9月6日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でテレワークのメリットと課題について取り上げていたのでご紹介します。
働き方改革で注目されるテレワークはオフィスに行かず、自宅などで仕事をするというものですが、7月には国などが主導してデレワーク・デイが開催され、600社以上が参加しました。
しかし、まだ課題も多いというのが現状です。
そうした中、驚きのテレワークを実践している企業があります。
仕事の紹介サイトを運営する株式会社クラウドワークス(Crowd Works)(東京都渋谷区)は、先ほどお伝えしたテレワーク・デイに参加しました。
当日は100以上がテレワークで働き、オフィスは人がまばらになりました。
テレワークを利用した女性社員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「通勤がないということが一番大きなメリットかなと思っていまして、子どもと朝食を一緒に食べられるのが結構良かったですね。」
社内アンケートでは、約6割の社員がテレワークにより仕事の効率や生産性が上がったと回答しました。
クラウドワークスは、昨年からテレワーク制度を導入、勤務の場所や時間が自由になりますが、メリットだけではないといいます。
テレワークを利用した男性社員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「テレワークをやってる方が、仕事を続けてしまいがちという社員の声は聞きます。」
しかも、テレワークの回数制限や事前申請の手続きがあるせいか、これまで多くの社員がテレワークを利用していませんでした。
クラウドワークスの佐々木 翔平取締役は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「原則として社員を信じて任せてやっているルールではあるものの、そこの最低限の線引きはまだ必要だと現時点では考えています。」
しかし、テレワークを前提として一歩踏み込んだ働き方を実践している企業があります。
シックス・アパート株式会社の古賀 早社長は、誰でも利用可能な共同のワーキングスペース、bit&innovation(東京都新宿区 TIS株式会社により運営)で作業をしています。
古賀社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「全員リモートワーク(テレワーク)を始めたんですけども、私自身も自宅に限らず、コワーキングスペースやシェアオフィスを使わせていただいております。」
「会社に来て、仕事をしている姿で評価されるわけではなくて、実際にやった実績で社員の仕事の評価は決まる。」
シックス・アパートのオフィス(東京都千代田区)の執務スペースは社員30名に対して10席ほどを用意しています。
ホームページの管理サービスなどを手掛けるシックス・アパート、番組が取材した日にこのオフィスにいた社員は2人だけでした。
テレワークの回数制限や事前申請はなく、社員はいつどこで働くのも自由です。
決められているのは、最低でも月1回オフィスに出勤することです。
昨年、親会社から独立したのを機に、全社員テレワークを開始しました。
オフィスは3分の1の広さの場所に移転しました。
その結果、家賃や電気代などが大幅に減り、年間4000万円以上のコスト削減が出来たといいます。
社員が毎日出社することはないため、通勤にかかる定期代の支給も取りやめ、その代わりに毎月一律1万5000円の“テレワーク手当”を支給しています。
なお、この使い方は完全に自由といいます。
こうしたテレワークについて、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクール准教授の入山 章栄さんは、次のようにおっしゃっています。
「私はこの流れは間違いなく進むと思っています。」
「ただ、例えばアメリカなんかですと意外とこの逆の流れというのも出ていまして、例えば何年か前にヤフーが在宅勤務を全部禁止にしてしまったんですね。」
「それから、今年に入ってIBMもテレワークを禁止にしまして。」
「それから、グーグルもそれほど在宅勤務には積極的じゃないと言われているんですね。」
「(一度試した企業が止める方向で動いている理由について、テレワークと通常のオフィスワークには)双方に別なメリットがありまして、テレワークは働き易さ、効率性というものがメリットなわけです。」
「ただ、一方で同じ会社の人が同じ職場に集まることでしか得られないメリットも多くあると言われていまして、例えば心理的な効果ですよね。」
「同じ場所にいるからこそ、信頼関係が作れていろいろな情報を交換出来ると。」
「それから、同じ空間、場所にいるからこそ伝わる知識や情報、例えば暗黙知のようなものがあると言われているわけです。」
「更に、私はこれが非常に重要だと思っているんですが、職場での偶然の出会いですね。」
「どうしてもテレワークですと、特定の仕事に紐づいた人しか会わないわけですよ。」
「ですけど、職場にいろんな人が集まれば、そこで普段は関係ない人たちと「あなた、今そんな仕事やってるの」とか、そういう情報交換が行われることが実は企業の強さになっていると。」
「実は、このあたりは経営学でもそういった主張がされていて。」
「ですから、どちらがより重要かっていうバランスを探っていくということがこれから企業に求められるのだと思いますね。」
「(場合によってはこの組み合わせが必要なのではという問いに対して、)はい。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
入山さんのおっしゃるように、テレワークにはメリットと課題があります。
ですから、それぞれの業種や従業員個人個人の抱える事情に応じた“働き易さ”の追求がその企業の生産性向上につながると思います。
個人の生き方としても、仕事は全て会社で全力投球し、就業時間後は仕事のことは忘れて趣味を楽しむというような考え方の人もいます。
一方、育児で忙しい夫婦共働きの場合は、子育てに必要な時間の確保を前提とした働き方が出来ることが継続的に働くことの出来る大前提になります。
ですから、安倍政権の進める“働き方改革”においては、国、あるいは地方自治体などとして、以下の観点を忘れずに進めていただきたいと思います。
・従業員の望む多様な働き方の支援
・テクノロジーの急速な進歩に応える社会人の新たなスキルの養成支援
・正社員、非正社員に区別のない収入格差の是正
一方、各企業に求められるのは、それぞれの業種に応じた働き方の多様性です。
最初からテレワークを導入しないまでも、フレックスタイムの導入をするだけでもかなり従業員の負担が軽減されると思います。
いずれにしても、テレワークまで含めた範囲でそれぞれの企業が試行錯誤を重ねる中で、よりよい職場環境が実現し、生産性向上、会社の業績、ひいてはお客様へのサービス向上につながると思います。