最近の北朝鮮による強硬に進める核・ミサイル実験の報道に接して、なぜ北朝鮮はこうした動きをするのか、そして世界や日本はこうした動きについてどのように対応すべきなのかなど、いろいろと疑問が湧いてきました。
そこで、リスク管理の観点から6回にわたってこうしたことについてお伝えしていきます。
6回目は、核兵器の新たな脅威“電磁パルス攻撃”についてです。
9月15日(金)放送の「深層NEWS」(BS日テレ)で核兵器の新たな脅威“電磁パルス攻撃”について取り上げていたのでご紹介します。
9月3日、北朝鮮の労働新聞は、新たに開発された水爆については強力な“電磁パルス攻撃”まで加えることが出来る多機能化された核弾頭だと伝えています。
核弾頭を搭載したミサイルを発射し、地上から30km〜400kmの上空で核爆発を起こします。
この電磁パルス攻撃の影響について、東京工業大学の澤田 哲生助教は、あらゆる電子機器が影響を受ける可能性があるといいます。
また、番組コメンテーターの元海上自衛隊海将で自衛艦隊司令官も務めた香田 洋二さん は次のようにおっしゃっています。
「一番の問題は、それぞれの電気・電子製品を構成する基盤が一時的に非常に電圧が高くなる。」
「一瞬ですけども許容電圧よりもはるかに高くなる。」
「それ(基盤)が破壊されることによって機能不全に陥るということです。」
「(人体への影響について、)熱の衝撃は宇宙ですから空気がありませんので全く伝わってきません。」
「ということで、言葉は正確じゃないんですけど非殺傷兵器と言われてるんですね。」
「ただし、二次被害としては、基本的に電子と電気とを使っているものは全て使用不能になるということで、基盤も破壊されますので、全部(携帯電話や自動車など、電子部品を組み込んでいるありとあらゆるものが)直すまでは直らない。」
なお、1962年の読売新聞で核爆発による電磁パルスの影響についての記事を掲載しています。
1962年、アメリカが南太平洋の上空320kmで核実験を行った際、周囲で40分間電波障害が起こったといいます。
こうした状況について、香田さんは、次のようにおっしゃっています。
「1500kmほど離れたハワイで停電が起きて、「これは何だ」ということになり、理由が分からないまま調べていくと宇宙の核爆発じゃないかということが端緒なんです。」
「(現在だとどのような影響があるかという問いに対して、)基本的には文明生活が全く駄目で、人によっては19世紀のペリー提督が日本に来た頃のアメリカに戻るということなんです。」
この記事後、フィジー島では無線連絡が一斉に途絶したなど、様々な続報がありました。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
今や、ほとんどの破壊兵器は電動化されています。
また、軍隊内のコミュニケーションも電気がなければほとんど不可能です。
ですから、核兵器による“電磁パルス攻撃”はアメリカのような軍事大国と言えども、その戦力をほとんど無力化させてしまうほどの威力を持っていると思われます。
しかし、現状では安易に“電磁パルス攻撃”を行えば、自国に対しても影響を及ぼしてしまいます。
ですから、“電磁パルス攻撃”の被害を特定の地域に限定させるための研究開発が進められるものと思われます。
具体的には、核兵器の威力、および爆発させる位置、高度と被害範囲の関係を明らかにすることです。
もし、こうした研究が進み、実用化されれば、対戦国の国民の生命は保護しつつ、長期間にわたって文明生活を不可能にしてしまう状態に陥らせることが可能になります。
1962年に最初の“電磁パルス攻撃”実験を行ったアメリカは既にこの実験をかなりの程度進めているのではないかと思われます。
ですから、ひょっとしたらアメリカは北朝鮮への攻撃に際して、最新技術による“電磁パルス攻撃”を実施する可能性は捨て切れません。
しかし、“電磁パルス攻撃”も核兵器の使用により成り立っているのです。
そして、従来のようなかたちで核兵器が使用されれば、甚大な被害をもたらすのです。
ということで、やはりどんなに時間がかかろうとも“核兵器廃絶”に向けた取り組みを止めることがあってはならないのです。