2017年10月07日
プロジェクト管理と日常生活 No.509 『北朝鮮の核・ミサイル実験に見る核兵器廃絶の必要性 その3 アメリカのリスク対応策!』

最近の北朝鮮による強硬に進める核・ミサイル実験の報道に接して、なぜ北朝鮮はこうした動きをするのか、そして世界や日本はこうした動きについてどのように対応すべきなのかなど、いろいろと疑問が湧いてきました。

そこで、リスク管理の観点から6回にわたってこうしたことについてお伝えしていきます。

3回目は、アメリカのリスク対応策についてです。

 

以下に、いくつかの番組を通して、北朝鮮による核・ミサイル開発問題が引き起こす、アメリカとの戦争勃発など様々な事態の発生を防ぐためのアメリカによるリスク対応策の関連情報についてご紹介します。

 

9月3日(日)、および9月10日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)の「風をよむ」のコーナーで北朝鮮による核・ミサイル実験の動きについて取り上げていたので、アメリカのリスク対応策の観点からご紹介します。

 

前回、北朝鮮による核・ミサイル実験の行方についてお伝えしました。

では、それに対してアメリカはどう対応しようとしているのでしょうか。

核兵器保有を背景にアメリカの追い出しを目論んでいるという北朝鮮、それに対してアメリカのトランプ大統領はツイッターで「対話は解決策ではない」と呟いています。

ツイッターで強気な姿勢を誇示し続けるトランプ大統領、その一方でマティス米国防長官は「外交的な解決策が尽きたわけでは決してない」と公言し、トランプ大統領の発言を修正しています。

アメリカは硬軟両方の立場を使い分け、平和的解決の道を模索しているように見えます。

 

しかし、対話による平和的解決の道は容易に見えてきません。

その理由を防衛省の研究所などで長年朝鮮半島問題を研究してきた拓殖大学海外事情研究所の武貞 秀士特任教授は、米朝対話の進め方にあるといいます。

「国連安保理(国連安全保障理事会)で(北朝鮮への)制裁をいくつも出してきたけれども、その結果事態が改善したかというと、そうではないですよね。」

「核兵器放棄ということを「入り口」にして交渉を始めようとする限り、にっちもさっちもいかないわけだから、「核兵器放棄出口論」を取れば良いと思います。」

「「核兵器を拡散しない」、「技術を拡散しない」とか話し合いを繰り返しながら最後には核兵器放棄というところに行き着く努力をする。」

「「対話の道」しかないと私は思います。」

 

決して北朝鮮の核兵器保有を認めるのではなく、交渉の出口で核兵器を放棄させるというのです。

東アジアの一画にある国が国際社会を振り回す時代、私たちは北朝鮮問題にどう向き合えばいいのでしょう。

 

また、番組コメンテーターの一人、中央大学の目加田 説子教授は次のようにおっしゃっています。

「今回の北朝鮮の核を巡る対立ってキューバ危機に例えられているんですよね。」

「55年前に、一番核戦争に近づいた瞬間ていうふうに言われているわけですけども、その当時国防長官だったロバート・マクナマラさんという方がおられて、20年くらい前に来日された時にお話を伺う機会があったんですけども、キューバ危機が回避出来たのは幸運によるものだったんだと。」

「つまり計算尽された核抑止がうまくいったのではなくて、単にラッキーだっていうことをおっしゃったんですよね。」

「その時のことを思い出すと、今回も最大の教訓というのは、我々が学ばなければいけないというのは計算通りにはいかないってことですよね。」

「つまり、核抑止がうまく機能して戦争で核による衝突が回避出来るという保証はどこにもないということだと思うんですよね。」

「そこをやはり忘れてはいけないし、絶対に起きてはならない状態をいかにするかということを最優先に考えなければいけないと思います。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

一方、9月16日(土)放送の「上田 伸也のサタデージャーナル」(TBSテレビ)によれば、9月15日(金)の北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受け、アメリカ政府はティラーソン国務長官による次のような声明を出しました。

「相次ぐ挑発行動は、北朝鮮の外交的経済的孤立を深めるだけだ。」

 

また、番組では8月に行われた米韓軍事演習でのアメリカ太平洋軍ハリス司令官の次の発言を取り上げています。

「最も重要な出発点は外交から始めるということだ。」

「強力な外交を強力な軍事力で支えることが鍵。」

「軍事力が外交を支えるべきであって、その逆であってはならない。」

 

ちなみに、プロジェクト管理と日常生活 No.293 『プロジェクト管理の観点からみた戦争と平和の関係!』でも外交と戦争の関係についてお伝えしたことがあります。

 

