2017年07月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.498 『”映りすぎ社会”のリスク その2 防犯カメラの運用規定の必要性!

4月5日(水)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で“映りすぎ社会”のリスクについて取り上げていました。

そこで、リスク管理の観点から3回にわたってご紹介します。

2回目は、防犯カメラの運用規定の必要性についてです。

 

1回目ではスマホの顔写真が犯罪の決定的証拠となるほど高解像度化が進んでいること、およびピース写真から指紋が盗まれるリスクについてお伝えしましたが、高解像度化が進んでいるのはスマホだけではありません。

街のあちこちで私たちの行動がつぶさに見られているのです。

鮮明な映像から個人の顔を識別する技術など、最新の防犯設備を集めた展示会「セキュリティショー2017」が3月に東京・有明で開催されました。

東京オリンピックを控え、特に注目されたのがスタジアムや空港などの群衆の中から要注意人物を瞬時に探し出せるという監視システムでした。

ブラックリストの顔を登録して、即時に映ったものをリアルタイムで認証するのです。

何時何分にどのカメラの前に現れたか、全ての履歴を検索することが出来るといいます。

 

メーカーによれば、人工知能(AI)を組み合わせることで、事前に登録した指名手配犯だけでなく、群衆の行動を分析して不審者を割り出すことも可能だといいます。

更に、顔が見えなくても容疑者を見つけ出せる全く新しいシステムの開発も進められています。

研究を担っているのは、NASAの研究員でアメリカを拠点に活動する識別技術の専門家、岩下 友美さんです。

ある日、岩下さんは72階建ての超高層ビルの屋上から地上にいる容疑者役の人物を特定る実験を行っていました。

地上300mから撮った映像を分析すると、“犯人と思われる人物”と認識された結果がパソコン上に表示されました。

通りを行き交う人の中から容疑者役の発見に成功しました。

では、どうやって特定出来たのかですが、識別の決め手になっていたのはなんと人の影だといいます。

岩下さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「実は、地面に投影された影がその人の歩き方を投影していることになりますので、その影に対して歩容認証の技術を適用することによって人物認証が出来るようになります。」

 

人の歩く姿、すなわち歩容は一人一人異なり、その人特有の癖を把握出来れば個人を特定出来ます。

その歩く姿を正確に反映しているのが影なのです。

真上からの撮影で手足や腰などの動きがほとんど見えない場合でも影ならはっきり確認出来ます。

映像を特殊なソフトで加工し、シルエットをくっきり浮かび上がらせ、全身の30以上の関節の動きを分析して識別していたのです。

この世界初の“歩容プラス影”認証を飛行船に搭載、雑踏に紛れ込んだテロリストや徘徊する高齢者などを素早く発見出来るシステムを目指しています。

岩下さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「カメラの高解像度化が進みますと、どんどん得られる画像も綺麗になりますので認証性能もどんどん向上していくかと思います。」

「そうすると、より高い所にカメラを付けて、より広範囲のセキュリティ・システムが実現出来る可能性があると思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

防犯カメラの個人認証技術は、迷子や行方不明者、あるいは犯罪者、テロ実行犯などを探すには大変効果的な方法を提供してくれます。

しかも、人の顔の画像がなくても人の影の特徴だけで個人認証が出来るようなところまで個人認証技術は進んでいるのです。

一方、一般の人の行動がガラス張りになりかねないリスクをはらんでいます。

こうしたリスクは個人情報保護法や憲法で保障している基本的人権の尊重に抵触する可能性を秘めています。

 

ですから、こうした違反をもたらすことのないように防犯カメラの運用規定を定めることがとても大切なのです。

こうした規定が定められないままの状況が続けば、個人認証技術の進歩とともに私たちの知らないところで顔写真も含めた様々な個人情報が売買され、私たちの知らないうちに様々なかたちで利用されるようになることは間違いありません。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています