2017年07月18日
アイデアよもやま話 No.3758 驚くべき江戸時代の調味料!

5月15日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で驚くべき江戸時代の調味料について取り上げていたのでご紹介します。      

 

番組で紹介されていた、ある家庭の主婦は、がんもどきとインゲンの煮物を作りました。

フライパンに薄茶色の調味料を入れ、味を含ませていきますが、塩や醤油は使いません。

炊飯器にもこれと同じ調味料を入れ、アサリの炊き込みご飯を作りました。

更に、炒め物の味付けにも同じ調味料を入れました。

 

この調味料とは、「煎り酒」です。

「煎り酒」は、まだ醤油が高価だった江戸時代に庶民の間で広く使われていた調味料なのです。

これだけで何でも作れるので、現在でもとても便利だといいます。

370年以上前の1643年刊行の日本最古のレシピ本「料理物語」でも紹介されています。

その材料は、かつお節、梅干し、お酒でとってもシンプルなのです。

 

実は今、江戸時代の万能調味料、「煎り酒」が大人気、4月に専門のレシピ本「江戸のうまみ 「煎り酒」料理帖」(宝島社)も出版されるなど、話題となっています。

江戸の食文化を発信する「銀座・三河屋」では13年前から「煎り酒」を販売、1ヵ月におよそ1万本を売り上げるといいます。

更に、東京都内にある調味料のお店、「茅乃舎」(東京ミッドタウン)でも4年前に商品化し、売れ行きを伸ばしています。

 

この「煎り酒」、なんと自宅でも作れるのです。

教えてくれるのは、江戸料理・文化研究家の車 浮代さんで、江戸料理のレシピ本「江戸おかず」(講談社)などを出版しているエキスパートです。

 

「煎り酒」の材料は、以下の通りです。

日本酒        200ml

梅干し        大1

かつお節1/2パック(1.25g)

塩          少々(2つまみ)

(出来上がり 100ml)

 

そして、作り方は以下の通りです。

・鍋に梅干し、日本酒、塩を入れる

 (鍋は底の狭いものがお勧め 梅干しが日本酒にしっかり浸るため)

・弱火で半分の量になるまで煮詰る

・かつお節を加えて、更に5〜6分煮る

・火からおろし、祖熱を取って丁寧にこす

 

こうして、江戸の万能調味料「煎り酒」の完成です。

その魅力は、醤油の代わりになり、塩分が控えめなところです。

大さじ1杯当りで比べてみると、一般的な醤油が2.6gに対してこうして作った「煎り酒」は0.42gと圧倒的に塩分少な目なのです。

「煎り酒」は少ない塩分でもかつお節のうまみをしっかり感じられるので、醤油感覚で刺身につけても、茹でた野菜でおしたしを作っても、卵かけご飯にたらしてもおいしくいただけるのです。

また、野菜を一晩「煎り酒」に漬けるだけで、「煎り酒マリネ」の出来上がりです。

更に、「煎り酒」はオリーブオイルと相性がいいので、これらを混ぜればサッパリ味のドレッシングに、サラダやカルパッチョに使えてとても便利なのです。

更に、茹でたパスタとキャベツを「煎り酒」ドレッシングとよく混ぜ合わせ、シラス・卵黄・大葉をトッピング、最後に「煎り酒」(小さじ2杯程度)をかけると、素材の風味が引き立つ「しらすとキャベツの和風パスタ」の出来上がりです。

 

なお、「煎り酒」と言っても、アルコール分は飛んでしまうので子どももそのまま食べても問題ないといいます。

 

では、なぜこんなに便利な調味料「煎り酒」が江戸時代に廃れてしまったのでしょうか。

「銀座・三河屋」の神谷 修社長は、番組の中で次のような理由を挙げています。

・保存がきかない

・醤油が関東地区で造られるようになって、安く手に入るようになった

・江戸の町人は肉体労働者が多く、塩分の濃いものが好まれた

 

しかし、塩分が少なく素材を生かす「煎り酒」は近年のヘルシー志向にマッチし、あらためてその魅力が見直されているのだといいます。

 

さて、今人気の江戸時代の調味料は他にもあります。

それは「煮貫(にぬき)」(「煮貫汁」とも言う)です。

「煮貫」とは、みそ仕立ての麺つゆのことで、醤油が普及する前に江戸庶民がうどんやそばを食べる時に使っていました。

「煮貫」は、麺つゆとして意外にもいろんな煮付けにも入れるといいます。

「煮ぬき汁」の材料は以下の通りです。

八丁みそ 80g

かつお節 1/2パック(1.25g)

 水   240ml

砂糖   小さじ1杯分 

(出来上がり 200ml)

 

そして、その作り方は以下の通りです。

・八丁みそを水で溶いたものを弱火にかける

・沸騰する直前にかつお節を加える

・えぐ味が出ないように、このまま混ぜないで弱火で5〜6分煮る

・煮たものをざるでこす

・砂糖を加える(江戸のレシピでは砂糖は入れないが、現代人の好みに合わせて入れる)

 

こうしてしっかりと冷ませば、江戸の調味料「煮貫」の完成です。

そのお勧めの食べ方ですが、車さんは次のようにおっしゃっています。

「「煮貫」は油との相性がいいので、私はよく「煮貫」にツナ缶を混ぜるんです。」

「(煮貫は)日本の出汁文化を生かしたすばらしい万能調味料なので、是非シンプルな料理に使って下さい。」

 

水で薄めた「煮貫」とツナをよく混ぜ合わせたら、それを冷やしたうどんの上からかけます。

みょうが、しょうが、ねぎ、大葉、大根おろし、白ごま(お好みで)などの薬味を載せれば「煮貫ぶっかけツナ味うどん」の完成です。

 

「煮貫」は炒め物にも大活躍です。

豚肉とキャベツを痛めて「煮貫」を絡めるだけで、みその甘い香りが食欲をそそる「豚肉とキャベツの煮貫炒め」の完成です。

 

なお、今回ご紹介した江戸時代の2つ調味料、「煎り酒」と「煮貫」の保存方法の注意点は以下の通りです。

・煮沸消毒した容器に入れる

・冷蔵庫に保存(1週間以内に使う)

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組で紹介された江戸時代の調味料、「煎り酒」と「煮貫」のレシピがそれほど難しくなかったので、試しに「煎り酒」を作ってみました。

そうしたところ、確かにふだん使っている醤油に比べてまろやかな味で新鮮な感じがしました。

そこで卵かけご飯に使ったら、思った以上に美味しくいただくことが出来ました。

ですから、これからも気が向いた時には作ってみたいと思っています。

 

それにしても何がヒントで、江戸時代の人はこうした調味料を発見したのかとても興味が湧いてきました。


 
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