2017年05月30日
アイデアよもやま話 No.3716 難聴者も聞きやすい“曲面スピーカー”!

3月3日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で難聴者も聞きやすいスピーカーについて取り上げていたのでご紹介します。

 

2013年10月創業の株式会社サウンドファン(東京・浅草橋)が開発したのは難聴者の方も聞きやすい、そして健常者の方の場合も離れた距離でも明瞭度の高いのが特徴のスピーカーです。

その秘密はスピーカーの曲面にあるといいます。

この曲げる技術を応用したスピーカーが白と黒の「ミライスピーカー・カーヴィー」(商品名)です。

なお、WEB個人向け価格は22万円(税別)です。

 

さて、このスピーカーの原理について説明出来る方はまだいないといいます。

しかし、難聴の方およそ500人の8割の方が良く聞こえると答えた実証実験の結果が出ています。

結果が原理よりも先に出ているスピーカーなのです。

更に曲げる技術を応用して薄いフィルムで作ったスピーカーや遠くまで声が届くハンディメガホンなど、次々に開発を進めています。

サウンドファンの技術者、坂本 良雄さん(71歳)は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「あんまりいい音じゃないんだけれども難聴者の方にはよく聞こえる。」

「なんでかという説明のつかないところが面白いっていう。」

 

なお、坂本さんは大手のオーディオメーカーで退職するまでスピーカー一筋で高音質を追求してこられました。

しかし、難聴者の方に“曲面スピーカー”を聞いてもらったところ、高音質とは言えないけれどもこの方がよく聞こえるということでした。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

なお、3月18日(土)放送の「夢の鍵」(BS−TBS)でも同様のテーマを取り上げていたので以下に補足します。

従来のスピーカーは一点の振動版で音を出しますが、“曲面スピーカー”は曲面全体で音を出すのです。

ですから、オルゴールを曲げた紙や円筒状のゴミ箱に当てると音が大きく聞こえるようになるのです。

ある程度硬くて軽ければ何でもいいといいます。

 

なお、この“曲面スピーカー”は羽田空港で既に使われています。

混雑で騒がしい中、アナウンスが聞き取りにくい状況でも乗り遅れないように、日本航空の出発ロビーでは“曲面スピーカー”で最終案内をしているのです。

 

また、りそな銀行の東京中央支店でも窓口カウンターに“曲面スピーカー”が置かれています。

受付番号の呼び出しに使われているのです。

というのは、窓口の呼びかけが聞こえず、困っているお年寄りが多かったからです。

 

さて、誰でもどこでも聞こえやすい画期的なスピーカーを開発したサウンドファンの社長、佐藤 和則さん(60歳)ですが、音響の仕事は今回が初めてといいます。

でも、音楽は大好き、高校でドラムを始め、今も週に一度行きつけのお店で演奏しています。

とは言え、これまでの仕事はスピーカー開発とは何の接点もありませんでした。

大手メーカーの営業マンとして働き、その後独立し、企業コンサルタントに転身、転機となったのは4年前に聞いた驚くべき話でした。

名古屋学院大学の増田 喜治教授から、「古い蓄音機の方がお年寄りには聞こえやすいんだよ」と言われたのです。

開発のヒントとなったのは蓄音機の巨大なラッパの曲がりでした。

このことが不思議なスピーカーを生むきっかけになったのです。

 

佐藤さんはアイデアをかたちにしようと、音響のプロである元JVCケンウッドの宮原 信弘さん(71歳)に相談しました。

ベテラン技術者、宮原さんはCDプレーヤーやスピーカーなどの音響機器を開発、長年質の高い音を追い求めてきました。

ところが、佐藤さんの話を聞き、考えが変わったといいます。

佐藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「難聴者って今まで視野になかったところが、こういうところで発想を変えられたっていうところかね。」

「電気的なところからもっと人間の感覚に素直に届くようなスピーカーっていうのはあってもいいんじゃないかなと。」

 

こうして蓄音機の曲面を取り入れ、難聴者でも聞きやすいスピーカーの開発が始まったのです。

 

どうしても完成させたい、佐藤さんには開発を急ぐ理由がありました。

父親の次男さん(86歳)が脳梗塞の影響で思うように身体を動かせないことに加え、老人性の難聴で耳が遠く、ふさぎ込むようになっていたのです。

父親と同じような耳の不自由な高齢者に音を届けたい、これが佐藤さんの原動力なのです。

開発を始めて3ヵ月、試作機が完成、父親の耳にそれまで聞こえなかった音が届きました。

これで自信を深めた佐藤さんは、製品化を目指して2013年10月に会社を設立したというわけです。

ところが、そこに“原理が分からない”という壁が立はだかったのです。

そこで佐藤さんが取った秘策は、ちゃんとした実験データを取るために、浅草でおばあちゃんをナンパしたこともあったといいます。

文献がないなら自らデータを取る、そう決めた佐藤さんは怪しまれないように白衣を着て浅草に出没、お年寄りに声をかけ続けました。

更に、大学などにも協力を求め、500人にも及ぶ難聴者のデータを収集、その結果およそ8割の人が聞こえやすいと答えたのです。

地道な努力が実り、2015年ミライスピーカーという商品名で製品化されました。

今、老人福祉施設「福栄会」でも使われています。

よく音が聞こえる、とこちらの施設の入所者の評判も上々のようです。

 

こうして、“曲面スピーカー”は革新的技術と評価され、ビジネス・イノベーション・アワード2015など次々と賞を受賞しています。

佐藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「難聴者も健常者も分け隔てなく今まで以上に聞こえやすい環境を公共の場所に作りたいっていうのが今の夢ですね。」

 

誰もが聞こえやすい社会にしたい、その夢に向け、3月3日、耳の日に佐藤さんはより聞きやすく改良を加えた新機種を発表しました。

 

以上、最初にご紹介した番組の内容を補足してきました。

 

スピーカーは平面であるというのが従来の常識でした。

そうした中、なぜ“曲面スピーカー”を思い付いたのかとても興味がありましたが、そのきっかけが蓄音機の巨大なラッパの曲がりにあったという事実は意外でした。

そもそも名古屋学院大学の増田教授が、古い蓄音機の方がお年寄りには聞こえやすいと気付かなければ、そして佐藤さんがこの話を聞くことがなければ、“曲面スピーカー”の誕生にはつながらなかったのです。

物事に対する好奇心や感受性、そして人との出会いの重要性をあらためて感じます。

 

また、“曲面スピーカー”がなぜ難聴者の方にも聴きやすいのかその原理が解明されないというのもとても面白いと思います。

何事においても原理が解明されていないものは信用出来ない、あるいは従来の科学の常識に反した現象はあり得ないというような先入観を持つことは新しい発見の大きな妨げになります。

今回ご紹介した“曲面スピーカー”のように、世の中には理屈では説明出来なくても有用なモノは沢山あるのです。

ですから、従来の常識に囚われず、素直に現実を受け入れるという素直な気持ちになること、そして既存の常識に囚われている周りの人たちの反対にめげない強い気持ちを持つことが新たな発明にとってとても大切なのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています