2017年09月11日
アイデアよもやま話 No.3805 新型「リーフ」の登場から見えてくること その1 EV普及の起爆剤となり得るか?

2010年、満を持して日産自動車は100%電気自動車(EV)「リーフ」を販売し、世に問いました。

そして、日産・ルノー連合は当初、「リーフ」などのEVを2016年度末に150万台販売する計画でした。

ところが、約42万台の販売にとどまり、当初の販売目標には遠く及ぶことなく、苦戦を強いられ今日まで来てしまいました。

しかし、ガソリン車に比べて価格は高く、フル充電での実質的な航続距離は150km程度と短く、しかも充電インフラがガソリンスタンドに比べてはるかに整備されていなかったのですから、購入層は限られ、今から考えてみれば当然の帰結と言えます。

そもそもこれまでの「リーフ」の購入層の方々は、環境問題やエネルギー問題に関心が高く、充電時間など多少の不満を我慢出来たり、ほとんど100km程度の距離しか運転しないような層だったのです。

私もこうした層の中の一人で、特に冬場の暖房無しのドライブは沢山着込んだ状態で、何十年か前の自動車にタイムスリップしたような感じを持ちながらの運転でした。

ですから、フルモデルチェンジした新型「リーフ」には大きな期待を寄せていました。

 

そうした中、9月6日(水)、幕張メッセで7年ぶりにフルモデルチェンジされた新型「リーフ」が世界初で披露されました。

「リーフ」はこれまで世界49の国と地域で販売されてきており、多くの海外メディアが関心を寄せる中、こちらの会場で開催された発表会には、世界60ほどの地域のメディアも参加したといいます。

私も早速、9月6日から日産本社ギャラリーに展示されている新型「リーフ」をその日に見に行って来ました。

そして、説明員に1時間以上あれこれ質問し、実際に自動駐車について体験し、その便利さを実感してきました。

 

そこで、今回発表された新型「リーフ」から見えてくることについて、いくつかの報道記事を参考に5回にわたってご紹介します。

1回目は、新型「リーフ」はEV普及の起爆剤となり得るかどうかについてです。

 

まず、この発表に関連するいくつかの報道記事を参考に、新型「リーフ」の主な改善点、および新しい機能をご紹介します。

新型「リーフ」は様々な観点から改善されていますが、最大の特徴は航続距離と低価格、および動力性能です

参考までに、以下に新型「リーフ」の初期モデル、および発表以前のマイナーチェンジモデル(最高グレード)からの主な改善点を以下に時系列でまとめてみました。

・搭載するバッテリー容量

  24kwh ⇒ 30kwh ⇒ 40kwh

・フル充電での航続距離(JC08モード)

  200km ⇒ 280km ⇒ 400km

・車両価格(ベースモデルの税込み価格)

  約376万円 ⇒ 約337万円 ⇒ 約315万円(*)

  • 国からの40万円の補助金込みの実質支払い額は約275万円

・動力性能

  出力 :80kw ⇒ 80kw ⇒ 110kw(150PS)

  トルク:254N・m ⇒ 245N・m ⇒ 320N・m

 

この他に、デザイン面では空力性が強化され。初代「リ−フ」と比べて空気抵抗を4%減らすことに成功し、航続距離を伸ばすことに貢献しています。

また、操作性や安全性では、既に販売されている「セレナ」などに搭載されているのと同様の機能、すなわちアクセルペダルひとつで、加速/減速だけでなく、摩擦ブレーキを使った停止までを操作可能な「eペダル」、自動運転技術(機能は限定的)の「プロパイロット」、あるいは自動で駐車を行える「プロパイロット パーキング」が採用されています。

 

なお、新型「リーフ」は、国内では10月から発売、アメリカ、ヨーロッパでも来年1月から順次販売される予定といいます。

 

さて、9月7日(水)放送のニュース(NHK総合テレビ)によれば、今回の発表会の場で、日産自動車の西川 廣人社長は次のようにおっしゃっています。

「早晩、航続距離そのものはEVとしての差別化の要因にはならないのが当たり前で、その上でどれだけ魅力があるかというところがポイントになってくる。」

「そうすると、初めてそれで主力の車になれる、その段階に入っている・・・」

 

以上、新型「リーフ」について、いくつかの報道記事を参考にご紹介してきました。

 

まず、航続距離についてですが、新型「リーフ」の実質航続距離は300km程度までになったのですから、多少の長距離ドライブでもせいぜい1回の急速充電で十分安心してドライブが出来ます。

また、価格についてもベースモデルの補助金込みの実質支払い額は約275万円と、機能面などを考慮すれば、初期モデルや前回のマイナーチェンジ時の価格と比べてかなり安くなっております。

これまでになく、ガソリン車との価格競争力は向上したと思います。

しかも、ガソリン代に比べて、充電費用は電力会社との契約次第でとても安くなります。

ですから、多少ガソリン車よりも価格が高くても、燃料代の安さを考慮すればEVの方がお買い得になるのです。

ちなみに、「フェアレディZ」のトルクは365N・mなので、スポーツカーに近い動力性能と言えます。

また、アメリカのEVベンチャー企業、テスラのEV「モデル3」との比較では、「モデル3」はフル充電での航続距離350km、価格は約390万円(税込み)ですので、「モデル3」に対して、新型「リーフ」は航続距離、価格の両面で競争力があります。

また、「BMWi3」はフル充電での航続距離390km、価格は約509万円(税込み)ですので、こちらに対しても新型「リーフ」は価格面での競争力が十分にあります。

そして、トヨタの「プリウスPHV」の価格は約326万円(税込み〉ですから、こちらに対しても十分に価格競争力があります。

 

更に、操作性や安全性も格段に充実したのですから、これまでEVに関心のなかったドライバーの関心をも大いに惹くのではないかと思われます。

 

こうした流れの中で、西川社長のおっしゃるように、新型「リーフ」の登場を契機に航続距離はEVとしての差別化要因にはならなくなってくると思います。

しかも、初期モデルで問題となっていた、特に冬場のエアコン使用時の航続距離がグンと落ちるという問題も既にマイナーチェンジの時にほとんど解決されたといいますから、一般ドライバーのみならず、タクシー業界や輸送業界からの引き合いも大いに期待出来ます。

 

ということで、新型「リーフ」はこれからのEV普及の起爆剤に十分なり得ると思います。

そして、この新型「リーフ」の売れ行き次第では、国内のみならず。世界的なEV開発競争が加速すると思われます。

更に、実質航続距離が400kmまで伸びれば、完全にガソリン車からのEVへのシフトの流れが決定的になると期待出来ます。

その時期は「リーフ」の次のフルモデルチェンジの時、すなわち数年後には起きていると私は思っています。

 

次回は、EVを巡る海外の動きについてご紹介します。


 
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