1月4日(水)放送の「クローズアップ現在」(NHK総合テレビ)のテーマは「“幸福を探して”
人類250万年の旅〜世界的ベストセラー〜」でした。
番組では世界が注目するベストセラー本、「サピエンス全史」を通してこれまでにない新たな視点から人類のこれまでの歴史、そして将来を取り上げていたので4回にわたってご紹介します。
4回目は、未来を切り拓くカギについてです。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんの書いた「サピエンス全史」は、人類250万年の歴史を斬新な視点でひも解く壮大なストーリー、世界的なベストセラーとなっています。
そして、世界のトップランナーたちも口々に賞賛しているといいます。
1回目では人類の最初のターニングポイント、“認知革命”、2回目では2番目のターニングポイント、“農業革命”、そして3回目では資本主義に代わる新たなフィクションの必要性についてご紹介しました。
「サピエンス全史」では最後に私たちの未来を展望します。
人間の能力をはるかに超えたコンピューターの登場、遺伝子を思いのままに操作したデザイナーベイビーの登場など、科学技術の進歩で人間を取り巻く環境は急速に変化しています。
私たちホモ・サピエンスはいったいどこへ行くのでしょうか。
SF映画ではよくロボットやコンピューターに人間が支配される未来が描かれています。
「サピエンス全史」では近い将来科学の進歩によって人類は今の姿と変わってしまうと驚きの指摘をしています。
「サピエンス全史」には次のような記述があります。
未来のテクノロジーの持つ可能性は、乗り物や武器だけではなく、感情や欲望も含めて、ホモ・サピエンスそのものを変えることなのだ。恐らく未来の世界の支配者はネアンデルタール人から私たちがかけ離れている以上に、私たちとは違った存在になるだろう。
科学の進歩で人間の姿が変わるとはいったいどういうことなのでしょうか。
番組の中で「サピエンス全史」の著者、ユヴァル・ノア・ハラリさんは池上さんの質問に対して次のように答えています。
「(コンピューターのソフトに例えると人類の生まれた時は「人類1.0」だったが、それが認知革命によって1.1になり、農業革命で1.2になり、今度は「人類2.0」になるのかという問いに対して、)ええ、これまでは次の革命が起こるまで何千年もかかったのが、これからはほんの2、30年で済んでしまうのです。」
「今後1,2世紀のうちに人類は姿を消すと思います。」
「でもそれは人間が絶滅するということではなく、バイオテクノロジーやAIで人間の体や脳や心のあり方が変わるだろうということです。」
人間の能力を超えるAIの登場、生命を自在に操るバイオテクノロジーの進化、科学が猛烈な勢いで発展する一方で、そのスピードを人間がコントロール出来なくなるのではないか、ロボットとAIの開発で世界をリードするロボット・人工知能(AI)研究者の山海
嘉之さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「人間が作り出した技術でありながら、人間自身がその技術によって追い詰められていく、そんなことにもなりかねないわけです。」
「身の丈をはるかに超えた科学技術を扱う人たちが安易にそこを推進することにはかなりの危うさがあると考えます。」
私たちはどんな社会を作りたいのか、そのために必要な科学技術は何か、未来を想像する力が今こそ人間に求められていると山海さんは指摘します。
「こういう社会であった方がいいということをみんなで共有するんですね。」
「社会で生きている人も含めて科学技術にもう一度目を向けて、適切な科学技術の進化、あるいは(それを)どのように扱っていくかを考えながら生きていくと。」
この先、私たちはどんな未来を選択していくのか、「サピエンス全史」の著者、ハラリさんと池上さんの二人が重要だと考えるのは科学技術と政治や社会の係わり方です。
番組の中でハラリさんは池上さんの質問に対して次のように答えています。
「(私たちはこれから様々な課題や困難に立ち向かうことになるが、AI(人工知能)の技術がどんどん進んでいる、それに対して政治のシステムは中々そこに追いつけない、そこのギャップがいろんな問題を引き起こす。では私たちはどうすればいいのかという問いに対して、)AIは短い時間で大きく世界を変える可能性があります。」
「今学校に通っている子どもが40歳、50歳になった時にどんな仕事に就いているか誰も分かりません。」
「どんな未来を過ごしたいのかしっかりビジョンを持つ。」
「そして幸せな道に進む賢い選択をする。」
「そのためには科学と政治はもっと協力しあわなければならないと思います。」
iPS細胞などの生命科学の発展は私たち人間という種そのものを変えてしまう可能性があります。
また、AIが進化していった時、私たち自身はどう変化するのでしょうか。
そうした将来の人間のことを「サピエンス全史」の中では“超ホモ・サピエンス”と呼んでいます。
この先、人間は自分たちが作った科学に飲み込まれてしまうのか、それともうまくコントロール出来るのか、著者のハラリさんは、本の最後で未来を切り拓くカギは、私たち人間が欲望をコントロール出来るかどうかだと次のように説いています。
私たちが自分の欲望を操作出来るようになる日は近いかもしれない。私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない・・・
以上、番組の内容をご紹介してきました。
まず近い将来、人類はバイオテクノロジーやAIで人間の体や脳や心のあり方が変わる “超ホモ・サピエンス”と呼ばれる新しい人類に代わるとことには頷けます。
というのは、バイオテクノロジーやAIだけでなくiPS細胞などによる再生医療技術やその他の先進医療技術、あるいは脳の仕組みの解明、およびIoT(モノのインターネット化)に“超ホモ・サピエンス”は自らの人体にあらゆるテクノロジーをコンパクト化したかたちで搭載しており、一人一人の人間もIOTの一部として位置付けられるようになると容易に想像出来るからです。
こうした状況下においては、私たちは従来よりも格段にパワーアップした能力を手にすることが出来ます。
そうした時に、ハラリさんのおっしゃるように、私たち人間が自らの欲望をしっかりとコントロール出来るかどうかがとても重要になります。
その理由は、今は不可能と思われていることの多くが実現可能になるからです。
世界平和、あるいは持続な社会の実現をベースにしたしっかりとした価値観を人類全体で共有し、世界各国が共に歩まなければ、いずれ人類は自ら生み出したテクノロジーによって絶滅してしまう可能性を秘めているという自覚を持つことが特に世界各国のリーダーの方々に求められると思います。
こうした見方に立つと、アメリカのトランプ大統領の登場は、「アメリカ第一主義」を打ち出し、既にこうした流れからかけ離れた政策を打ち出しており、プロジェクト管理と日常生活 No.477 『このままトランプ政権が突き進めば世界終末時計は限りなく短くなっていく!』でもお伝えしたように人類の終末に向けた流れを加速化しているように思えます。
ここで強調しておきたいのは、以前にもお伝えしたようにトランプ大統領の政策を多くのアメリカ国民が支持しているということです。
ですから、世界各国のリーダー、あるいはアメリカ国内の有識者は、未来を切り拓くカギ、すなわち資本主義に代わる新たなフィクションの構築や私たち人間が欲望をコントロール出来るような新たな価値観、すなわち新たなフィクションを構築し、そのフィクションを共有して共に歩むような流れを作り出すことが求められているのです。
ということで、トランプ大統領の誕生は、今後の人類のあり方をあらためて考えるうえでのチャンスを与えてくれているという前向きな見方も出来ます。
この絶好のチャンスを見逃す手はないと思うのです。