2月9日(木)放送の「おやよう日本」(NHK総合テレビ)で故人を偲ぶ3D人形について取り上げていたのでご紹介します。
3Dプリンターの技術が発展する中で思い出の写真をもとに、家族の精巧な人形を作る人が増えています。
亡き家族の人形を製作するのは、3Dプリンターで商品サンプルやフィギュアを作っている株式会社ロイスエンタテインメント(大阪)です。
最初に依頼を受けたのは3年前、11歳の娘を亡くした父親からでした。
当初は作ることを迷いましたが、完成した時の父親の反応が忘れられないといいます。
古荘
光一社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「本当に娘がよみがえったかのような表現をされていたので、人形がそういう力を与えるんだというところで初めての気付きもありました。」
面影を忠実に再現するため、写真だけでは分からない特徴を家族から聞き取り、2ヵ月をかけて製作します。
これまでに製作したのは100体以上、共感する人が静かに広がり続けています。
昨年夫を69歳でがんで亡くした、奈良県桜井に住む女性は夫が亡くなって半年ほどは仲の良さそうな夫婦を見るのは辛いと、家に引きこもりがちでした。
しかし、人形に語りかけながら過ごすうちに気持ちが変わってきたといい、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「“裏の草が伸びてんけどどうしよう”とか、そういう日常会話をずっとしているうちにだんだん亡くなったことも納得するようになってくるし、人形にしゃべることによって割と早く一人の生活に慣れたのかなと。」
進行するがんのため死期が迫る中、人形を作ろうと言い出したのは亡くなった夫の方からでした。
妻への想いについて、この夫が最期を過ごしたホスピスの看護師は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(人形に込めた想いについて、)若くして病気になって、これからという時に自分はいなくなるけれど、フィギュア(人形)を作って、それを見て、奥さんに前を向いて辛いこともあったけど楽しいこともあったなというふうに前を向いて欲しいという想いで作られたっておっしゃっていました。」
「奥さんのことをとても想ってくれていましたよ。」
亡き家族との新たな絆を紡ぎ出す人形、少しずつ前を向くための力を与えてくれています。
番組の記者は、次のようにおっしゃっています。
「(人形を)作るきっかけや理由は、家族ごとに、そして亡くなった家族との関係によっても様々です。」
「大阪の会社(ロイスエンタテインメント)に寄せられた依頼のうちおよそ8割が子どもを亡くした親からのものでした。」
「このことについて専門家は喪失感の強い遺族にとって人形が果たす役割は小さくないとしています。」
遺族の心のケアに詳しい関西学院大学の坂口
幸弘教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「お子さんを亡くされたような場合ですとか突然死の場合は、落ち込みが大きいことがいろんな研究で報告されています。」
「その死を自分なりにどう受け止めていくのか、存在を感じることによってある意味そこを気持ちの拠り所にしながら自分の人生を考えることが出来るのかなというふうに思います。」
一方、こうした人形を作ることで、かえって悲しみを思い出して辛くなってしまうリスクが気になります。
これについて、坂口教授はそのリスクが無いとは言えないとしながらも、夫を亡くした女性のように人形に語りかけ、家族のいない日常に時間をかけて適用しながら家族が亡くなった事実を受け止めていく、それが喪失感を癒していくための大切なプロセスだとしています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
確かに2次元の写真よりも3D人形の方がより亡き人のイメージがはっきりして大切な人を亡くした喪失感が和らぎ、新しい生活へと目を向けるうえで役立つと思います。
さて、将来的にはそれぞれの人がAI(人工知能)やロボットと身近に接する中でその人の考え方などを記憶し、あるいは脳の記憶域からその人の記憶を取り出したりなどして、その人が亡くなった後もその記憶や考え方を詳細に残すことが可能になるはずです。
こうした技術と3D人形、あるいは亡くなった人そっくりのアンドロイドを組み合わせることによって、私たちは永遠の命を手に入れる時代を迎えることになると想像出来ます。
こうして考えを進めていくと、私たちの寿命の定義も変わってくると思われます。