2017年06月26日
アイデアよもやま話 No.3739 最先端のクチコミ戦略、“企業アンバサダー”!

4月4日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で最先端のクチコミ戦略、“企業アンバサダー”について取り上げていたのでご紹介します。

 

日本マクドナルドが開催した4月3日の新メニュー、「グラン」シリーズの発表会では、報道陣に混じり、マクドナルドのファン、120人の姿がありました。

この人たちはスマホを片手に写真を撮ったり、文章を書いたりと、ツイッターやフェイスブックなどのSNSで発信していたのです。

 

今、企業はこうした自社商品のファンを自分の会社のアンバサダー、言わば大使として任命し、積極的にPRしてもらう“アンバサダー戦略”に力を入れています。

企業はアンバサダーに対し、お金を一切支払いませんが、その代わりにこうして発表会に招いたりする様々な特典を提供しています。

新商品をいち早く食べてもらうことも特典の一つです。

この時、アンバサダーは早速SNS上に書き込みます。

こうして情報が拡散していくのです。

日本マクドナルドは自社のメールマガジンに登録し、SNSをよく使うファンを優先的にイベントに招待しています。

今後もこうした一般人のアンバサダーを様々なイベントに招待していく考えです。

日本マクドナルドのコミュニケーション本部の長谷川マネージャーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自信のある商品を提供しておりますので、褒めていただければと。」

「ただ発信しなくても、恐らくお友達とかご家族の方には話もされるでしょうし、そういったところもプラスになるのかなと考えております。」

 

一方、コンビニ大手のセブンイレブンも4月4日に“アンバサダー戦略”を開始しました。

始めたのは、“セブンスイーツアンバサダー”です。

コンビニで販売しているケーキなどを広めるアンバサダーです。

セブンイレブンのホームページからこのアンバサダーに登録することが出来ます。

認定されると、自分専用のページにログインでき、顔写真も変更可能です。

セブンイレブン・ジャパン・販売促進部の宮地 正敏総括マネージャーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「何も無しだとモチベーションが上がりませんから、例えば新商品の事前試食会であるだとか割引クーポンなどを定期的に発信していこうと思っています。」

 

まずはSNSをよく使う若者に、人気のスイーツから“アンバサダー戦略”を始めます。

1年間で20万人の登録を目指すというセブンイレブン、そこには更なる狙いがあります。

宮地統括マネージャーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これから先、もっともっと拡大していって、お客様からの声に基づいたマーケティングで、その次の商品につなげていく、そういったことも将来的に進めていけばと思っています。」

 

こうした企業から依頼を受けて、アンバサダーを募集し、プログラムを運営している会社があります。

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社は、日本マクドナルドやマイクロソフトなど50社以上と契約を結び、20万人以上のアンバサダーを抱えてします。

例えば、うどん専門店の丸亀製麺では、季節限定の新商品「春のあさりうどん」をPRするため、アサリがいくつ入っていたかを消費者にSNSで投稿してもらう企画を実施しました。

個別のアンバサダーがいつどんなメディアに投稿したか、どれだけ拡散してPR効果があったかを独自のシステムで分析します。

社長の上田 怜史さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「アンバサダーがどんな発言をしているのかについては、我々が目でチェックして皆さんが一人一人どんな貢献をしてくれているのかを把握するように努めています。」

 

特にクチコミの影響力のある人には特典が当たり易くなるよう、企業側にフィードバックしています。

“アンバサダー戦略”についての著書もあるアジャイルネディア・ネットワークの取締役、徳力 基彦さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ソーシャルメディアによってユーザー自身がメディア化している。」

「1000人の人たちがアンバサダーとして1人100人ずつ声をかけてくれたら10万人に届くかもしれないっていうのが新しいコミュニケーションのかたちとして見えてきている。」

 

他にも以下のように“アンバサダー戦略”を取り入れている企業があります。

ネッスル:コーヒーサーバーを無料て提供

カルビー:新商品開発に参加

マイクロソフト:コンテンツ制作に参加

 

どうしても企業からの情報発信は一方的になりがちですが、こうしたアンバサダーの本音の発信は消費者も求めているし、マーケティングにも利用出来るので企業にとってのメリットは大きいと見られています。

番組コメンテーターで、クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジストの市川 眞一さんは、次のようにコメントされています。

「スペインのアーリーン ロマノネス伯爵夫人が1991年に「伯爵夫人はスパイ」という自伝的小説を書かれているんですね。」

「その中にウィンザー公爵夫人という親友の方が「第三者による褒め言葉がいつでも最も効果的だ」というフレーズがあるんですね。」

「これは実は“ウィンザー効果”と一部で言われていて、クチコミの効果を示すものなんですね。」

「(第三者によるクチコミの課題について、)2つ課題があって、1つは企業が選定した、ないしは自分で手を挙げたアンバサダーの方が本当に第三者として一般の消費者に認められるかどうかという問題がありますね。」

「それと2つ目には、やはりネガティブな情報も重要になってくると思うんですけども、これも拡散していきますので、これをどうコントロールするかというのも企業にとっては大事な課題になってくると思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

一般のファンによりSNSを通して積極的に自社製品をPRしてもらう“アンバサダー戦略”を利用する企業が増えているということですが、これはまさにネット社会における新たしいマーケティング手法だと思います。

また、アジャイルメディア・ネットワークによる、個別のアンバサダーがいつどんなメディアに投稿したか、どれだけ拡散してPR効果があったかを独自のシステムで分析するサービスは、ネット上だからこそ容易に出来るものです。

アジャイルネディア・ネットワークの取締役、徳力さんがおっしゃっている「ソーシャルメディアによってユーザー自身がメディア化している」という言葉は今後のマーケティングの一つの大きな流れを言い当てていると思います。

そして、こうした流れの中で、人工知能(AI)を駆使した、より詳細な分析が出来るようになるはずです。

その結果、新商品開発にも大きな効果をもたらします。

同時に、個々のアンバサダーの数量的な評価も可能になりますから、優れたクチコミ効果をもたらすアンバサダーには正当な報酬が与えられるようになり、いずれプロのアンバサダーという職業が誕生するかもしれません。

 

 

 

一方、“アンバサダー戦略”はそれを進める企業にとっては、良きにつけ悪しきにつけ瞬く間にクチコミ情報が拡散していくので、自信のある製品を提供しなければ、かえってマイナス効果をもたらすリスクがあることに留意することが求められるのです。


 
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