2017年05月20日
プロジェクト管理と日常生活 No.489 『アメリカで広がる”ネットいじめ”対策アプリ!』

ネット社会化に伴うSNSの普及する中で“ネットいじめ”が社会問題化しています。

そうした中、4月28日(金)放送のニュース(NHK総合テレビ)でアメリカで広がる”ネットいじめ”対策アプリについて取り上げていたのでご紹介します。

 

子どもたちの間でもスマホなどの利用が急速に広がる中、深刻になっているのがSNSなどを通じた“ネットいじめ”です。

アメリカではおよそ7%の子どもたちが“ネットいじめ”を経験しているという統計もあり、大きな社会問題になっています。

 

こうした中、子どもの“ネットいじめ”をITを活用することで防ごうという取り組みがアメリカで広がり始めています。

インターネット上に書き込まれる暴言、ツイッターなどに投稿された中傷する書き込みや写真は瞬く間に拡散し、簡単に消し去ることが出来ません。

 

“ネットいじめ”を苦にした子どもたちの自殺が相次ぎ、深刻な影を落とす中、立ち上がった人がいます。

アメリカのIT企業のCEO、トッド・ショベルさんです。

きっかけは、ラジオで聞いたあるニュースでした。

ショベルさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ある少女が“ネットいじめ”に2年も苦しんだ末、自ら命を絶ったのです。」

「部屋の隅で一人きりで苦しむ姿を思うと、いてもたってもいられなくなりました。」

 

スマホを使ったいじめにはスマホで対抗するしかないと、ショベルさんは“ネットいじめ”対策の専用アプリを開発しました。

“ネットいじめ”の被害者や“ネットいじめ”を目撃した生徒が“ネットいじめ”を匿名で学校に通報出来る仕組みです。

ちなみに、証拠写真を添付することも出来るといいます。

 

ある学校では3年前にこのアプリを導入しました。

通報は直接校長に届き、閉ざされたSNS上でのいじめも把握出来るようになりました。

校長は、通報をもとにアプリ上のメッセージ機能を使って、いじめの内容を直接生徒から聞き取ります。

情報はスクールカウンセラーらとも共有し、いじめた側の生徒指導に役立てることが出来、アプリの導入後、いじめの件数は半数以下になったといいます。

こちらの校長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「問題が起きてから対応するのではなく、起こり得る問題を防ぐことが出来るのです。」

 

一方、ある生徒は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「名前も明かさなくていいし、学校が把握してくれるだけで安心だと思います。」

 

このアプリは全米で約6000校が導入し、日本にも広がっています。

奈良市にある小学校では多くの児童がインターネットを利用するため、アプリ導入に踏み切りました。

保護者がスマホにアプリをダウンロードし、子どもから聞き取ったいじめの被害や情報を匿名で学校側に通報出来るようにしました。

校長は、このアプリはいじめの抑止力にもなり、非常に優れたシステムと評価しており、保護者の間にも期待が広がっているようです。

 

急速に広がる子どもの“ネットいじめ”、その被害を防ぐ手段としてITの活用が広がっています。

アメリカではITを使ったこうした取り組みが学校だけでなく企業の間にも広がっていて、ハラスメントに悩む社員の対策などにも生かされているということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

いじめは今に始まったことではなく、以前から社会問題化されていました。

ただ、以前と違うのはSNSなどの普及により、気軽に書き込み出来るようになったことが問題をより大きくしていると思われます。

 

そもそもいじめはなぜ起きるのでしょうか。

いじめをする側からすれば、何らかの不満のはけ口を求めていること、あるいはいじめをする対象者に対して気に入らないところがあるというようなことが背景にあると思います。

一方、いじめを受ける側からすれば、いじめを受けてもほとんど抵抗しないようなおとなしいタイプの人物像がイメージされます。

いじめをする側は、自分よりも弱い相手に対していじめをすることが一般的だからです。

 

いずれにしても、いじめの有無は、いじめをしようとする側を少しでも減らすこと、およびいじめを受ける側が“自分はいじめを受けている”と実感しないような状況を作り出せるかどうかにかかっていると思います。

ですから、いじめをなくすためには、以下のようなリスク対応策が考えられます。

・学校教育の一環としていじめについてきちんと児童や生徒を指導すること

・児童や生徒、一人一人が日頃どんな不満や悩みを抱えているかを把握し、そうした問題を解消してあげること

 

同時に、実際にいじめに遭った場合のコンティンジェンシープランとしては以下のようなことが考えられます。

・多少のいじめに遭っても、それを跳ね返せるくらいの対応力を持った児童や生徒を養うこと

・いじめが起きた場合に備えて、いじめの事実が早期に学校側やいじめの双方の家庭に伝わり、適切にいじめを止めさせられるような仕組みを構築しておくこと

 

更に、いじめが起きた場合、その都度再発防止策を検討することがいじめ対策として学校側に求められるのです。

勿論、こうした場合、児童や生徒の家族も巻き込んだ枠組みで検討することが必要です。

 

さて、こうしてリスク対応策の観点からいじめ対策を考えてくると、今回ご紹介したアプリはいじめが表面化した場合のコンティンジェンシープランの一つと位置付けられます。

また、このアプリにいじめに限らず児童や生徒の悩みも受付けられるようなサービスを追加することによって、更にいじめそのものを防止出来る可能性が高まると思われます。

 

同時に、学校以外の企業などの組織においても、こうしたアプリの導入によってハラスメントに悩む社員を減らすことが出来るはずです。

また、こうしたアプリの導入そのものがいじめのリスク対応策になると期待出来るのです。

 

いじめは、被害に遭った児童や生徒を不登校にさせてしまったり、あるいは被害に遭った社員をうつ病や通勤拒否にさせてしまったり、最悪の場合には自殺にまで追い込んでしまうリスクをはらんでいます。

ですから、こうした一連のいじめ対策を決しておろそかにしてはならないのです。


 
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