7月14日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で大企業×ベンチャーの”失敗方程式”について取り上げていたのでご紹介します。
大企業が将来の可能性を秘めたベンチャー企業と手を組むケースが増えてきています。
野村証券などの野村ホールディングス(野村HD)は、7月14日、ベンチャー企業と協業し、サービスの開発を行うプログラム、「野村アクセラレータープログラム」の成果を発表しました。
シニア世代の心を豊かにするサービスなど社会問題を解決するための5つのテーマを設定、グループ会社がそれぞれ5つのベンチャー企業と協力してビジネスプランを練ります。
協業がうまくいくように、各ベンチャー企業に3ヵ月半にわたって野村の社員を送り、二人三脚でビジネスモデルの開発にあたってきました。
野村HD・金融イノベーション推進室長の八木 忠三郎さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「想定よりも相当早くテストマーケティングに入ったチームがありまして、そこはかなり我々としても成果と言えるのではないか。」
今後、野村HDはベンチャー企業と更にビジネスモデルを磨き、優秀な企業への出資や提携も検討することにしています。
一方、ANAホールディングスが組んだのは、宇宙ビジネスのベンチャー企業、株式会社アストロスケールです。
来年にも衛星を宇宙に打ち上げる予定です。
設立して4年のアストロスケールは、ロケットの破片などの“宇宙ゴミ”を衛星でキャッチし、除去する事業を目指しています。
このベンチャー企業にANAホールディングスは約3億3600万円を出資しました。
その目的について、ANAホールディングスの長峯 豊之副社長は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「培ってきた航空機を安全・安心にオペレーションするノウハウが今後拡大していく宇宙事業に何らかのかたちで生かせるのではないか。」
ベンチャー企業と組むことで、ビジネスのフィールドが宇宙にも広がる可能性を秘めています。
一方、日本では大企業とベンチャー企業が一緒になってうまくやっていくのがあまり上手でないと言われてきました。
そこで、失敗しないために気を付けることがいくつかあると早稲田大学ビジネススクール准教授の入山 章栄さんは考えており、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「アメリカですと大企業とベンチャーは非常に連携が進んでいて、実は結構失敗しているんですよね。」
「で、理由がいろいろ分析されていまして、我々経営学者がよく言うのが、像とネズミがダンスが出来るかという言い方をするんです。」
「で、例えばなんですが、ネズミ、小さなベンチャーというのは自分たちのビジョンを実現したい“ビジョン重視”なんです。」
「ところが、大企業っていうのはとにかく目先で成果を出しちゃいたい、早く結果を出したいっていう(“目先の成果重視”)、そこが違う動物なんですよね。」
「それから、ベンチャーは“失敗して当たり前”だと、失敗してもどんどんトライしていくんだという考え方なんですが、大企業は(“成功を前提”で)どうしてもまず成功したいと。」
「そして、ベンチャーは意思決定が早くて、いろいろ失敗してもどんどんどんどん変更していくわけで、ちょろちょろちょろちょろ動くわけですね。(”意思決定が早く、変更が前提“)」
「ところが、象である大企業は非常に意志決定が遅くて、手続き重視でいわゆる稟議書ですよね。」
「稟議書をもたもた待っている間に、ベンチャーはしびれを切らしちゃうわけです。」
「そして、ベンチャーって新しいことをやっているんで人間関係を重視したいんですね。」
「“信頼重視”なんだけど、象である大企業はローテーション人事があって、せっかく信頼関係つくったのに2年くらいで担当者がいなくなっちゃうんですよ。」
「で、次に来た担当者も企業の方ばかり見てしまうとことで、中々信頼関係がつくれないんですね。」
「といった違う動物なんだっていうことをお互いに理解した上で歩み寄るということが何より重要だということですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
入山さんのおっしゃる大企業とベンチャー企業が協業する際の“失敗の方程式”について以下にまとめてみました。
(大企業) (ベンチャー企業)
目先の成果重視 ビジョン重視
意思決定が遅く手続き重視 意思決定が早く変更が前提
ローテーション人事 信頼重視
こうしてまとめてみると、大企業、ベンチャー企業にはそれぞれの良さがあります。
しかし、今は技術の進歩が速いので大企業と言えどもこの変化についていけなければ、いつ行き詰まってしまうか分かりません。
一方、いくら素晴らしいビジョンを掲げて事業を進めても資金不足に陥ってしまえば、経営が危うくなります。
ですから、短期的な利益獲得とビジョンの実現という2つのバランスを考えた経営が求められます。
また、1社では出来ない事業でも、複数の企業が協業すれば出来るようになる事業は沢山あるはずです。
ということで、今回ご紹介したように、大企業の組織運営とベンチャー企業の持つ革新的な技術力という両者の良さをうまく引き出すような協業を目指して、ビジョンの達成、あるいはユーザーの潜在需要に応えるような商品、あるいはサービスを提供していただくように各企業にお願いしたいと思います。
その際には、くれぐれも“失敗の方程式”を反面教師にしていただきたいと思います。