2017年09月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.507 『北朝鮮の核・ミサイル実験に見る核兵器廃絶の必要性 その1 なぜ北朝鮮は実験を強硬に進めるのか!』

最近の北朝鮮による強硬に進める核・ミサイル実験の報道に接して、なぜ北朝鮮はこうした動きをするのか、そして世界や日本はこうした動きについてどのように対応すべきなのかなど、いろいろと疑問が湧いてきました。

そこで、リスク管理の観点から6回にわたってこうしたことについてお伝えしていきます。

1回目は、なぜ北朝鮮は核・ミサイル実験を強硬にするのかについてです。

 

まず驚いたのは北朝鮮の憲法です。

9月9日(土)放送の「上田 伸也のサタデージャーナル」(TBSテレビ)の内容の一部を以下にご紹介します。

 

北朝鮮が核保有国となることは金正恩党委員長が自ら憲法に加えた国是だったというのです。

北朝鮮の憲法の序文には以下のような記述があります。

 

金正日同志は・・・先軍政治で、金日成同志の高貴な遺産である社会主義戦取物を光栄に守護し、我が祖国を不敗の政治思想強国、核保有国、無敵の軍事強国に転変させ、強盛国家建設の輝かしい大通路を開かれた

 

要するに、北朝鮮は憲法で核保有による軍事強国化を規定しているのですから、いくら国際社会から核の保有は止めろと指摘されても止めるわけにはいかないのです。

 

ではなぜ北朝鮮は国家としてこのような方向性を打ち出したのでしょうか。

そうした中、9月3日(日)、および9月10日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)の「風をよむ」のコーナーで北朝鮮による核・ミサイル実験の動きについて取り上げていました。

そこで、番組を通して、なぜ北朝鮮は核・ミサイル実験を強硬に進めるのかに焦点を当ててご紹介します。

 

8月29日、日本の上空を通過する弾道ミサイルを発射した北朝鮮、今年に入ってからでも13回目の発射実験です。

朝鮮中央テレビでは、この模様について次のように伝えています。

「アメリカには言葉ではなく、行動で示すべきだということが今回の教訓だ。」

「我々はアメリカの言動を注視し、それに応じて今後の行動を決定する。」

 

北朝鮮が見せるアメリカへの激しい敵意、それを生み出しているものは何なのでしょうか。

世界中で大国による植民地主義が吹き荒れた20世紀初頭、日清・日露の両戦争に勝利した日本は朝鮮半島に進出しました。

1910年、当時の大韓帝国との間で韓国併合条約を締結、朝鮮半島は日本の植民地になったのです。

それから35年、日本は太平洋戦争に敗北、朝鮮半島は日本支配から解放され、新たな歴史を刻み始めました。

日本の敗戦とともに朝鮮半島が解放されると、半島の南部はアメリカ軍、北部にはソ連軍が進駐しました。

そして、1947年、国連の監視のもと、南北総選挙を実施して統一政府を樹立する動きもありましたが、米ソ両大国の思惑で、その動きは頓挫しました。

結局、その翌年の1948年、南と北、別々で選挙が実施され、韓国が李承晩大統領を、北朝鮮は金日成首相を選出し、分断を抱えたままそれぞれが独立を宣言したのです。

 

しかし、1950年6月、“南北統一”を目指す北朝鮮はソ連から武器を、中国から兵力の支援を受け、韓国に侵攻しました。

同じ朝鮮民族が敵味方に分かれて戦う朝鮮戦争です。

韓国の首都、ソウルを占領するなど当初戦況は北朝鮮有利で進みました。

しかし、国連安保理(国連安全保障理事会)はアメリカ軍を中心とした国連軍を創設しました。

そして、韓国が作戦を指揮する権利を日本を占領していた連合国軍総司令官のダグラス・マッカーサーに委ねたことで局面は一変、北朝鮮は押し返され、その後一進一退の膠着状態になったのです。

 

防衛省の研究所などで長年朝鮮半島問題を研究してきた拓殖大学海外事情研究所の武貞 秀士特任教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「マッカーサーが指揮して38度線の北に押し戻した。」

