2017年09月14日
アイデアよもやま話 No.3808 新型「リーフ」の登場から見えてくること その4 EV普及の課題!

9月6日(水)に発表された新型「リーフ」から見えてくることについて、いくつかの報道記事を参考に5回にわたってご紹介します。

1回目では、新型「リーフ」のいくつかのメリットについてご紹介し、新型「リーフ」はEV普及の起爆剤となり得るとお伝えしました。

そうはいうものの、新型「リーフ」にはいくつかの課題が見られます。

そこで、4回目では今後のEV普及の観点からこの課題について私の思うところをお伝えします。

 

まず、ここ2、3年で急速に急速充電インフラが整ってきましたが、それでもガソリンスタンドの数に比べればまだまだ十分とは言えません。

そもそもガソリンスタンドには複数台のガソリン車に同時に給油出来る設備のあるところが多いです。

しかし、EVの急速充電スタンドは、ほとんどのところが1台分しかなく、あってもせいぜい2台分です。

これでは、新型「リーフ」が起爆剤となってEVの普及が進んでもすぐに充電スタンド不足が問題になってしまいます。

ここで救いなのは、ガソリンスタンドに比べて急速充電スタンド設置の規制がほとんどないこと、あるいは急速充電スタンド1基分の設置費用がざっと500万円程度と安くて済むことです。

ですから、既に一部のコンビニでは普及が進んでいますが、急速充電スタンドをコンビニやスーパー、あるいはデパート、ホテルなどの商業施設に設置されることが求められます。

 

更に、従来の「リーフ」で80%の充電に30分かかっていたのが、新型「リ−フ」では40分でようやく80%の充電が出来ます。

しかも、一般的に充電時間は30分と制限されています。

ですから、30分の充電時間では実際の航続距離は200km近くまで抑えられると思われます。

 

こうした状況に、さすがにチャデモ協議会は今年3月に電動車両の急速充電規格を改定し、従来50kwだった実効充電出力を150kwまで向上出来るようになり、充電時間を3分の1程度まで短縮出来る見通しといいます。

充電時間が現行の30分から10分程度まで短縮出来れば、さほど不便は感じなくなると思います。

更に、2020年をめどに最大出力をさらに350kwまで拡大する計画とのことです。(詳細はこちらを参照)

ここまでくると、実効充電出力は現行の7倍ですから充電時間は5分足らずになり、ほぼガソリン車の給油時間と変わらなくなります。

こうした充電時間の短縮はEVの普及を推進するうえで必須だと思います。

 

また、日産自動車でも40kwhとバッテリー容量が大きくなったこともあり、こうした対策の一環として、メーカーオプションの6kw普通充電器により、従来モデルと同等の充電時間、すなわち8時間でフル充電をすることが出来るといいます。

 

しかし、問題は価格です。

工事費込みで30万円以上もかかるというのです。

これでは、多少手間がかかっても2日に分けて23時〜7時の深夜時間帯に充電する方を選ぶ新型「リーフ」オーナーが圧倒的に多いと思います。

この代替案として、思いついたのがニチコン株式会社で販売しているEVパワーステーション(Leaf to Home)です。

この装置は、旧モデルの「リーフ」(バッテリー容量:24kwh)の場合、4時間でフル充電出来るだけでなく、家庭用電源としても使用出来るのです。

そして、標準モデルの価格が補助金込みでは40万円程度と知っていたので、これでこの課題は解決かと思ったところ、既にこの装置の補助金制度は終了していることが分かりがっかりしてしまいました。

というのは、補助金なしでは工事費込みで90万円くらいになってしまうからです。

これでは100万円程度の資金は気にならない層のオーナーか、公的施設などでなければ購入出来ません。

私も勿論購入出来ません。

 

次に、マンションなどの集合住宅にお住まいのEVオーナーでも気軽に充電出来るように、

こうした集合住宅の駐車場においても、充電インフラを整備することが求められます。

 

更に、EVの普及が進むにつれて、特に昼間の時間帯の急速充電が電力需給のひっ迫をもたらすリスクが高まってきます。

こうした状況のリスク対応策として考えられるのがEVのバッテリーを家庭用電源として利用する装置です。

その対応策の一つが先ほどご紹介したEVパワーステーションです。

この装置を自宅に設置すれば、毎日電気代の安い夜間にフル充電してバッテリー容量の半分の20kwhを家庭用電源として使えば、一般的な家庭で夏や冬の季節を除けば、ほとんど毎日の昼間の消費電力量を全て賄うことが出来るのです。

