2017年09月02日
プロジェクト管理と日常生活 No.504 『検討が進む天体衝突のリスク対応策 その1 天体衝突のリスク!』

前回、プロジェクト管理と日常生活 No.503 『日本喪失を招く巨大カルデラ噴火!』で火山国、日本の抱えるリスク、およびその対応策についてお伝えしました。

今回は、地球規模で抱えるリスクの一つ、すなわち天体衝突についてです。

                   

これまで地球に小惑星が衝突する危機を題材にした映画はいくつもありました。

そして、長い地球の歴史の中で何度か実際に小惑星などの天体が衝突した跡が世界各地に残されています。

そうした中、5月31日(水)放送の「クローズアップ現代+」で「人類のピンチ!?天体衝突を回避せよ」をテーマに取り上げていました。(詳細はこちらを参照)

そこで、番組を通して現在における天体衝突のリスク、およびその対応策について3回にわたってご紹介します。

1回目は、天体衝突のリスクについてです。

 

東京・お台場にある、日本科学未来館で今年5月にNASAをはじめとする各国を代表する研究機関の専門家たちが集まり、「地球防衛会議」が行われました。

今回の会議には、世界24ヵ国、およそ200人の研究者が参加しています。

ドイツ航空宇宙センターのある研究者は、次のようにおっしゃっています。

「( 天体衝突は現実に起きるのかという問いに対して、)天体衝突は必ず起きます。実際に4年前、ロシアで起きています。小さな隕石でしたが、街に深刻な被害を与えました。」

 

一方、欧州宇宙機関のある研究者は、次のようにおっしゃっています。

 「天体衝突は現実の脅威です。そうでなければ、ここには来ません。甚大な被害につながるので、前もって準備しておく必要があるのです。」

 

地球に衝突する可能性のある小天体、その多くは、火星と木星の間からやって来ます。

数十万個の小惑星が漂うエリア、木星や火星の引力の影響などで軌道が変化することで、地球に接近してくるのです。

 

4年前のロシア、大きさ、十数メートルの小天体が中部のチェリャビンスク近郊に落下。1500人以上がけがをし、7400の建物が被害を受けました。

さらに先月(4月)、全長650メートルほどの小天体が、地球からわずか180万キロにまで接近、宇宙の距離感で言えば、かなりのニアミスでした。

また、世界各地に見られるクレーター、その多くは、天体衝突の痕跡です。

現在、確認されているだけでも170以上、地球は天体衝突の危険に絶えずさらされているのです。

 

こうした中、危険な小天体をあらかじめ見つけようという取り組みが世界中の天文台で行われています。

その1つが、ハワイにあります。

ハレアカラ天文台です。

口径1.8メートルの大型望遠鏡を使い、2008年から地球に迫り来る天体がないか監視を専門に行っています。

番組で紹介された写真の中に、警戒すべき小天体が見つかりました。

16分置きに撮影した複数の写真を連続再生してみると、1つだけ移動している天体があります。

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こうして動いて見えるものが地球のそばにある小天体です。

2015年10月に発見され、その20日後、地球からわずか50万キロの距離を通過していきました。

こうした観測の結果、実は地球のそばには警戒すべき小天体がたくさんあることが分かってきました。

今や、分かっているだけで16,000に上っています。

観測施設の増加や技術の向上によって、まだまだ増えると考えられています。

 

ハワイ大学のリチャード・ウェインスコート博士は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

 「90年代初めまで、小天体はほとんど見つかっていませんでした。その後、アメリカ議会が天体衝突は警戒すべき自然災害だと予算をつけたことで観測が本格化したのです。注意が必要な小天体は、まだまだ、たくさん潜んでいると考えています。」

 

前回お伝えした天体衝突のリスクを踏まえ、東京・お台場にある、日本科学未来館で今年5月にNASAをはじめとする各国を代表する研究機関の専門家たちが集まり、「地球防衛会議」が開催されました。

この会議で行われたのが、架空の小天体「2017PDC」の接近を想定したシミュレーションです。

架空の小天体のプロフィールは、直径は100から250メートル。

10年後、日本近海から北大西洋のどこかに落ちる可能性があるとされました。

研究者たちは、小天体の組成の分析や、衝突した時の衝撃の予測、そして衝突回避の方法の検討など、いくつかのグループに分かれて、さまざまな角度から対策を話し合います。

 

