(NHK総合テレビ)で最新の量子コンピューターについて取り上げていたのでご紹介します。

 

夢の超高速コンピューターと言われる量子コンピューターの開発を巡って、東京大学の研究チームが新型の量子コンピューターの基本原理の開発に成功したと発表しました。

量子テレポーテーションと呼ばれる、情報が瞬間移動する現象を利用したもので、スーパーコンピューターをはるかに凌ぐ究極の量子コンピューターを生み出せるとしています。

 

開発に成功したのは、東京大学の古澤 明教授の研究チームです。

古澤教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「やっぱり日本の独自の切り口でやりたいというのが一番ありまして、欧米の後追いではなくて日本で生まれた日本方式で良い量子コンピューターを作りたいと思います。」

 

では、日本方式の量子コンピューターとはどんなものでしょうか。

光の粒を人工的に2つに分け、“量子もつれ”という状態にすると、情報が光の速度で瞬間移動します。

“量子もつれ”が、アインシュタインが奇妙な遠隔作用と呼んだもので、古澤教授はこれを利用し、量子の瞬間移動、すなわち量子テレポーテーションに世界で初めて成功したのです。

この現象を利用し、例えば光の粒の一方に7、もう一方に+3という情報を与えます。

そして“量子もつれ”を起こせば瞬時に10という答えが導き出されるのです。

研究チームでは、この光の粒を100万個同時に作り出すことに成功したのです。

この光の粒をループ状の回路の中で回し、超高速計算を繰り返し行える基本原理を開発したとしています。

こうした一連の研究成果はノーベル賞級とも呼ばれています。

 

膨大なデータを瞬時に処理出来る量子コンピューターは、経済的にも大きな利益をもたらす可能性を秘め、欧米各国でも大手企業が研究開発にしのぎを削っています。

例えば大都市の渋滞を解消する研究では、量子コンピューターを使うと400台あまりの自動車が一斉に空港まで行く際の最適なルートをわずか数秒で示すことが出来ます。

一方、カナダのベンチャー企業が2011年に発売した量子コンピューターでは、同じ結果を出すのに30分かかりました。

 

この他、新薬の開発や肥料の生産、人工知能(AI)への応用など、幅広い分野で期待されています。

グーグル量子人工知能研究所のハルトムト・ネーヴェン博士は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「量子コンピューターを使うことで、AIは劇的に改善することが出来る。」

 

一方、アメリカが進める量子コンピューターの国家プロジェクトに参加している、東京工業大学の西森 秀稔教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「古澤先生のアプローチは非常にユニークで、10年スケールで取り組むべき方法。」

「生活の上の便利さというか、いろんな意味での経済的な波及効果が次第に出てくると。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

量子テレポーテーションと呼ばれる技術によりスーパーコンピューターをはるかに凌ぐ究極の量子コンピューターの基本原理の開発に成功したという事実は、まさにAIやロボット、あるいはIoTなどこれからの時代をけん引する技術のインフラとして欠かせないものです。

なぜならば、AIなどがこれから増々大量のデータを扱い、しかも速い処理速度が求められる中で、これまでとは異次元の処理能力のあるコンピューターの誕生が必須要件だからです。

なお、古澤教授の率いる研究チームは光の粒を100万個同時に作り出すことに成功したといいますが、いずれより多くの光の粒を同時に作り出すことが出来ると期待出来ます。

ですから、近い将来とてつもなく速い処理速度の量子コンピューターの誕生が期待出来そうです。

そして、こうした量子コンピューターとAIやロボット、あるいはIoTの技術が相まって私たちにより豊かな暮らしを提供して欲しいと思います。

一方、くれぐれもこうした技術がより殺傷能力の高い兵器の開発に利用されて欲しくないと思います。

また、古澤教授のおっしゃるように、資源が少ない中で技術立国を目指す日本は欧米の後追いではなくて日本独自の画期的な技術開発で常に世界をリードするような意気込みと技術力を維持し続けるようでありたいと思います。


 
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