ですから、EVパワーステーションのような装置の購入価格が高いことは、EV普及に伴う昼間の時間帯の消費電力量の増加に対する貴重なリスク対応策の一つを選択肢から除いてしまうことになるのです。

工事費込みで90万円以上という購入価格はあまりにも高いハードルとなっています。

ということで、基本的な機能に絞ってもせいぜい30万円程度の価格に抑えた装置の登場が待たれます。

 

そこに至るまでのつなぎとして期待出来るのが、「リーフ」の初期モデルでオプションになっていた100Wまで使える100Vコンセントです。

新型「リーフ」ではひょっとしたら1500wまで使えるコンセントが標準装備になるのではと期待していたのですが、なんとコンセントはオプションとしても消えてしまったというのです。

これには、EVの普及を少しでも推進したい立場としてはとてもショックでした。

そこで、日産自動車本社の問合せ窓口になぜオプションの100Wのコンセントをなくしてしまったのか問い合わせたところ、これまでにほとんどニーズがなかったからだということでした。

しかし、フル充電で40kwh分の電力と1500wまで使えるコンセントがあれば、ちょっとしたアウトドア活動や大規模災害による停電時には貴重な電源として1週間ほどは十分に最低限の電化生活を維持することが出来るからです。

こうしたことから、コンセントを除いてしまった日産自動車の新型「リーフ」開発チーム、あるいは経営陣の判断をとても残念に思いました。

幸いなことに、このコンセントの設置はディーラーオプションということなので、先ほどの問合せ窓口を通して、是非1500Wのコンセントとして復活させて欲しいと依頼しました。

 

次に、お伝えしたいのは、以前にもお伝えしたことですが(参照:アイデアよもやま話 No.3623 EVに求められる寿命になったバッテリーの下取り交換!)、EVの劣化したバッテリーを新しいバッテリーに交換してもらえる下取りサービス、すなわちEVの劣化したバッテリーのリサイクルについてです。

日産自動車は、初代「リーフ」販売当初からEVのバッテリーのリサイクルの必要性を訴えていました。

そして、実際に住友商事と合弁でフォーアールエナジー株式会社を2010年9月に立ち上げたのです。

ですから、初代「リーフ」のオーナーの一人として私は、購入して数年後に下取りに出しても、自分の乗ってきた「リーフ」のバッテリーを有料で自宅用バッテリーとして使用出来るように出来るか、あるいはそのまま下取りに出しても最低でも数十万円程度にはなるだろうと期待していました。

ところが、先日新型「リーフ」の購入予約をした際に営業マンから下取り価格はほとんどゼロ円だと聞かされてビックリしてしまいました。

なんと、フォーアールエナジーでは未だに新品のバッテリーしか取り扱っていないというのです。

ですから、まだまだ劣化したバッテリーのリサイクル事業の開始までには時間がかかるというような状態なのです。

 

さすがに、こうした状況に納得出来ず、なんとか下取り価格を少しでも高くしてもらえるようにと担当の営業マンにお願いしました。

いくらなんでも400万円近く支払って購入したEVが数年後に下取りに出したら下取り価格がほとんどゼロ円という現実は受け入れられません。

そこで、販売店の店長に、なんとか下取り価格について少しでも高く出来るように依頼しました。

 

なお、販売する側もさすがにこうした状況を見逃せず、新型「リーフ」の販売に当たっては、4〜6年後の下取り価格保障制度を設けていることを営業マンから聴きました。

例えば、私が購入予約をしたグレードの場合、購入して4年後に下取りをした場合、年利2.9%のクレジットで購入すると最低残存価格124万円を保障してくれるというのです。

勿論、一括購入することも出来ますが、EV関連の技術、例えばバッテリーの性能、あるいは製造コストなどの向上は5年ほどでどんどん進んでいます。

既に、国内ではトヨタ自動車もEVの開発に軸足を移しつつあります。

また、海外メーカーも同様の動きが活発化しつつあります。

ですから、新型「リーフ」に続いてトヨタや海外メーカーが投入するEVの中には航続距離や価格で日産「リーフ」を凌駕するようなモデルが登場してくる可能性は否定出来ません。

ですから、EVにおける数年後の下取り価格保障制度は、購入者が安心してEV購入を決定する上で欠かせないものだと思います。

 

さて、持続可能な社会の実現に向けて考えた場合、特にEVの進化はここ数十年ほどはとても速いと予測されるのでモデルチェンジに伴う買い替え需要が多く、バッテリーのリサイクルに止まらず、車両全体の100%に近いリサイクルが求められます。

 

次回は、石油業界を中心にEVの普及で大きな影響を受ける業界についてお伝えします。


 
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