また、9月12日(日本時間)の安保理では、アメリカの提示した採択案に大幅な修正がなされた妥協案になったものの15ヵ国による全会一致の採択にこぎ着けました。

採択後、アメリカのヘイリー国連大使は、次のように北朝鮮にくぎを刺しました。

「北朝鮮が挑発を続けるというのなら、我々は今後も圧力をかけていく。」

「決めるのは北朝鮮だ。」

 

これに対し、北朝鮮は安保理決議を「極悪非道な挑発行為の産物」、「アメリカという侵略者を撲滅する時だ 忍耐力には限界がある」と非難しました。

そして、3日後の9月15日にミサイルは発射されたのです。

 

こうした北朝鮮の動きに対して、アメリカは中国とロシアに対し、北朝鮮への国連制裁を確実に実行するようあらためて求めた他、国連安保理は日米韓3ヵ国の要請を受けて9月16日に緊急会合を招集しました。

更なる“圧力”とそれに対する北朝鮮の“反発”、どこかに着地点はあるのでしょうか。

 

また、9月16日(土)放送の「プライムニュースSUPER」(BSフジ)では、北朝鮮による核・ミサイル問題に関して元国連大使でオバマ政権時の大統領補佐官(国家安全保障担当)のスーザン・ライスさんが8月10日付けニューヨークタイムズに寄稿した記事の一部を以下のように紹介していました。

 

アメリカは実利的な戦略として、北朝鮮の核武装を受け入れ、伝統的な抑止力でそれを抑え、アメリカ自身の防衛力を強めるべきだ。

 

また、9月27日(水)放送のニュース(NHK総合テレビ)では、緊張の度合いを増している北朝鮮情勢について取り上げていたのでご紹介します。

 

トランプ大統領は、9月26日の記者会見で「軍事的な選択肢の準備は完全に整っており、もし我々がその選択肢をとれば北朝鮮にとって壊滅的なものになる」とあらためて警告し、そのうえで非核化に向けて北朝鮮を孤立させるため圧力を強めるよう全ての国に呼びかけました。

これに対して、北朝鮮のリ・ヨンホ外相は、トランプ大統領の批判を“明確な宣戦布告だ”と非難しました

 

一方、アメリカ議会上院では、アメリカ軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は「北朝鮮が近い将来アメリカ本土に到達する核ミサイルの運用能力を獲得する」という認識を明らかにしました。

そのうえで、北朝鮮にはICBM(大陸間弾道ミサイル)を使う意志もあると想定し対処すべきだとして、アメリカのミサイル防衛能力の強化を急ぐ考えを示しました。

また、米朝間で言葉の応酬が続いていることに関連して「政治の世界は緊張しているが、北朝鮮軍の展開状況の変化は把握していない」と発言し、現時点で北朝鮮の軍事動向に特段の変化は見られないという見解を明らかにしました。

 

また、アメリカ政府は北朝鮮の核・ミサイル開発につながる資金を絶つため以下の制裁対象の追加を発表しました。

・北朝鮮の8つの銀行

・中国やロシアなどを拠点に北朝鮮の金融業務に携わってきた26人

 

今回の制裁は北朝鮮の銀行と個人に限定しています。

トランプ大統領は中国の銀行などにも制裁を課す構えを見せる一方で、中国の中央銀行が北朝鮮との取り引きを止めるよう指示したとして評価する考えを示しています。

 

以上、いくつかの番組を通して、アメリカのリスク対応策を断片的にご紹介してきました。

 

こうした断片的な情報の中で、私が特に強く感じたのは、中央大学の目加田 説子教授のおっしゃった、“キューバ危機が回避出来たのは幸運によるものだった”という言葉です。

核兵器を保持している国が戦争を始めて、戦局が非常に厳しい状況に追い込まれれば、核兵器の使用を検討するリスクが高まります。

ですから、長い目で見れば、世界各国はやはりどんなに困難であっても核兵器廃絶の道を歩むべきだと思います。

 

さて、1回目でお伝えしたように、北朝鮮はあくまでも悲願である南北統一を実現させるためのアメリカとの交渉の手段として核兵器開発を進めているので、どんなに世界各国が核・ミサイル実験を止めようとしても止める気配はありません。

ですから、拓殖大学海外事情研究所の武貞特任教授やアメリカの元国連大使のスーザン・ライスさんのおっしゃるように、アメリカは力づくではなく、核兵器放棄ということを「入り口」にせず、「核兵器放棄出口論」を取れば良いと思います。

ここで強調したいのは、単に北朝鮮を対象にするのではなく、全ての国を対象にするということです。


 
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