2月14日(火)放送のテレビニュース(NHK総合テレビ)で女性だけの農業法人について取り上げていたのでご紹介します。
社長と従業員が全員女性、都合に合わせて勤務する曜日も時間も自由に選択出来るというユニークな農業法人が昨年大分県に設立されました。
1年目から黒字も見込める勢いだという農業法人の秘密について番組が迫りました。
大分県国東(クニサキ)市の山間にある農業用ハウス、栽培されているのはリーフレタスです。
養分を含んだ水だけで育てる水耕栽培で生産されています。
土で栽培された場合、収穫は通常年2回ですが、温度や養分の管理をコンピューターで行うこのハウスでは毎月収穫することが出来ます。
去年7月に操業を始めたこの農業法人、社長と従業員合わせて14人は全員女性です。
年代は20代から60代で、このうち6人は子育てをしています。
社長の平山 亜美さん(28歳)はおよそ1億円かけて農業用ハウスを建設、その半分は国からの補助金で賄いました。
シングルマザーの平山さんが会社を立ち上げたきっかけの一つは妊娠・出産でした。
県内の大学を卒業後、化粧品販売会社で働いていましたが、仕事と育児の両立は難しいと考え、退職しました。
その頃農家の知り合いから紹介されたリーフレタスの水耕栽培に関心を持ちました。
自らの手で女性が働き易い職場を作ろうと、市内の他の4人の女性からも出資を募り、会社を立ち上げました。
平山さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「新しい風を農業にということで女性だけで立ち上げたら面白いんじゃないかということで、女性が集まってこういった会社を立ち上げることになりました。」
このハウスで生産されるリーフレタスの商品名は「やさいまま」、女性だけで生産していることをPRしようと名付けました。
水耕栽培は除草の必要が無いうえ、しゃがまずに収穫出来るため、身体に負担がかかりません。
主な作業は苗の移し替えとパック詰めで柔軟に勤務時間を設定することが出来ます。
ほとんどを占めるパート従業員の勤務は週3日か2日、時間は1日3時間から8時間の4つのパターンの中から選ぶことが出来、原則希望が優先されます。
ですから、子どもが熱を出して急きょ退勤する従業員が出るようなことがあっても、作業は他のメンバーが協力してカバー出来ます。
平山さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「子育てしながら仕事をする苦労を一度味わっている方が多いので、その苦労を助け合いながら出来るところは女性ならではで働いている職場だからこそ出来ることではないかなと思います。」
現在の出荷量は首都圏向けを中心に1日約2500パックといいます。
女性だけの農業法人をPRする戦略が効を奏し、1年目の売上高は採算ラインの年間5000万円前後に達する見通しです。
平山さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「いろいろな女性の視点でいろいろな商品企画をしていって、女性が今まで参入してこなかった業種なので女性でも働き易い農業を広めていきたいですね。」
女性が働き易い職場を農業の分野で実現しようという平山さんの挑戦は、女性が活躍する新たなモデルとなるか注目されます。
なお、大分県によりますと、ハウスを使った水耕栽培は安定した生産が見込める一方、多額の初期投資が必要で、事前に一定の販路を確保しておく必要があるということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
従業員が子育て中も含めた主婦など女性だけの農業法人だからこそ、それぞれの従業員の置かれた立場にきめ細かく対応した労働環境を作ることが出来、その結果従業員は無理なく働くことが出来ていると思います。
また、子育て中でも無理なく働けることから、従業員のモラルも高いと思われます。
一方、こうした農業法人の誕生の背景には、以前ご紹介した植物工場というコンセプトが大いに貢献しています。
確かに初期投資は高額ですが、以下のようなメリットがあるからです。
・ハウス栽培、およびLED照明の導入により、天候などに依存することなく、生産量が一定していること
・コンピューターによる温度や養分の管理により、土で栽培し場合に比べて収穫量が大幅に増えること
・作業が比較的単純で、しかも作業の負担が少ないことから、高齢者でも従事し易いこと
こうした女性だけの農業法人が1年目から黒字も見込めるという状況は、今後様々な立場に置かれた女性の社会進出の可能性を広げる一つの素晴らしいモデルだと思います。