2017年09月16日
プロジェクト管理と日常生活 No.506 『検討の進む天体衝突のリスク対応策 その3 各国のリスク対応策!』

前回、プロジェクト管理と日常生活 No.503 『日本喪失を招く巨大カルデラ噴火!』で火山国、日本の抱えるリスク、およびその対応策についてお伝えしました。

今回は、地球規模で抱えるリスクの一つ、すなわち天体衝突についてです。

 

これまで地球に小惑星が衝突する危機を題材にした映画はいくつもありました。

そして、長い地球の歴史の中で何度か実際に小惑星などの天体が衝突した跡が世界各地に残されています。

そうした中、5月31日(水)放送の「クローズアップ現代+」で「人類のピンチ!?天体衝突を回避せよ」をテーマに取り上げていました。(詳細はこちらを参照)

そこで、番組を通して現在における天体衝突のリスク、およびその対応策について3回にわたってご紹介します。

1回目では、天体衝突のリスクについて、2回目では国際的なリスク対応策についてご紹介してきました。

3回目は、各国のリスク対応策についてです。

 

まずアメリカでは、年間50億円もの予算をNASAなどに投じて、地球に接近する危険な小惑星の発見や監視に取り組んでいます。

また、ヨーロッパでは、EUの支援を受け、大学や民間企業などが連携し、国の垣根を超えたネットワークが作られています。

一方、日本ではヨーロッパなどと比べると、予算が少ないのが現状です。

そんな中、JAXAでは今、ユニークな対策技術を開発中です。

家庭用の望遠鏡を持っている一般の天文ファンを巻き込むことで、警戒すべき小天体を見つけようという試みです。

この研究をしているJAXAの柳沢 俊史研究員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「1枚の画像では見えていないような、非常に暗い天体を検出できる手法になります。」

「将来的には、ぜひアマチュアの方にも、我々の技術を使っていただいて、こういうNEO(小天体)の監視体制に貢献していただければと考えております。」

 

このシステムの仕組は、以下の通りです。

望遠鏡で撮影した連続写真から画像の一部を切り出していきます。

これを重ねた時、明るく見えるものがあれば、地球の近くにある小天体だということになります。

こうした画像解析によって、解像度の低い望遠鏡でも小天体を見つけ出すプログラムなのです。

今後は、日本全国に10万人いるとされる天文ファンに、このプログラムを使ってもらいたいと考えています。

 

吉川さんは、次のようにおっしゃっています。

「(日本の小惑星探査というと、吉川さんが責任者を務めている「はやぶさ2」のプロジェクトがあるが、これは、小天体の衝突にどういう貢献が考えられるかという問いに対して、)もともと、はやぶさというミッションがあって、探査した「イトカワ」という小惑星、まさに地球に接近する小惑星で、その素性が非常に正確に知ることができたわけで、これは衝突回避という問題に対して、非常に重要な情報源になったということになります。」

「(天体衝突、まさに起こりうる自然災害として、私たちもしっかり認識していかなければいけないと思うが、 天体衝突を防ぐ道筋、専門家として今、どの程度の確信で見えているかという問いに対して、)まず、発見する。これはもう今、順調に続いていますので、恐らく、割と近い将来には多くの危ない天体が見つかると思いますが、問題なのは、どうやって回避するか。ここは、今後の課題ということになります。」

「(回避するということに関しては、まだまだ課題は多いのではという問いに対して、)はい。これからの研究が必要になります。」

「(この研究、対策というのは、国の枠を超えて、人類的な課題として加速していかなければいけないということで、国際的な枠組み作り、協力体制を作るということも課題ではないかという問いに対して、)まさに、今回の会議(*)でかなり議論になりました。」


日本科学未来館(東京都お台場)で今年5月にNASAをはじめとする各国を代表する研究機関の専門家たちが集まり開催された「地球防衛会議」

 

番組の最後に、番組キャスターの武田 真一さんは、次のようにおっしゃっています。

「この私たちの住む地球、常に宇宙からの脅威にさらされているということに、今日は改めて驚きました。」

「専門家の議論に任せるだけではなく、私たちもいつか必ずやって来る自然災害として捉えて、関心を持っていくことが必要だと感じました。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

天体衝突は人類共通の、私たちの生存を脅かすかもしれないほどの大きなリスクです。

ですから、世界的な協力体制の下で、衝突の可能性のある天体の早期発見、および衝突回避のためのタイムリー、かつ効果的な対応策が求められます。

ですから、こうした枠組みにおいて、各国が役割分担がしての取り組みがなされるべきだと思います。

 

そうした中、衝突の可能性のある天体の早期発見において、現在JAXAが開発中の、一般の天文ファンを巻き込むことで警戒すべき小天体を見つけようという試みは、とても効率的、かつ効果的だと思います。

研究者の方々には人類存続のために、こうした各国の取り組みの優れた方法を世界的に水平展開しつつ、世界各国が一丸となって天体衝突のリスクを最小限に食い止めるような対応策を進めていただきたいと思います。


 
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