衝撃予測グループでは、過去の天体衝突の被害などから推定していきます。

参考データの1つが、1908年、シベリアで起きた天体衝突直後の様子です。

木々が爆風でなぎ倒されています。

その数、8000万本、東京都に匹敵する範囲に及びました。

 今回、想定する天体のサイズは、この2倍から4倍、都市を丸ごと破壊する威力を持つと試算されました。

落下地点などの情報は、日々少しずつ更新されていきます。

3日目のこの日は、落下予測地点が絞られたことが発表されました。

NASAのポール・チョーダス博士は、次のようにおっしゃっています。

「東京近郊に落下する可能性があります。」

 

それを受け、市民への情報伝達を検討していたグループの議論が紛糾します。

 

「すぐ市民に避難を呼びかけるべきでしょう。」

 

「いや、まだ落下が決まったわけではない。混乱が起きてしまう。」

 

「確信がないと市民を動かせません。まだ100%の確信はありません。」

 

一般の人には現実的な危機として捉えられていない天体衝突、パニックを起こさせないように情報を伝達する方法が課題として浮かび上がってきました。

そんな中、ひときわ白熱していたのが、衝突の回避を検討するグループです。

 

「核爆弾なら破壊できるのでは。」

 

「それはダメだ。破壊したら、破片が地球に落下する可能性がある。」

 

今回の会議で日本の窓口を務めたJAXA宇宙科学研究所の吉川 真准教授は、この会議の目的について、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「天体の地球衝突という、起こったらとんでもない事態になりますけれども、それについて最新情報を交換した上で、どのような対策をとったらいいかと、それを世界中の専門家が集まって議論することが目的でした。」

 

そもそも、この会議が始まるきっかけとなった出来事があります。

それが、1994年に起きた木星への天体衝突です。

これをきっかけに、地球でも同様の衝突が起こるのではないかと考えられるようになり、世界中の天文台で観測が行われることになりました。

その結果、地球の軌道と重なる可能性がある小天体が16,000も見つかりました。

こうした観測が進む中で、研究者たちが対策を考える地球防衛会議が始まったんです。

 

吉川さんは、こうした状況について次のようにおっしゃっています。

「今、発見されている、この16,000個については、軌道が計算されてまして、今後数十年ないし、100年ぐらいは地球にぶつからないということが確認されています。」

「(一方、)まだまだ見つかっていなくて、地球に接近、あるいは衝突し得る天体がたくさんあります。」

「(どれぐらいの被害が、どれぐらいの頻度で起きると考えられているかという問いに対して、)まず、恐竜絶滅については、大きさが10キロメートルぐらいの小惑星がぶつかっただろうと言われているんですが、この場合には頻度は小さくて恐らく1億年に1回程度ということになります。ですが、小さい天体、例えばロシアに落ちたチェリャビンスク隕石は、大きさが20メートルもないぐらいの小さなものなんですけれども、これは数が多くて、推定で1000万個ぐらいはあるんじゃないかと。まだ、ほんのちょっとしか見つかっていないですから、そういった天体を探すことが重要になります。」

「(これは、どれぐらいの頻度で落ちてくる可能性があるのかという問いに対して、)この場合は、数十年に1回とか100年に1回とか、落ちる可能性があります。」

「(そして今回、会議で想定されたのは、直径が100メートルから250メートルクラスですが、これはどのぐらいの頻度で、どのぐらいの被害をもたらすと考えられるのかという問いに対して、)この場合は、もし仮に東京に落ちたとすると、関東地方ぐらいが被害を受けてしまいますし、かなり大きなことになります。頻度的には、数千年に1回ぐらいじゃないかなと思いますけれども、よく分からないところですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

天体衝突については、数千年、あるいは何万年年に一度くらいしか地球に大きな被害を及ぼすものは起きないと思っている人が多いと思います。

ところが、番組によれば、4年前のロシアでは小天体の落下により。1500人以上がけがをしたといいます。

更に今年4月、全長650メートルほどの小天体が、地球からわずか180万kmにまで接近するニアミスがあったのです。

 

このように、これまでの観測の結果、地球のそばには警戒すべき小天体がたくさんあることが分かってきており、分かっているだけで16,000といいます。

そして、観測施設の増加やAI(人工知能)などの技術の向上によって、まだまだ増えると考えられています。

 

ということで、私たちは大なり小なり地球は天体衝突の危険に絶えずさらされていることを意識しておくことが必要なのです。


 
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