7月19日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で都内で進む電柱のない街づくりについて取り上げていたのでご紹介します。
東京都の小池知事が進める電柱のない街への取り組み、すなわち“無電柱化”が本格化しています。
“無電柱化”とは、電線などを地中に埋めて、道路から電柱を無くそうという取り組みです。
都内には約75万本の電柱があるのですが、電柱を無くす狙いは以下の3つです。
震災時の電柱倒壊の予防
電柱が倒れて道路をふさいでしまい、救急車や消防車などの救急車両が通れなくなることのないようにする
東京オリンピック/パラリンピック
東京を訪れる外人観光客に電柱や電線のない綺麗な東京を観て欲しい
狭い歩道の通行路を確保
電柱を無くせば、歩行者や自転車が電柱を避けようとして車道に出てくる危険性を防げる
しかし、都内にある全ての電柱を無くすことは現実的ではありません。
そこで、東京都はまず人が集中している千代田区などの中心部、および東京オリンピック/パラリンピックの会場のあるエリアで優先的に取り組むことにしています。
東京都は、今年6月に都道府県レベルでは初めて電柱の新設を原則禁止する条例を制定しました。
東京都は30年にわたり“無電柱化”を進めてきましたが、東京23区ではたった7%しか整備を終えていません。
ネックとなっているのはコスト、1km当たり平均約5億3000万円もかかるというのです。
こうした中、推進のカギとなるのが各企業による技術開発です。
古川電工が開発したのは、工事費用を安く抑えられるというケーブルです。
電線を地中化するには、電線を通すための配管などが必要です。
しかし、このケーブルを使うと、そういった工事が必要なくなるのです。
古川電工グループ サンザックの石橋 智裕さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「金属で覆って強度を兼ね備えているので、直接埋設が出来る。」
「直接埋設出来るということで、トータルの作業が短く出来るんですね。」
「なので、最終的にはコストが安くなる。」
「試算ですけど3分の1ぐらいにはなるんじゃないかなと。」
一方、イトーヨーギョーの井上 了介さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「道路の側溝と電線を入れる部分を一つにまとめてしまった。」
「既存の側溝を入れ替えてその下に電線を入れてしまう。」
この設備は上の水路を廃水などが流れ、その下のスペースを電線の地中化のために活用するというものです。
実は、道路の下には水道管やガス管、電力管、汚水管、通信管など様々なものが埋められています。
そのため、狭い道路には空いたスペースが少なく、既に埋められているものを動かすことも必要となってしまうのです。
東京都は、こうした企業の最新技術を活用しながら、スピード感を持って“無電柱化”に取り組みたい考えです。
ちなみに、世界の“無電柱化”率は以下の通りです。
ロンドン 100% (国土交通省調べ)
パリ 100
香港 100
台北 95
シンガポール 93
ソウル 46
ジャカルタ 35
東京 7
大阪 5
京都 2
こうした結果について、番組コメンテーターで日本総研理事長の高橋 進さんは次のようにおっしゃっています。
「ネックはやっぱりコストなんですよ。」
「1km当たり5億3000万円ていいましたけど、これは地上の電柱の20倍コストがかかるんですね。」
「ですから、やっぱりそこがネックなんですけども、新しい技術でどんどんコストを下げていくということをやんなくちゃいけない。」
「ただそれでも東京都だけで“無電柱化”させようとすると7000億円以上かかる。」
「で、7割くらいが東京都の負担になると思うので、いくら東京都が財政的に豊かとは言え、コストを削減するための工夫、技術だけじゃなくて、例えば国交省(国土交通省)が提案してますけどもPPP/PFI、言い換えると民間の事業者に共同溝を作ってもらって、それを道路管理者、国や自治体が使用料を払っていくというようなかたちで、民間を利用するようなかたち、あるいはこれから(電柱を)地中化しちゃうと維持管理がすごいコストがかかるんですよね。」
「従って、例えばセンサーをつけるとか新しい技術を駆使して維持管理コスト、ランニングコストを下げていくということをやってもいいと思うんですけどね。」
「とにかく小池知事は自民党の時代から“無電柱化”をずっとおっしゃっていたので、やはりコストの面でも何か新機軸を打ち出してもらいたいと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
この番組を観ていて、かつてエネルギー関連の質問をするために東京電力本社を訪れた時に応対していただいた方のお話を思い出しました。
東日本大震災前でしたが、「東京電力は電柱の地中化も進めていきます」とおっしゃっていました。
なので、その時は素晴らしい取り組みだと感心しておりました。
ところが、福島第一原発が起きたことにより、莫大な賠償費用などが発生してしまったのでそれどころではなくなってしまったのです。
ですから、とても残念に思います。
さて、“無電柱化”を進めるに当たり、先ほどご紹介したようにいろいろな企業がコスト削減のための技術開発に取り組んでおります。
ですから、こうした技術の中からより優れたものを選び出し、あるいは組み合わせることにより、現行の見積額よりもかなり維持費まで含めたトータルコストが削減出来ると期待出来ます。
“観光大国日本”を目指すうえでも是非、全国的な“無電柱化”を推し進めていただきたいと思います。
それにしても、世界の主要都市での“無電柱化”率についてですが、ロンドン、パリ、香港が100%という数字には驚きました。
やはり、その国の政府や地方自治体、あるいは国民が“こういう都市をつくりたい”という強い想いを持つことによって、たとえコストがかかろうともいろいろなアイデアにより実現出来るのだとあらためて思いました。