6月12日(月)付けネットニュース(こちらを参照)で2020年には空飛ぶタクシーの試験飛行が開始されるという記事を見つけたのでその要点をご紹介します。
アメリカのライドシェア(相乗り)大手のウーバーテクノロジーズは4月下旬、「空飛ぶタクシー」の開発計画を発表しました。(ウーバーについてはアイデアよもやま話 No.3382 ウーバーによるタクシー革命!を参照)
ウーバーは本気で空飛ぶタクシーを実現しようとしています。
狙いは、ユーザーにより良いモビリティー・サービスを提供するためだといいます。
これまでウーバーは、A地点(出発地)からB地点(目的地)まで移動したいユーザーに対し、一般の人が運転する自動車を配車するサービスを展開してきました。
一方、空飛ぶタクシーを使った新サービスは、顧客をA地点からB地点まで、ほぼ直線に近い最短ルートで届けられる点に最大のメリットがあります。
機体の開発では既にブラジルの旅客機メーカーなどとの提携が決まっており、2020年までに試験飛行を実現させるとしています。
ウーバーだけではありません。
航空機大手の欧州エアバスや、米グーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏が出資するシリコンバレーのベンチャー企業、キティホークなども、空飛ぶクルマ(ただしキティホークは「個人向け飛行機」という位置付け)の開発を目論んでいます。
クルマは基本的に、陸の上でも道路が敷かれている場所でないと走れません。
ですが、空飛ぶクルマは違います。
もちろん、あまりにも空飛ぶクルマの数が増えたら渋滞はすると思いますが、自動運転であれば最大限、回避はできるはずです。
もし近い将来、世界のデフォルトが空飛ぶクルマになるとしたら、今ある以上の道路を地上に造る必要はなくなります。
インフラにかけるコストを大幅に圧縮出来るのです。
日本でこそ、あらゆる地域に道路インフラが整っていますが、世界を見ればそんな地域の方が少ないのです。
ところが、そんな場所にも人は住んでいます。
これまでは歩くか、牛や馬を使わなければ思うように移動できなかった人たちも、空飛ぶタクシーを使えば、いつでも望む場所に行けるようになります。
急病人が出た場合などは特に役に立つはずです。
人の移動だけではありません。
物資の調達も圧倒的に容易になります。
インターネット通販を利用すれば、山岳地だろうと離島だろうとあらゆるモノが手に入ります。
もしかしたら、離島に全く店がなくなっても、誰も困らないかもしれません。
空飛ぶクルマに届けてもらえばいいからです。
以上、記事の一部をご紹介してきました。
それにしても、ウーバーが本気で空飛ぶタクシーを実現しようとしており、2020年までに試験飛行を計画していることには驚きます。
驚きの理由は、ベンチャー企業であるウーバーが究極のモビリティー・サービスを目指して真剣に取り組んでいること、そして2020年までという短期間のうちに試験飛行を計画していることです。
もし、本当に2020年に空飛ぶタクシーの試験飛行が成功し、2025年くらいに実際にサービスの運用が開始されたら、と思うと既存の自動車業界はどうなってしまうのかとても気になります。
また、空飛ぶタクシーが実用化されるということは、自家用車も空飛ぶクルマに徐々に移行することになりそうです。
その際、運転免許がどうなるか心配ですが、自動運転で国からの許可が出れば運転免許が不要でも乗ることが出来ます。
また、空飛ぶタクシーが実際に空を飛べるようになるには十分な落下事故対策が必須です。
そして、この安全対策をクリアするためにはかなりの期間を要すと思われます。
ですから、こうした観点からすると、特に道路網が発達し、建物の密集地域の多い先進国での空飛ぶタクシーの実運用は予想以上に時間がかかると思われます。
一方、交通網の整備されていない途上国においては、道路を整備しなくても、あるいは免許不要で誰でも利用出来る空飛ぶタクシーは素早く普及していくと思われます。
さて、空飛ぶタクシーには、もう一つハードルがあります。
それは、電気自動車(EV)としての制約です。
既に普及しつつあるEVですが、普及の大きなネックはバッテリーのフル充電での走行距離です。
道路を走行するEVですらこうしたネックがあるのに、空飛ぶタクシーのフル充電での飛行距離はどのくらいなのかとても気になります。
ですから、このことが空飛ぶクルマの普及の大きなカギになっていると思います。
現行のEVとは違う、何か画期的な動力源を並行して開発しているのか気になるところです。
ところで、なぜウーバーは空飛ぶクルマを製作し、一般の空飛ぶクルマとして販売するのではなく、タクシーに特化した空飛ぶタクシーとしてサービスを開始するのでしょうか。
その理由について、私なりに考えてみました。
その結果は以下の通りです。
・空飛ぶタクシーのサービスに特化することにより、一切乗客に事故責任が及ばないようにすること
・自動運転による空飛ぶタクシーでは、ウーバーがあらゆる面でタクシー全体の動きをコントロール出来ること
・更に、このことによって安全面の強化を一層し易く出来るようにしたこと
このように、空飛ぶタクシーでの運用実績を積み重ねることによって、運用面、および安全面での十分な成果を元に、タクシー以外の一般的な空飛ぶクルマや宅配サービスなどにも展開していくのではないかと想像されます。
ですから、運輸サービス業界の人手不足問題は、空飛ぶタクシーの成功如何によっては解決される可能性があります。
また、今話題のドローンとの住み分けについては、少量の荷物についてはドローンが、そして大量の荷物は空飛ぶクルマが受け持つというようになるか、あるいは将来的には“空飛ぶxxx”というように統合化されたネーミングになるのではないかとも思われます。
いずれにしても、インターネットやロボット、AIなど先進技術で世界をリードしてきたアメリカが空飛ぶクルマでも先行していることにアメリカのダイナミックな底力を感じます。
日本においてもこうありたいという強い想いを抱いて、それを達成するために真っ向から立ち向かっていくようなベンチャー精神の旺盛な若い人たちの登場を期待したいと思います。
同時に、こうした若い人たちに活動資金を提供する、冒険心の旺盛なベンチャーキャピタルの登場も願いたいです。