2017年10月14日
プロジェクト管理と日常生活 No.510 『北朝鮮の核・ミサイル実験に見る核兵器廃絶の必要性 その4 日本のリスク対応策!』

最近の北朝鮮による強硬に進める核・ミサイル実験の報道に接して、なぜ北朝鮮はこうした動きをするのか、そして世界や日本はこうした動きについてどのように対応すべきなのかなど、いろいろと疑問が湧いてきました。

そこで、リスク管理の観点から6回にわたってこうしたことについてお伝えしていきます。

前回はアメリカのリスク対応策についてお伝えしましたが、4回目は日本のリスク対応策についてです。

 

以下に、いくつかの番組を通して、北朝鮮による核・ミサイル開発問題が引き起こす、アメリカとの戦争勃発など様々な事態の発生を防ぐための日本によるリスク対応策の関連情報についてご紹介します。

 

9月16日(土)放送の「上田 伸也のサタデージャーナル」(TBSテレビ)の内容の一部を以下にご紹介します。

 

9月15日(金)の北朝鮮による弾道ミサイルの発射に際し、北朝鮮外務省アメリカ州局のチェ・ガンイル副局長は、取材に対して次のようにおっしゃっています。

「それは我々の核抑止力強化の正常な一環だ。」

「日本は身の程を知るべきだ。」

「日本は制裁の先頭に立つべきではない。」

「いくら制裁しても通じないのだから。」

 

なお、発射の前日にも北朝鮮のテレビでは次のように伝えています。

「取るに足りない日本列島4島を核爆弾で海の中に押し込むべきだ。」

 

繰り返し行われる兆発で、北朝鮮のミサイルは日本にとっても大きな脅威となってきました。

 

9月12日(日本時間)の安保理では、アメリカの提示した採択案に大幅な修正がなされた妥協案になったものの15ヵ国による全会一致の採択にこぎ着けました。

これに対し、北朝鮮は安保理決議を「極悪非道な挑発行為の産物」、「アメリカという侵略者を撲滅する時だ 忍耐力には限界がある」と非難しました。

更にその矛先は日本にも向いています。

安保理の制裁決議の3日前、9月14日(金)放送の朝鮮中央テレビは次のように伝えています。

「日本上空を飛び越える我々の大陸間弾道ロケットを見ながら、未だに意地悪く振る舞う日本の奴らにはっきりと気概を示すべきだ。」

「アメリカの「制裁」の笛に踊りながら憎らしく振る舞う奸悪な日本の奴らをそのまま放っておけない。」

 

そして、その言葉通り、3日後にミサイルは発射されたのです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

日米安全保障条約を取り交わし、日本国内に複数の米軍基地のある日本は、北朝鮮から見れば、アメリカの同盟国と見なされ、いざアメリカと交戦状態になれば、有無を言わさず攻撃対象となります。

 

また、1回目でもお伝えしたように、そもそも1910年、当時の大韓帝国との間で韓国併合条約を締結し、朝鮮半島を日本の植民地化した後に、日本がアジア諸国との共存共栄を図っていれば、太平洋戦争に突入することなく、従って敗戦後の米ソによる朝鮮半島の分断にもつながらなかったわけです。

ですから、歴史的にみれば、現在の北朝鮮による核・ミサイル開発に至る原因の一端は日本にもあると言えると思うのです。

 

こうした意味も含めて、日本は自国の平和維持およびコンティンジェンシープラン、並びに朝鮮半島の平和的な統一の支援に取り組む必要があると思います。

なお、自国の平和維持には、何と言ってもアメリカと北朝鮮とが戦闘状態にならないようにすることです。

そのためには、アメリカと北朝鮮との妥協点を見出し、両国の仲裁などあらゆる手段を使って平和裏に北朝鮮が核兵器の使用をしないように仕向けることです。

また、アメリカを始め先進主要国と協力し、北朝鮮からIS(イスラム国)を始めとする過激派組織に核兵器そのものや開発技術が流出しないような仕組みを構築することです。

ちなみに、核兵器が拡散していくのを防ぐために、NPT(核兵器不拡散条約)、すなわちアメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国以外への核兵器の拡散を防止する条約があります。

 

しかし、そもそも限られた国のみが核兵器を持つことを許されていること自体が既得権の行使であり、客観的にみておかしいのです。

また、核兵器は今やとてつもない殺傷能力を持つに至っており、人類の滅亡にすらつながりかねない兵器なのです。

ですから、日本は唯一の被爆国として、核兵器廃絶を世界的な最終ゴールとして、主体的にリーダーシップを発揮することが途上国を中心に多くの国々から期待されているのです。

日本政府はこの期待に応えることが日本の平和のみならず、世界平和の実現に貢献出来ることを忘れてはならないのです。

 

なお、万一アメリカと北朝鮮が交戦状態になった場合のコンティンジェンシープランとしては、核シェルターや地下防空壕などが考えられますが、すぐに米軍基地周辺を中心に全国的な設置展開をすることは適いません。

 

それよりも重要なことは原子力発電所(原発)へのミサイル攻撃です。

万一、原発がミサイル攻撃を受ければ、どれだけ広範囲に甚大な被害が及ぶか計り知れません。

複数個所の原発がミサイル攻撃を受ければ、膨大な数の被害者が出るばかりでなく、復興に10年単位の年月を要することになると思われます。

言わば日本沈没です。

ですから、万一の戦争勃発を想定した場合の被害を最小限に食い止めるリスク対応策として、“脱原発”は日本のように原発が住宅の密集地域に近い場所に建設された国の場合、特に重要になると思います。

 

一方、コンティンジェンシープランの一環として、日本でもニュークリア・シェアリングについて注目が集まりつつあります。

ニュークリア・シェアリングとは、非核保有国が戦争時に核保有国と核を共有する概念です。

9月10日(日)放送の「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)の中で、政策研究大学院大学の岩間 陽子教授は、次のようにおっしゃっています。

「非核保有国がアメリカとの間で始めた制度です。」

「同盟国側は戦闘機や核を搭載出来る兵器の運用訓練をしているわけですね。」

「平時には核は渡さない。」

「だけど、戦時になったら核兵器をアメリカが渡して、それをドイツ軍なり、オランダ軍なりが使って戦争する。」

「(例えばドイツの場合、)平時にはドイツは核をもらっていないということで、ドイツはあくまでも非核保有国の立場を崩していない。」

 

アメリカと核を共有することで非核保有国が核を使用出来る仕組みなのです。

 

ニュークリア・シェアリングを導入しているのは、欧米29ヵ国が加盟するNATO(北大西洋条約機構)のうち、ドイツ、イタリアなど5ヵ国で、アメリカの核兵器をシェアしているといいます。

なお、この仕組みが導入されたのは、1950年代後半、ソ連による核攻撃の脅威に核兵器を持っていないドイツなどが不安を解消する目的で導入したといいます。

 

ということで、北朝鮮による核・ミサイル実験の進む中、ニュークリア・シェアリングは世界的な核兵器廃絶という最終ゴールに至る過程の中間的なコンティンジェンシープランと位置付けられますが、交戦国に核兵器を使わせない抑止力、すなわちリスク対応策としても有効なのです。

 

どんなに政治家が理屈を並べても、実際に日本の国土が核兵器による攻撃を受ければ、日本の存続そのものがとても危うくなります。

ですから、政治家の皆さんには、ニュークリア・シェアリングの導入も含めて、北朝鮮による核・ミサイル攻撃の脅威に対する超現実的な対応策を検討していただきたいと思います。


 
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