2017年11月04日
プロジェクト管理と日常生活 No.513 『日産自動車の不正な完成検査から見えてくること』

ご存知のように各種報道記事によると、最近の日産自動車(日産)の自動運転技術や新型の電気自動車(EV)「リーフ」の登場など日産の活躍が目立つ中で、自動車の完成検査を補助検査員に任せていたという信じられないような不正が発覚してしまいました。

この検査は、社内で経験と研修を通った検査員が行わなければならず、日産では完成検査員と呼び、認定されたことを示すバッジを身に付けています。

 

ところが、9月18日、生産拠点の一つである日産車体湘南工場に立ち入った国土交通省(国交省)職員の指摘で、先ほどの不正が発覚したのです。

その後、国内6つの工場全てで行われ、5つの工場で資格を持たない補助検査員が完成検査を行い、検査書類に有資格者の印鑑を押していたことが判明しました。

国交省は、有資格者が検査を行ったかのように検査書類を偽装したとみています。

その結果、OEMの10車種も含め38車種で約116万台のリコール(回収・無償修理)を国交省に届けるまでに至りました。


日産は弁護士など第三者を含むチームをつくり、経緯や原因の解明を急いでいるといいます。

なお、驚くことに日産は問題の発覚後も不適切な検査を行っており、3万8000台余りについて10月25日に国交省にリコールを届け出ました。(10月25日放送のNHKニュースより)

 

さて、なぜこのような事態を招いてしまったのか、プロジェクト管理の観点から考えてみることにいたします。

自動車の生産工程全体をシステムとして捉えると、それぞれのプロセス(工程)の標準化が必要になります。

そして、標準化するためには、まずシステムに対するユーザー要求をまとめること、次にばらばらなユーザー要求をシステム要件としてまとめます。

そして、ユーザー要件をもとに生産プロセスをデザインします。

その上で、実際の生産はこのデザインされたプロセスに基づいて作業されます。

 

こうした一連のプロセスの観点からすると、今回の日産の不正な完成検査の起きた原因がどこにあったかを探ることが出来ます。

以下に原因の発生する可能性のあるプロセスをまとめてみました。

  1. ユーザー要求として完成検査の要件を把握していなかった

  2. ユーザー要求からユーザー要件としてまとめる時に漏らしてしまった

  3. ユーザー要件をもとに生産プロセスのデザイン段階で漏らしてしまった

  4. 生産プロセス標準マニュアルとして文書化する際に、漏らしてしまった

  5. 標準マニュアルに記述はあるが、実際の運用では形骸化されている

 

ここで原因として考えられる最も可能性のあるプロセスはイ世隼廚い泙后

いずれにしても、完成検査における要件、すなわち認定された完成検査員のみが検査を実施することが出来るという要件が生産プロセス全体の中で、組織としてほとんど重きが置かれていなかったことは明らかです。

 

次に、こうした不正を防ぐ最後の砦が第三者による社内監査です。

プロジェクト管理の一つにプロセス、あるいは成果物の品質管理があります。

そして、品質管理には大きく仲間内のピアレビューと第三者による監査があります。

第三者による監査とは、監査の対象と直接係わりがなく、またレビューの専門的知識を有するレビューアーによる監査であり、特に重要なプロセスや成果物を対象に実施されます。

 

そこで、自動車の完成検査はというと、自動車の生産プロセスの最終検査であり、まさに重要プロセスそのものです。

ですから、そもそも第三者の視点からどのようなプロセスで検査が行われるのか、そして何をもって検査完了と見なすのか、といったプロセスと検査完了を示す成果物とが標準マニュアルにきちんと記述されていること、そして検査が実際にこの記述通りに実施されていることをある周期で第三者が検査することが品質管理の常道なのです。

今回の不正の場合、完成検査は誰が実施すべきか、そして実際に誰が実施したのかという観点のチェックが実施されていれば、特別な専門知識がなくても容易に不正を指摘出来たのです。

 

日産の工場がこうした常道からかけ離れたプロセスを何年かにわたって実施してきたことにはとても驚きです。

実際には、世界的にも高品質の自動車が生産されているので、ほとんどのプロセスはきちんとした品質管理がなされていると思います。

しかし、今回ご紹介した不正行為は、例え例外的に発生したとしても百億円単位のリコール費用が発生するばかりか、企業イメージも大きく傷ついてしまいます。

ですから、こうした不正行為は結果的には高くついてしまうのです。

 

ということで、大変おこがましいとは思いなすが、日産にはきちんと品質管理の常道を歩むべく、例外なく全てのプロセスにわたって当たり前のことを当たり前にきちんと実施していただきたいと思います。


 
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