2017年03月20日
アイデアよもやま話 No.3655 肺炎のメカニズムと予防法!

つい先日まで私は風邪をこじらせて肺炎になってしまい、ほとんど外出出来ない状態でした。

その間、咳が夜も止まらず、とても苦しい思いをしました。

そうした中1月25日(水)放送の「ガッテン!」(NHK総合テレビ)で肺炎をテーマに取り上げていたのでご紹介します。

 

今、肺炎にかかる人が急増、年間の死者数は脳卒中を抜き12万3千人、日本人の3大死因の一つで1位のがん、2位の心臓病に次いで3位に浮上しています。

 

そもそも肺炎の原因は何かですが、肺炎球菌が肺炎の原因菌の中で感染率・致死率が最も高いといいます。

最大の特徴は周りに付いているもじゃもじゃした毛のような膜、バリアです。

免疫細胞の好中球は大腸菌などを見つけた場合、食べてくれます。

ところが肺炎球菌の場合は、バリアがあるために好中球は悪いものと気付かずに素通りしてしまうのです。

そうすると肺炎球菌は増殖し放題でどんどん増えていき、私たちの身体で肺炎を起こしてしまいます。

 

実は以前、肺炎球菌は私たちの暮らしのいたるところに生存していました。

ところが今はたった1ヵ所にしかいないといいます。

一説によると、肺炎球菌は太古の昔には空気中などに存在していたと考えられるのです。

しかし、暑かったり寒かったりと肺炎球菌にとっては住みにくい場所でした。

そこで肺炎球菌は1年中気温と湿度が一定の場所を見つけました。

それは人の鼻の奥の咽頭(いんとう)と呼ばれる部分でした。

番組では老若男女30人の協力で鼻の奥に肺炎球菌がいないかどうか調査したところ、6人から肺炎球菌が見つかりました。

ちなみに、肺炎球菌の保菌者は成人で10人に1人ほどで、一般の医療機関で調べることは出来ません。

 

ということで、肺炎球菌は人の鼻の奥に住んでいるため、感染はまず人から人に移って広がるのです。

しかし、鼻の奥、咽頭にいるだけでは悪さはしません。

熱や咳がでることもなく、自覚症状はありません。

ところが、風邪やインフルエンザなどで咽頭が傷つくと肺炎球菌が肺に落ちやすくなります。

そうなると一気に増殖を始めて肺炎を発症するのです。

 

さて、インフルエンザワクチンは全身の免疫細胞に働きかけますが、肺炎球菌ワクチンは体のある部分に効力を発揮するのです。

それは脾臓(ひぞう)です。

脾臓は体の右側にある肝臓の反対側、すなわち体の左側で腎臓の上にあり、大きさは腎臓と同じぐらいでこぶしくらいの大きさです。

 

肺炎球菌が風邪やインフルエンザなどで肺炎球菌が肺に落ちてくると免疫細胞の好中球が防御しようとしますが、肺炎球菌にバリアがあるため悪いものと気付かずに食べません。

このままでは肺の中で増殖して私たちの体で肺炎を起こしてしまいます。

ところが脾臓の中には特別な免疫細胞、すなわちマージナルゾーンB細胞が肺炎球菌にさわって敵だと確認し、ふりかけのような抗体を肺炎球菌に向かってばらまきます。

すると好中球も抗体の付いた肺炎球菌を敵であると認識し、食べてしまえるようになるのです。

従って、私たちは簡単には肺炎にならずに済むのです。

 

ところが、脾臓は年齢とともに小さくなり、特に40歳くらいから60歳過ぎにかけてはその割合が大きいのです。

そこで小さくなってしまった脾臓に肺炎球菌ワクチンを接種すると、接種前に比べて血液中の抗体が10倍以上に活性化することが分かりました。(5人の平均値)

要するに肺炎球菌ワクチンを接種すると、脾臓が小さくなっても抗体が10倍以上になるので肺炎球菌による重症化を防ぐ効果があるということです。

また、このワクチンの効果は5年間です。

ちなみに、費用は約8000円で、今は65歳、70歳、75歳、80歳、85歳の定期接種の時だけ補助金があります。

 

さて、今世界各国である画期的な計画が進んでいます。

それは肺炎球菌“撲滅計画”です。

子どもの場合、2013年から肺炎球菌ワクチンの合計4回の定期接種が実施されているのです。

なお、子ども用の肺炎球菌ワクチンは大人用の後に開発されたワクチンで、肺炎球菌が鼻の奥にすら住めなくするという強力なものなのです。

つまり、このワクチンによって肺炎球菌を持たない人が増えれば、世の中から肺炎球菌が劇的に減っていくと見込まれるのです。

実は、このワクチンを世界に先駆けて導入したアメリカではなんと肺炎球菌による重症感染が76%も減少したというのです。

 

なお、子ども用のワクチンを65歳以上の大人も接種することが出来ます。

また、子ども用のワクチンの効果は一生持続するといいます。

費用は1回約1万円ですが、今、子どもは無料で接種出来ます。

ただし、対応する菌が大人用と子ども用で異なります。

大人用は23種類、子ども用は13種類です。

ちなみに、日本国内で感染する肺炎球菌はおよそ30種類と考えられています。

そして、その上位からワクチンの開発をしているのです。

また、大人用と子ども用と両方を接種することが出来ますが、その場合は期間を1年あけることが必要です。

 

番組の最後は、寝ながら出来る誤嚥性肺炎を防ぐ簡単な予防法を紹介していました。

それはちょっとだけ頭を高く上げて寝ることです。

例えば、敷布団の下に座布団やクッションなどを置けば、頭がその分上がります。

実はこの方法は、ベッドの頭の方を少し上方に傾けるなどして病院でも取り入れられています。

実は、寝ている間に唾液が肺に入って誤嚥性肺炎を起こすことがあるのです。

でも頭をちょっと高くするだけで唾液の肺への侵入を防ぐことが出来るのです。

頭の部分を少し上げることで唾液を咽頭に溜めず、飲みやすくすることによって、寝ている間に唾液が肺に入って誤嚥性肺炎になるのを防げるのです。

ちなみに、ベッドの場合は大きめのクッションを敷いて肩から上を上げるだけでもOKです。

ただし、無理は禁物で気持ちよく眠れる範囲に留めることが大切です。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず肺炎球菌が人の鼻の奥の咽頭にしか生存していないということに驚きました。

そして、肺炎球菌と免疫細胞の好中球、そして脾臓の中の特別な免疫細胞、マージナルゾーンB細胞の関係はまるでゲームの世界をイメージさせるような感じを受けます。

また、こうした関係を理解すると肺炎球菌ワクチンの重要性もよく理解出来ます。

そして、子ども用の肺炎球菌ワクチンは肺炎予防の最終兵器ともいえる、肺炎球菌が鼻の奥にすら住めなくするという強力な効力があるというのはワクチンとして理想的だと思います。

 

ということで、このワクチンが全ての肺炎球菌をカバー出来るようになれば、地球上から肺炎球菌を撲滅出来るようになると見込まれるのでます。


 
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