2017年05月31日
アイデアよもやま話 No.3717 夢の海中都市 その1 技術的に既に実現可能な海中都市!

3月4日(土)放送の「夢の扉」(BS−TBS)で夢の海中都市について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。

1回目は、技術的に既に実現可能な海中都市についてです。

 

広大な海、地球の面積の7割は海です。

その海の中に人が暮らす新たな都市をつくるというSF映画のようなプロジェクトが進んでいます。

地球温暖化による海面上昇、その危機から人類を救えるかもしれません。

清水建設の海洋未来都市プロジェクトリーダーの竹内 真幸さん(59歳)は海中都市を本気でつくろうとしています。

プロジェクトのもう一つの狙いは、海底に眠る手付かずのエネルギーです。

夢の実現に向け、日本の最新技術が集まりました。

 

大手建設会社の清水建設(東京都中央区)、人類の新たな移住先に海を選んだプロジェクトのリーダーを務めているのが竹内さんです。

温暖化による海面上昇の危機、住む場所を追われる人々を救うため、竹内さんはある構想をまとめました。

それがグリーンフロート構想、水や食料、エネルギーを自給自足しながら10万人が住める海上都市です。(参照:アイデアよもやま話 No.1634 日本を元気にする「グリーンフロート構想」!

 

太平洋に浮かぶキリバス共和国、およそ30年後には水没の恐れのあるこの国を2013年に竹内さんは訪れました。

竹内さんは自らのグリーンフロート構想を現地で伝え歩きました。

そしてアノテ・トン大統領(当時)が強い関心を持ち、実現に向けて動き出しました。

 

夢とは実現させる目標、それが竹内さんのモットーです。

更に竹内さんは海を舞台にした新たな構想を打ち立てました。

海中の未来都市、オーシャンスパイラルです。

海上に少し浮き出た海中都市の入り口、中に入ると海中都市の最上階、直径500mの球体です。

その下にあるのが私たちの暮らす場所です。

オフィスや研究機関も入っています。

直径500mの球体に5000人が居住出来ます。

そして、この球体の海中都市はらせん状の海中トンネルで海底とつながっています。

これは言わばライフラインです。

更に海底の施設では資源の掘削も行われます。

 

ところで、この海中都市は本当に造れるのでしょうか。

実は技術的には既に可能なところまで近づいています。

まず居住空間となる直径500mの球体を海辺のドックで組み立ています。

それを建設場所まで船で曳いていきます。

建設場所に球体を浮かせ、そこから重りをケーブルで下していきます。

海底に到達後、浮力のある球体を沈めるため海底からケーブルを引っ張ります。

これで球体を固定出来るといいます。

構造設計の中島 秀雄さんによれば、100年に1回ぐらいの巨大な台風の時でも震度2ぐらいの揺れに収まるので居住的には問題ないといいます。

 

では、どんなもので造るのでしょうか。

常に海水にさらされる海中都市、普通のコンクリートでは中の鉄筋が簡単に錆びてしまうため使えません。

でも竹内さんは鉄筋を使わず、普通のコンクリートよりも強度のある特殊なコンクリートを見つけました。

それが樹脂コンクリートです。

見た目はいたって普通ですが、作り方が全く違います。

樹脂コンクリートは水の代わりにある樹脂を混ぜて作ります。

それは不飽和ポリエステル樹脂で、使用済ペットボトルを再利用して出来るのです。

この樹脂コンクリートは普通のコンクリートに比べ耐火性が劣るため、これまで建材には不向きとされてきました。

しかし、海の中なら影響はないと竹内さんは考えたのです。

気になるのはその強度ですが、加重テストを行ってみると曲げ強度は普通のコンクリートの5倍以上、鉄筋がなくても強いのです。

更に酸性の温泉に漬けた実験で樹脂コンクリートは劣化しないことが証明されています。

こうして、最適な建材が見つかりました。

 

次なる課題は水圧に耐えられる強度を持つ窓です。

竹内さんは、沖縄美ら海水族館の巨大水槽を見て閃きました。

その水槽はアクリル製でした。

既に試作品が完成、厚さはなんと3m、この厚さが水深500mの水圧にも耐えられるといいます。

それでもクッキリとした透明度ではっきりと見えます。

 

実現に向け、着々と準備が整いつつある海中都市、ところが出来上がった後に深刻な問題が懸念されていました。

どう保守・メンテナンスするかが大きな問題になってきますが、その一つがフジツボといいます。

フジツボは小さな生き物のイメージですが、環境によってはかなり大きくなります。

もし海中都市でフジツボが繁殖したらトラブルを招く危険があります。

それを解決する手段を求め、竹内さんは兵庫県姫路市に向かいました。

株式会社セシルリサーチの社長、山下 桂司さんは35年前からフジツボの生態を研究、そしてその被害を減らす新たな方法を発見したのです。

 

フジツボの幼生は岩などに手の先で付着して、ここは住み易いとなったら本格的に変態が始まります。

ところが、フジツボが付着したところに藍色の波長の光を当てると、微生物、藻類、フジツボ類、そして貝類までほとんど付かないということが分かったのです。

そこで、海中に設置した板に藍色の光を照射すること2ヵ月、すると藍色の光が届いた箇所にはフジツボが付いていません。

実験を繰り返した山下さんはフジツボが特に嫌がる光の波長を特定し、その波長だけを出すLEDを使い、独自の“フジツボ撃退機”を開発しました。

こうしてフジツボから海中都市を守る技術も見つかりました。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

以前ご紹介したグリーンフロート構想による太平洋上の海上都市、そして今回ご紹介した海中都市はいずれも今すぐに実現しなければ人類の存続に影響を与えるものではないと思います。

しかし、地球温暖化が進み、何十年後かに地球上の多くの地域が人類が住みにくい状況になった場合を想定すると、その対応策の有力候補の一つとして海中都市は現実味を帯びてきます。

そして、今回ご紹介したように技術的には既に実現可能になっているということにはほっとします。

 

更には、遠い将来、地球そのものが人類が住めないような状況になった場合を想定すると、海上都市、あるいは海中都市に限らず、持続可能な住環境を今のうちに構築しておけば、地球外、すなわち宇宙空間、あるいは月や火星など他の天体への移住をスムーズに出来るようになるのです。

そういう意味で、竹内さんたちの進めているプロジェクトは、ちょっと大げさにいえば人類の存続にとってとても重要な位置を占めているのです


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています