2017年09月15日
アイデアよもやま話 No.3809 新型「リーフ」の登場から見えてくること その5 厳しくなるのは石油業界だけではない!?

9月6日(水)に発表された新型「リーフ」から見えてくることについて、いくつかの報道記事を参考に5回にわたってご紹介します。

1回から4回まで新型「リーフ」がEV普及の起爆剤になり得ること、EVを巡る海外、および国内の動き、そしてEV普及の課題についてご紹介してきましたが、EVの普及は様々な産業に大きな影響を及ぼします。

そこで、最終回の5回目では特にEVの普及拡大で大きな影響を受けるのは石油業界だけに限らないことについてお伝えします。

 

まず、9月6日(水)放送のニュース(NHK総合テレビ)で厳しい石油業界について取り上げていたのでご紹介します。

 

石油業界は厳しい経営環境が続いています。

エネオス、エッソ、モービル、ゼネラル、4つのブランドを展開する石油元売り最大手のJXTGエネルギーは、今後ガソリンスタンドを「ENEOS」に統一することを明らかにしました。

 

JXエネルギーと東燃ゼネラル石油が経営統合して今年4月に発足したJXTGエネルギーは、ガソリンスタンドはJXエネルギーが展開してきた「ENEOS」と東燃ゼネラルが展開していた「ESSO」、「Mobil」、「ゼネラル」の4つのブランドがありました。

今回、経営の効率化に向けて3年後を目処に全国1万3500余りの系列ガソリンスタンドを「ENEOS」ブランドに順次統一することを明らかにしました。

およそ50年続いてきた「ESSO」、「Mobil」、「ゼネラル」のブランドは徐々に姿を消していくことになります。

 

背景にあるのは、ガソリン事業の減少などに伴う石油業界の厳しい経営環境です。

高度経済成長時代に本格的なモータリゼーションに突入した日本、ガソリンの国内需要は2004年度にピークに達しました。

しかし、需要はこの10年余りで15%減少しました。

その要因として、少子高齢化や若者の車離れ、自動車の燃費の改善などが挙げられています。

ガソリン需要の減少は今後も続く見通しで、JXTGエネルギーは経営効率化に向けてブランドを統一することにしたのです。

JXTGエネルギーは、それぞれのブランドでガソリンなどの値引きが受けられるカードのサービスなどを「ENEOS」でも使用出来るようにしていくということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

JXTGエネルギーに限らず、石油業界は今後のEVの普及に伴い、これまで以上にガソリンの売り上げダウンが加速していくと思われます。

また、ガソリンスタンドはこれまでもガソリン車の燃費向上などにより売上が減少して廃業に追い込まれるところがありましたが、石油業界と同様の状況に追い込まれると思われます。

 

石油業界やガソリンスタンドだけではありません。

EVはガソリン車に比べて部品点数がとても少ないので、EVの生産に不要な部品メーカーは別な事業への転換が必要になります。

 

一方、自動車の完全自動運転化が実現すれば、EVは一種のロボットと化し、また完全自動化はAI(人工知能)無くしては成り立ちません。

ですから、完全自動化したEVは、ロボットとAI双方の技術の集大成の成果の一つと言えます。

 

ということで、EVの普及によって、石油業界、およびガソリン車の部品メーカーの一部では大きな影響を受けるところが出てきますが。一方ではロボット技術によって様々な形態のEVが誕生し、更にはAI技術の進化によりどんどんユーザーの操作性や安全性を高めてきめ細かく対応するサービスを提供してくれるようになると期待出来ます。

また、こうした要求を満たすためにはIoT(モノのインターネット)も欠かせません。

ですから、ガソリン車からEVへのシフト、および運転の完全自動化の流れは、従来の一部の産業の衰退と同時に、間違いなくこうした新しい産業の規模拡大につながるのです。

 

更には、最近シェアリングエコノミーがあらゆる産業界で浸透しつつあります。

ですからEV自体も完全な自動運転技術が実現されれば、いつでもどこでも必要な時にシェア出来るようなサービスが登場してきます。

そして、自動運転車を利用したシェアリングサービスは、従来のレンタカーを借りる場合と違ってほとんど人手を介さないで24時間365日フル稼働が出来るので、当然料金はずっと安くて済むようになります。

また、いつでもどこでも必要な時に自動運転車自ら来てくれるので、自動車を所有する必要性を感じる人はこれまでよりもずっと少なくなると思われます。

更には、必要に応じてファミリータイプやスポーツタイプなどその時々に合ったタイプのEVを気軽にシェア出来るようになるはずです。

こうした動きは当然のことながら、販売台数でみれば自動車産業界の規模縮小につながります。

このように、シェアリングエコノミーは石油業界のみならず自動車業界にも大きな影響をもたらすのです。

 

一方では、先ほどもお伝えしたように、ロボットやAI、あるいはIoTといった新しいテクノロジーを活用した新しい産業がこれから開花していくと期待出来ます。

 

ここで注目すべきは、新しいテクノロジーが導入されて従来の産業が衰退しても、一方では新たな雇用が生まれており、大量の失業者は発生したままの状態が続くということはないと、これまでの歴史が示していることです。

また、生産性向上の成果は、賃金の上昇や労働時間の短縮を伴いながら一定の雇用の確保が維持されてきているのです。

こうした状況は今後も続くと期待したいと思います。

 

以前にもお伝えしましたが、こうした楽観的な予測が出来る背景は、人類の持つ本能的な好奇心です。

人類が好奇心を失わない限り、新しいテクノロジーやサービスは必然的に今後とも継続的に誕生し、新たな雇用を生み出すのです。

そして、例え経済全体が縮小しても、あらゆるモノやサービスにシェアリングエコノミーが浸透していけば、生活費はその分少なくて済むようになり、一般的な生活の収支のバランスは保てるのではないかと期待出来ます。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています