2017年04月12日
アイデアよもやま話 No.3675 働き方改革に思うこと その2 参考にすべきドイツの生産性の高さ!

今、政府は労働環境を改善すべく、働き方改革を進めております。

そこで、この働き方改革における私の思うところについて4回にわたってご紹介します。

2回目は、参考にすべきドイツの生産性の高さについてです。

 

2月1日(水)放送の「国際報道2017」(NHKBS1)でドイツの短時間労働、および生産性の高さの秘密について取り上げていたのでご紹介します

 

昨年12月、日本社会に大きな衝撃を与えた大手広告会社、電通の過労死の問題(参照:アイデアよもやま話 No.3527 広告大手の若手女子社員自殺報道に接して!)、このニュースは海を越えヨーロッパでも大きく取り上げられました。

 

日本で今大きな社会問題になっている過労死、電通の問題は海外でも“Karoshi”と表現され、繰り返し報道されています。

こうした中、この問題と無縁とされているのが労働先進国のドイツです。

ワークライフバランスのお手本を示すドイツ、その働き方の秘訣とはどんなものでしょうか。

 

以下は日本とドイツの働き方に関する比較です。

    年間労働時間(*1) 労働時間当たりの

GDP(*2) 

日本  1729時間   39.45ドル

ドイツ 1366時間   58.98ドル

 

*1 OECD 2014年調べ

*2 OECD 2015年調べ

 

こうして比べてみると、年間労働時間でドイツは20%も日本に比べて短く、一方で労働時間当たりのGDP(国内総生産)では1.5倍も高いのです。

つまりドイツは日本よりも短い時間でより大きな成果を出しているということなのです。

ドイツの人たちはどんな働き方をしているのでしょうか。

 

キュンツェルザウにある空調設備の大手部品メーカーでは、フレックスタイム制度を取り入れており、朝7時には既に多くの従業員が働き始めています。

このメーカーの従業員は約3500人で、1970年代から働き易い環境の整備を段階的に進めてきました。

そのためにまず進めたのが会議時間の削減でした。

担当者間の打ち合わせは必要最小限の人数で立ったまま行います。

大きな裁量を与えることで意思決定のスピードを大幅に向上させました。

更に働き易さを高めているのが労働時間貯蓄制度です。

例えば2時間残業した場合、2時間分の口座が貯まり、別の日に2時間分早く仕事を切り上げることが出来ます。

言わば銀行口座のような制度です。

そして口座に残業が貯まってくると、上司に「もう少しで上限だ」と警告されるのです。

なお、最近では貯蓄した残業時間を有給休暇に振り替えられる企業も増えています。

 

こうした働き方を維持するのに欠かせないのが行政の厳しい指導です。

労働当局は会社が提出したタイムカードを1枚ずつチェックし、悪質な違反を見つければ「労働時間法」により経営側に最高で180万円余りの罰金や1年間の禁固刑を科します。

法律違反する企業には優秀な人材が集まらなくなるため、労働環境の整備が進んでいるといいます。

 

さて、ドイツでは年間最低24日の有給休暇が保障されていますが、こちらのメーカーでは30日の有給休暇を認めています。

こうした多くの休暇によりスイッチをオフにしてリフレッシュし、充電した後は仕事に戻ってしっかり働くと、男性従業員の一人、ウーベ・マルティンさん(32歳)は番組の中でおっしゃっています。

 

労働環境の整備は会社の業績にも好影響をもたらしています。

苦戦した年もありましたが、この10年ほどで売上は2倍に伸びました。

会社側は、“私生活の充実こそが仕事の生産性を高めるカギ”だと考えています。

この会社の労働管理担当者は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「健康管理だけではなく、従業員に何か問題が生じた時には支援しています。」

「何より社員に満足して仕事をしてもらうことが会社にとって大切だと考えています。」

 

労働先進国、ドイツの働き方は私たちに学べるところがありそうです。

番組の取材によれば、取材した企業が特別なのではなく、ドイツでは社会全体がこうした短時間労働と高い生産性を実現しているといいます。

ドイツでは勤務時間内に仕事を終えるのは当たり前です。

残業が多いのに成果が少ない社員は、仕事を片付けられない無能な人として評価が下がってしまいます。

残業すれば手当も出ますが、評価が下がることの方が出世にも影響し、マイナスが大きいのです。

ドイツで働く人を見ると、昼食もなるべく早く済ませて仕事を一気にやる集中力が高いように感じるといいます。

また、残業によって社員の健康を害すれば、管理職側の責任も厳しく取られるので労働時間の厳守が根付いていると見られます。

更に経済が好調なドイツは、EUの主要国で最も失業率が低く、優秀な人材が不足しています。

企業は人材確保のためにも待遇を改善する必要に迫られているのです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、ドイツの生産性の高さのヒミツについて以下にまとめてみました。

・会議時間の削減

・大きな裁量権の付与(意思決定スピードの大幅な向上が狙い

・労働時間貯蓄制度

・厳格な労働時間の管理

・行政の厳しい指導

・大企業、中小企業に係わらず基本給が同じ

・充実した有給休暇

私生活の充実こそが仕事の生産性を高めるカギ

 

こうしてまとめてみると、行政、企業がそれぞれの立場で労働環境をより良くするためにやるべきことをしっかりと実施しているということです。

日本の企業も会議時間の削減やノー残業ディの導入などに取り組んでいます。

しかし、数字で見る限り、まだまだドイツに比べて働き過ぎであり、生産性も低いようです。

 

ここで思い出されるのは、日本の企業、あるいは日本という国の逆境への高い対応力です。

それはオイルショックの時の自動車メーカーのアメリカの排気ガス規制を世界に先駆けて乗り越えた実績、そして明治維新の時に文明開化を進めた政府のリーダーシップ、および戦後の奇跡的な経済復興を成し遂げた政府、および企業の実績が物語っています。

 

ということで、現政権には働き方改革を進めるにあたり、是非これからの日本のあるべきライフスタイルのイメージを明確にし、その方向性に沿って自ら高いハードルを掲げ、官民一体となって改革を進める機運を高めて邁進して欲しいと願います。

今の日本に無くてドイツにあるのは、こうした理念とそれを成し遂げる実行力だと思います。


 
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