7月16日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)で生物×機械に見る融合研究最前線について取り上げていたので3回にわたってご紹介します。
2回目は、バイオアクチュエーターで実現するマイクロマシン!についてです。
1回目では生物と機械を融合する重要な分野としてセンサーを見てきました。
ところがあと2つ重要な分野があります。
それはアクチュエーターとエネルギーです。
大阪大学大学院工学研究科の森島 圭祐教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「センサー、アクチュエーター、エネルギーというのは、いずれも生物において非常に優れた機能を持っているということで、これを人工的に作り込むことはこれまであまり出来ていない。」
「(アクチュエーターとは何かという問いに対して、)アクチュエーターというのはエネルギーを運動に変える動力源です。」
「例えば、モーターはロボットとか機械を動かすのに必要な動力源です。」
「生物というのは、電気エネルギーを全く使わずに運動エネルギーに変える、そういった素晴らしいアクチュエーターを持っている。」
「それが筋肉というバイオアクチュエーターです。」
森島さんが注目したのはガの幼虫(ミツモンキンウワバ)です。
その心臓の筋肉をロボットに使い、筋肉の収縮を前後の運動に変換するのです。
そこに心臓の筋肉を組み合わせて動かしていると、これが電源を一切必要としない4ミリ程度の小さな生物ロボットになるのです。
培養液に入れておくだけで、3ヵ月間動き続けるといいます。
森島さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「このように小さい体でも大きな力を出す。」
「今回、私が注目したのは、心臓に相当する肺脈管と呼ばれる筋肉、それを使うことで自律的に動く。」
「普通、ロボットは電池が必要ですね、動かすために。」
「今回の心臓の筋肉を使ったロボットというのは、全くそういった電気を使わずにケーブルもつながっていない。」
「そういった小さいロボットを作ることが出来る。」
「(他にどんなものがあるかという問いに対して、)ショウジョウバエの筋肉を使っています。」
「光を使ってオン・オフ制御が出来ることで、動かしたい時にその筋肉をある方向に動かす。」
「先端にグリッパーという、モノをつかむ機構を付けています。」
「(こうしたロボットはどういう分野で使われるのかという問いに対して、)人が入り込めないようなところに行って探査するロボット、そういったマイクロマシンを作りたい。」
「それから、医療分野ですと、最終的には体の中に入って手術をするようなロボット、例えばカテーテルとか内視鏡の先端にこういった細胞のバイオアクチュエーターからできたツールを付けて、そういったデバイスにも使える。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
あらゆる生物が活動するうえで、筋肉がアクチュエーターの機能を果たしているという見方はとても新鮮に感じられます。
あらためて、生物といえども、その移動のメカニズムは基本的にロボットなどと同様であることを思い起こされます。
前回ご紹介した昆虫の驚異的な嗅覚を利用したセンサーとバイオアクチュエーターを組み合わせたマイクロマシンが実現出来れば、森島さんのおっしゃるように探査ロボットや医療分野での応用が考えられます。