2017年08月14日
アイデアよもやま話 No.3781 AIの活用事例 (4) その1 監査にも活用されるAI!

これまでAI(人工知能)関連の動向について何度かお伝えしてきましたが、その第4弾として今回も8回にわたってご紹介します。

1回目は、監査にも活用されるAIについてです。

 

これまでプロジェクト管理と日常生活 No.413 『東芝の不正会計にみるプロセス管理の重要性』プロジェクト管理と日常生活 No.422 『東芝の不正会計にみる監査法人の定期検査運用のあり方』で企業の不正会計への対応策についてお伝えしてきました。

そうした中、4月11日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で監査にも活用されるAIについて取り上げていたのでご紹介します。

 

各企業は四半期報告書を作成しますが、これは企業業績を判断するうえで非常に重要ですので、内容が正しいかどうか第三者の証明が必要になります。

それを証明するのが監査法人です。

企業は四半期報告書を作成しますと、監査法人に監査してもらうという義務があります。

監査法人は、内容に不備がなければ適正意見という、言わば“お墨付き”を与えます。

そして、企業はこの“お墨付き”をもらった四半期報告書を金融庁の財務局に提出し、決算会見を開くというのが一般的な流れになります。

 

この監査法人ですが、複雑化する企業の財務データなどをチェックするため、その仕事は多忙を極めており、企業の不正を見逃してしまうこともあるという指摘もあります。

そこで、不正防止につながる技術の開発も進んでいます。

大手監査法人の一つ、監査法人トーマツには3000人以上の公認会計士がおよそ3400社の監査を手掛けています。

監査法人が手がける上場企業の決算調査は年々厳しさを増しており、監査法人トーマツの矢部 誠パートナーは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「企業の活動はどんどんグローバル化していく部分もありますし、海外、国内含めて様々な取引が膨大に発生される。」

「(そうした中で、)会計士も急激に増えるというような見通しも立ちません。」

「多くの領域を人工知能、ないしデータの処理と分析で補助していく。」

「より精度の高い監査、品質の高い監査が実現されて行くという・・・」

 

企業のグローバル化などでチェックしなければいけない書類は膨大になり、人手による監査には限界もあるといいます。

そこでトーマツが導入を始めたのはAIです。

 

実は、これまでの人手による監査は、通常企業が持つ資料の一部を抜粋して使うサンプル調査でした。

これに対し、AIによるデータ分析では全ての資料をチェック出来るようになります。

例えば、売り上げ全体が下落傾向の中で一つの商品だけ突出して売り上げが伸びている場合などに、それをAIが検知して異常があると警告を出すなど、細かいチェックが自動的に出来るのです。

財務データのチェックを自動化することで、公認会計士は経営者などとの対話に時間を使うことが出来るようになります。

数字には表れない経営判断などの問題を見抜く体制も整え易くなるといいます。

矢部パートナーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「企業が重要な経営上の判断をする中において、その背景や合理性の判断をしていくのはまさに会計士が今後も必要とされる領域だと考えております。」

「企業と向き合っていくことで監査人が本来果たせる役割が発揮されていく。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組でも指摘しているように、一般的に監査といっても監査人、あるいは時間的な制約からサンプル調査を行い、全ての関連資料をチェックすることはまずありません。

しかも、企業のグローバル化などでチェックしなければいけない書類は膨大になっているといいます。

こうしたことから、AIの活用により全ての関連資料をチェック出来るようにすることはとても良いことだと思います。

しかも、AIが検知して異常があると警告を出すようになれば、監査の質的な向上も期待出来ます。

このように、監査におけるAIの活用は、監査法人にとっても監査される企業にとってもメリットがあるので、今後とも多くの監査法人によるAIの導入が進められると思います。


 
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