2017年03月19日
No.3654 ちょっと一休み その586 『健全な社会では過激派は政権を握らない』

アメリカのトランプ大統領を巡っては、選挙前からその過激な言動が世界中の注目を集めてきました。

そして、多くの人たちはこうした過激な言動は大統領に就任後は収まるだろうと期待していましたが、トランプ大統領誕生後もその流れは続いています。

そうした中、2月5日(日)放送の「サンデーモニング」(TBSテレビ)で日本在住でシリア人ジャーナリストのナジ−ブ・エルカシュさんが興味深い発言をされていたのでご紹介します。

 

エルカシュさんは、番組のインタビューに答えて次のようにおっしゃっています。

「(トランプ大統領の中東におけるイスラエル寄りの言動について、)聖地(エルサレム)は本来平和なところ、みんなが集まって共存するところ、対話するところですけども、勝手な政治的な動きがあると非常に侮辱的で普通の人も異常な怒りを覚えるので、とんでもない状況になってしまう可能性があるんですね。」

 

「(更に、もう一つの懸念について、)これからのヨーロッパの選挙は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)やトランプ政権の影響を受けて、どんどん過激派が政権を握るか同盟を作って政権に近い力になってしまいます。」

健全な社会では過激派は政権を握らないんですね。」

「でも今の時代は、過激派がはしっこから中心になって政権を握ってしまったんですね。」

「で、それはものすごい怖い状況ですね。」

 

トランプ大統領の出現で、内向きな排他主義や差別主義があちこちの国で勢いを持ち始めた時代、こうした分断への動きが進み続けた時、世界で何が起きるのでしょう。

 

以上、番組の一部をご紹介してきました。

 

イスラエルの首都、エルサレムはユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の聖地です。

そして、エルサレムは国際管理地に指定され、特定の国に属さないことになっているにも係わらず、トランプ大統領は現在テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転させることを選挙公約に掲げており、実行に移そうとしています。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.477 『このままトランプ政権が突き進めば世界終末時計は限りなく短くなっていく!』

こうした状況を踏まえて、エルカシュさんはこの計画が実行に移されれば大変な状況をもたらすと警告しているのです。

多くの専門家が同様の指摘をしているようです。

 

さて、どこの国においても、またいつの時代においても、国民の不満はいろいろあります。

しかし、その不満が我慢の限界を超えてしまうと、多くの国民はとりあえず現状を打破してくれそうな勢力に期待を寄せます。

また、こうした国内情勢をうまく利用して政権の座を狙おうとする過激派勢力が台頭してくるのが世の常です。

更にそうした国の動きを見て、似たような状況にある他国も同調する動きが出てきます。

今のトランプ大統領率いるアメリカと一部のヨーロッパの国々の関係はこうした構図にあると思われます。

 

更に、番組では触れていませんでしたが、トランプ政権の閣僚の中には、中国に対して強気の姿勢を取るべきであるという考えの方もいるといいます。

ですから、今後のトランプ大統領の中国に対する過激な発言が、本人の意思とは関係なくエルカシュさんのおっしゃるように、中国の国民の堪忍袋の緒を切ってしまい、取り返しのつかない事態を招いてしまうとも限りません。

 

ということで、トランプ大統領は“アメリカ第一主義”を掲げ、アメリカ国内だけでなく、世界各国をその刺激的な言動でこれまでの健全な社会とは言わないまでもそれなりに調和のとれた状態をかき乱し、多くの国の過激派の目を覚まさせてしまい、とても危うさを感じます。

世界一の大国、アメリカのトランプ大統領には、ご自身の発言の世界各国に与える影響力の大きさについて自覚していただき、もう少し冷静な言動をしていただきたいと思います。


 
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