2月2日(木)放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)で“肥満”と“飢餓”を解消する日本発のソーシャルビジネスについて取り上げていたので3回にわたってご紹介します。
3回目は、海外にも事業展開し始めたTFTについてです。
世界的な“飢餓”と“肥満”という食の不均衡を解決するために立ち上がったのが、現在その代表である小暮
真久さん(44歳)が立ち上げたNPO法人のTFT(TABLE FOR TWO 二人のための食卓)です。
前々回、前回と寄付金による開発途上国の学校給食支援におけるTFTの活動、そして国内における新規活動についてご紹介しましたが、TFTは海外にも事業展開し始めています。
TFTの活動の場は、アメリカにも出て来ています。
この世界一の経済大国でも給食の支援を行っています。
アメリカで深刻になっているのが肥満の問題です。
実に成人の36.5%がBMI130以上の肥満といいます。
子どもも例外ではありません。
その一因は“貧困”にあるといいます。
ニューヨーク郊外の低所得者層が暮らす集合住宅に暮らしているある家族では、食事のほとんどは冷凍食品だといいます。
野菜が健康に良いことは分かっていても値段が高いので、限られた生活費の中で野菜を買うことが出来ないのです。
アメリカでは貧富の格差とともに子どもの肥満の問題もふくらんでいます。
ニューヨークのハーレム地区、この貧しいエリアにある公立小学校が次なる舞台です。
ここでTFTは支援に動き、肥満につながる給食の改革に取り組んでいます。
アメリカの貧しい地域にある学校給食は全額税金で賄われています。
コストを抑えているため、栄養バランスは二の次というのが現状です。
しかし、この学校はTFT USA(TABLE FOR
TWO USA)の支援によって添加物を使わないなど、厳しい基準を持つ給食会社に切り替えることが出来ました。
ヘルシー給食に変えるのにかかる費用は1食25セント、アメリカで使うお金はアメリカの企業から集めた寄付金です。
この小学校の校長、グレート・ガリーンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「生徒たちは以前より授業に集中出来るようになりました。」
では、アメリカではどのように寄付金を集めているのでしょうか。
全米で約400店舗展開している健康志向の食品スーパー、ホールフーズマーケットの一画には、TFTと寿司チェーン「ゲンジ」が共同開発した「ハッピー弁当」が置かれています。
弁当のラベルにはTFTのロゴが表示されています。
この商品の代金から25セントが寄付としてアメリカの学校給食に回ります。
中身は枝豆入りのいなりとトロサーモン、酢飯は玄米でミネラル豊富なスーパーフードも入っています。
ちなみに、価格は12.49ドル(約1400円)です。
アメリカ常駐スタッフでTFT USA代表の上島 真弓さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「アメリカは社員食堂よりお店とかレストランとか食品企業でTFTを導入する方がマッチしているんですね。」
「まだまだ支援を必要とする子どもはアメリカには沢山いますんで、そういう意味で拡大していく必要があるかなと思っています。」
このスーパーでの試食販売も好評のようで、上島さんはこの弁当プロジェクトを足掛かりにアメリカでの給食支援をまだまだ広げるつもりです。
こうしたTFT USAの動きについて、TFT代表の小暮さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(NPOの本場、アメリカで成功したいと思わないかという問いに対して、)あります。」
「日本のNPOでまだアメリカで勝ったところはないんですね。」
「我々はそこになりたいという想いはすごくあって、日本人の良さを前面に出して、もっと特徴付けないと勝てないなっていうんで、やり始めてから今随分成長がまた出てきた感じかな。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
TFTによるアメリカでの事業展開について、番組を通して以下の2つのポイントがあると思います。
・地産地消
アメリカでのヘルシー給食にかかる費用はアメリカの企業から集めた寄付金で行うこと
・その国の事情に合わせた事業展開
アメリカでは社員食堂ではなくお店やレストランなど食品企業でのTFTの導入を進めること
この基本方針はアメリカ以外の海外展開においても適用出来ると思います。
TFTには、日本発の独自の考え方を通して、今後とも寄付を受ける側のみならず寄付をする側にとってもメリットのあるやり方で世界展開をしていただきたいと思います。
さて、ここで思い出されるのはアイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え!でもお伝えした近江商人の知恵、三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)という考え方、そしてWinWinという言葉です。
関係者全員にメリットがあれば自ずと事業は順調に進むことは間違いないのです。
ここまで書いてきて思うのは、寄付の受け手が開発途上国やアメリカなど諸外国だけでなく、国内にも目を向けた活動の展開というお願いです。
支援の対象としては、例えば貧困家庭の子どもが挙げられます。