「その過程で「必要であれば核兵器を使うぞ」とアメリカが発言したんですね。」

「北朝鮮は震え上がったんです。」

「(そこで北朝鮮は、)「核兵器が戦局を決定付ける」ことを考えたわけですね。」

「言い換えれば、(将来)北朝鮮が核兵器を持てば、アメリカの軍事介入を阻止出来るのではないかというヒントも金日成は学んだわけですね。」

 

こうしたアメリカの動きもあり、1953年7月、板門店で「休戦協定」が成立しました。

しかし、これは飽くまでも休戦であって停戦ではなく、現在も38度線を挟んで北朝鮮とアメリカ、韓国は軍事的緊張をはらんだままです。

また、その後も戦時の際に作戦を指揮する権利は韓国には戻らず、アメリカ軍に残されたままです。

つまり、いざ有事の際には韓国軍はアメリカ軍の指揮下に入ることになるのです。

こうした状況から脱して、自主防衛出来る国を目指した文政権ですが、北朝鮮に対する防衛が韓国軍だけでは十分な働きが出来ないので、アメリカに一定程度頼らざるを得ないというジレンマを抱えているのです。

 

こうした歴史が現在の北朝鮮の振る舞いにつながっているといい、武貞さんは次のようにおっしゃっています。

「北朝鮮の最終目標は「北朝鮮が主導で朝鮮半島を統一すること」であって、統一するためにはアメリカの軍事介入を阻止しなければならない。」

「具体的に何を意味するかと言えば、「在韓米軍出て行って下さい」ということですよ。」

「「再び米軍を送り込むようなことをしないという約束の協定を結んで下さい」ということですよね。」

「アメリカと軍事衝突を避けるための決定的な兵器が「核兵器」なんだと。」

 

アメリカ東部に到達可能な長距離弾道ミサイル(ICMB)の開発や核実験など、傍若無人とも見える動きは行き当たりばったりなものではなく、「北朝鮮による南北統一」というシナリオに沿った動きだというのです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

このように朝鮮半島を巡る過去の歴史を遡って見てくると、これまでの北朝鮮の動きが多少なりとも理解出来てきます。

また、同時に国際的な国家間の関係からいろいろなことが見えてきます。

それを以下にまとめてみました。

・日本が韓国併合の際、植民地支配ではなく本当の意味で両国の共存共栄政策を打ち出していれば、朝鮮半島の分断は生じなかった

・更に日本が大東亜共栄圏という考え方をもとに、中国などアジア諸国への侵略を展開していなければ、太平洋戦争は起きなかった

・日本の敗戦時に、大国であるアメリカとソ連の思惑による現在の北朝鮮と韓国という分断支配がなければ、現在のような朝鮮半島の悲劇にはつながらなかった

・日本の敗戦の決定的要因となったアメリカによる原爆投下は、朝鮮戦争の際にもアメリカが原爆の投入をちらつかせたことが戦局を左右する大きな要因となった

・このことが、現在の北朝鮮による国を挙げての核保有化を目指す動きにつながっている

・北朝鮮は武力による世界制覇を目指しているのではなく、あくまでも悲願である南北統一を実現させるためのアメリカとの交渉の強力な手段として核兵器開発を進めている

・核拡散防止条約に基づいて、世界各国はこうした北朝鮮の核開発の動きを阻止しようとしている

 

一方で、世界平和の維持という切り口から北朝鮮による核保有化の動きを見てみると次のようなことが言えます。

・北朝鮮の核保有を許すことは他の国々の核開発をも許すことになり、世界的な核兵器の拡散につながることになる

・そこまで行かなくとも、北朝鮮は核・ミサイル開発に必要な外貨獲得のために核やミサイルを他国やISなどの過激派組織に売り込むリスクがある

・そうした場合、核によるテロ組織の脅迫が日常化するリスクが生じてくる

・アメリカは、自国の領土防衛という観点に重きを置いて北朝鮮による核・ミサイル開発を阻止しようとしている

・従って、北朝鮮との交渉条件として、日本や韓国にとっては受け入れがたい核の保有だけは認めるリスクがある

・万一、北朝鮮とアメリカが交戦状態になれば、アメリカの同盟国である韓国や日本も戦争に巻き込まれ、最悪の場合、核兵器の投入により両陣営に甚大な被害をもたらすリスクが生じる

・更に、万一北朝鮮を支援している中国やロシアが参戦するようなことになれば、第三次世界大戦にまで発展し、人類存続の危機を迎えることになる


 
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