2017年06月07日
アイデアよもやま話 No.3723 進化するGPSの活用 その1 現在位置を誤差数cmで把握出来る低価格のGPSシステムの登場!

3月6日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)、および6月1日(木)放送のニュース(NHK総合テレビ)で進化するGPSの活用について取り上げていました。そこで、1回目と2回目は「ワールドビジネスサテライト」から、そして3回目はNHKテレビニュースからと、3回にわたってご紹介します。

1回目は、現在位置を誤差数cmで把握出来る低価格のGPSシステムの登場についてです。

 

現在、複数のメーカーが自動運転のトラクターを開発中で、実用化も目前と言われています。

その自動運転のカギとなるのがGPS衛星です。

スマホやカーナビでおなじみのGPS技術は複数の衛星から出た電波を使って現在位置を知るという仕組みです。

 

今、このGPS技術を活用して様々な既存産業を変える挑戦が始まっています。

東京を巡る観光バス、はとバス、バスに乗った外国人観光客が耳に付けているのは観光スポットを紹介する音声案内がGPSと連動して自動で流れるガイドシステム、英語や中国語など8ヵ国に対応しています。

バスが東京タワーに近づくと東京タワーに関するガイドが自動で流れます。

バスにはGPSの受信装置と音声案内が収録された端末、すなわちGPS付きガイドシステム「TOMODACHI」が設置されています。

事前に案内を流す場所を設定しておき、バスがその場所まで来るとGPSが認識し、音声が流れる仕組みです。

GPSはバスの進行方向を認識出来るため、左右の景色に沿ったきめ細やかなガイドが出来ます。

 

はとバスに技術協力をしたのは音声認識技術を開発する株式会社フュートレックです。

GPSによる最大のメリットが交通渋滞に対応したガイドが出来ることです。

フュートレックの事業推進本部の藤井 則次さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(バスが)スムーズに進行した場合には短くガイドをします。」

「それから、渋滞がある時にはガイドを長めにするというような機能が付いているんですね。」

 

はとバスはGPS付き自動ガイドシステム「TOMODACHI」を導入するツアーを今後増やす予定です。

はとバスエージェンシーの商事事業課の小野寺 直治さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「やはりガイドさん、ドライバーさんの手間をかけずに外国人客にガイドを出来るのは大きなメリットになっていると思います。」

 

今、このGPSの活用を様々な分野に広げる取り組みが進んでいます。

2月末、横浜市内で開かれたのは、日本初の民間による宇宙ビジネスのシンポジウム「SPACETIDE 2017」です。

今回のイベントは、内閣府・経済産業省・文部科学省・JAXAなど国が全面的にバックアップしています。

この日、GPSの活用を更に広げる技術を開発したがマゼランシステムズジャパン株式会社(兵庫県尼崎市)の小西 覚さんが登壇し、次のようにおっしゃいました。

「衛星測位、高精度測位を使って自動運転や無人運転しようという量産化の段階に入ってますので・・・」

 

社員20人ほどのマゼランシステムズジャパン株式会社は、トラクターなどの現在位置を誤差数cmで把握出来るGPS受信装置を開発しました。

精度の高い装置は他社も開発していますが、注目すべきは10分の1以下という価格の安さです。

普通のGPSは複数の人工衛星から送られる信号を受信装置で捉えて場所を特定しますが、大気や建物などの影響を受け、数mから10mほどのズレが生じやすくなります。

そこで、マゼランシステムズジャパンが考えたのが近くに簡易的な基準局を設置する方法です。

基準局からも信号を出し、位置を補正することでズレは数cm以内に収まるといいます。

この技術を応用すれば、農業以外にも道路工事などの建設分野やフォークリフトといった物流分野などに活用出来る可能性もあるのです。

 

しかし、高い精度をなぜ安く提供出来るのでしょうか。

実は、受信装置の部品には民生品を使っています。

その分精度が落ちる欠点がありますが、それを補うソフトウエアを独自に開発したのです。

GPS受信装置の基盤の価格は10万円ほどで従来品の10分の1以下といいます。

 

GPSと連動して自動運転する実験用小型車は京都大学と共同で検証を進めています。

実は、こうした車両を自動で真っすぐ走らせるのは難しいといいます。

路面が凸凹だと真っすぐ走らないのです。

そこで、ジャイロセンサーや加速度センサーを使って車両の姿勢などを自動で修正する装置を開発しました。

こうして受信装置やアンテナなどと合わせて数十万円程度の価格を実現しました。

マゼランシステムズジャパンの岸本 信弘社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「非常に多岐に渡る作業が無人化出来る。」

「量産ベースでは恐らく今年が元年。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

はとバスの例にもあるように、GPSによりバスの走行位置が特定出来るようになり、ガイドもその位置に合わせて柔軟に内容を変えていくという自動化が既に図られているのです。

このサービスは、以下の観点から今後とも更に内容の充実が期待出来ます。

・どのはとバスに乗っても、乗客は十分に内容の練られたガイドを聴くことが出来る

・乗客は、交通渋滞などに対応してよりきめ細かなガイドを楽しむことが出来る

・複数の外国語対応により、海外からの観光客も十分にガイドを楽しめる

・自動音声によるガイドによって、これまでのようにガイドさんが多くの観光コースのガイドの内容を憶えなくてもよくなる

 

しかし、一方でこうした自動ガイドにより、既存のガイドさんは職を奪われることになります。

でもこうした流れは、今に始まったことではなく、テクノロジーの進化によりヒトと機械やAI(人工知能)、あるいはロボットとの業務の住み分けが変わっていくのが世の常なのです。

それでも、その分、これまで出来なかったような観光バスの通る道筋のよりきめ細やかなガイドの内容を検討することが出来ると言ったように、これまで出来なかった業務が出来るようになるのです。

 

さて、一般的なGPSは数mから10mほどのズレが生じやすくなるといいますが、現在位置を誤差数cmで把握出来る低価格のGPSシステムが登場してきました。

技術革新がGPSの既存の機能を進化させ、しかも低価格で利用出来るようになり、その結果、新たに様々なビジネスの誕生を可能にするのです。

 

ここで注目すべきは、通常こうした革新的な製品やサービスの誕生はベンチャー企業から生まれ易いのです。

ですから、ベンチャー企業が活動しやすい環境づくり、あるいはベンチャー企業への様々な支援がとても重要なのです。


 
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